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王子様になりたい私、勇者候補になりました!?〜全ての虐待児に捧げる幸せな話〜  作者: ユメミ


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星見祭二日目 16.冠のない生徒会長


 「(仮)?わあ………よかった〜」


 皆が叫ぶ中りんはヘラリと笑った。

その顔を覗き込んだ空隙教諭の瞳は真っ赤だった。

いつの間に近くに来たのだろうか。ぬるりと入り込まれた心地がした。

いつも笑っていて細い糸目に見えたけど大きな瞳だった。


「あれ。悔しくない?」

「悔しい?いえ妥当では?今回の勝利は私一人の力じゃないですもん」


赤い瞳がりんの瞳を覗き込んだ。

まるで探るように。

りんは何も隠してはいないのに。


「役職名が(仮)なんて結構屈辱的だよ?

名が冠されないって凄く凄く不安定な気持ちになるはずなんだ。………平気?」

「………?冠で頭が重いと思考が鈍りません?

名や冠より中身と結果では?今の私には妥当です」


首を傾げたらキョトンとされた。

やっぱり空隙教諭は目が大きい。


「………へえ。君面白いな」


空隙教諭は面白いことが好きらしい。

りんは真面目だからユーモアはないはずなのだが。

首を傾げたらまた笑われた。


皆が騒ぐけどりんは心底安心した。

やはり今のりんには《生徒会長》は力不足だ。

それらをしっかり見ていて現実を教えてくれる大人と教諭がいることに感謝した。


「何故ニヤつく。………不満はないのか」


真神教諭のほうが不満気なのは気のせいだろうか。

りんは頬をかきながらもヘラリと笑った。


「いえ。不満なんてまったく。

寧ろ皆の功績を私が掻っ攫うようで居心地悪かったのから解き放たれました。

相応って大事だと思うんですよ。

達成感もない功績は嫌です」


「………変わり者だな。貴様は」

「ええ〜?」


真神教諭は辛辣だ。

でもその辛辣さこそ今のりんには心地良い。

ヘラリと笑ったらまた舌打ちされた。

空隙教諭に会場のブーイングが降り注ぐ。その中にリリス学園長もいる所が坩堝学園らしい。


りんはまあまあ………と手で制した。

止まった。皆品行方正のいい子だ。


「一年猶予を設けますよ。我等大人も理不尽ではない。

この一年で数々の定期テスト、イベント、課外授業があるよ。

それらでどんどん炉度を上げること。

上がらなかったら退任だよ。


因みに《生徒会長側近》は炉度4肆に相当しないと業務引継ぎが成り立ちません。君等も他人事ではない。

ささ、雷クラスの諸君。サクサクと炉度を測ろうか」


 雷クラスの皆がドナ・ドナ〜と連行されるように《もも》の宝玉にどんどん手を突っ込む。

それらがどんどん開示された。

澪の所にも養護室まで真神教諭が《転移魔術(どろん)》で直ぐ様測らせたらしい。

蒼い閃光が真神教諭の指先を走った瞬間に彼は消え。その後10秒程で帰還した。

意識がなくても測れるのは少し怖い宝玉だとりんは思った。


岸 護      炉度 3参

澪 モルガン   炉度 4肆

(せい)   炉度 4肆

猿田 一彦    炉度 3参

ナタージャ・A・メノウス 炉度 2弐

琥珀 ピアス   炉度 2弐

アンテ・クオニ  炉度 2弐

木ノ葉 咲    炉度 2弐



「おお〜。クラスの半分が参だぞ」

「4いるぞ。さすがはエリート校」

「あいつら鍋祭り集団かと思ったらやっぱりエリートなんだなあ………」

「2弐もいる。俺等と変わんないんだなあ」


《生徒会長側近》の雷クラスの炉度開示に新たなざわめきと興奮で会場は沸いた。

その隙をついてりんはそっと真神教諭の隣に近づいた。


「あの〜」

りんはコソリと真神教諭に耳打ちした。


「なんだ」


りんと真神教諭の身長差は20センチほど。

屈んでくれるだけ拒否はされてないけどその眉間がもう面倒ごとを起こすなと警告している。

でもこれは面倒ごとじゃないから無視した。


「炉度 2ランクアップの権利は譲渡出来ますか?」

「何かと思えば。くだらん。

炉度4以下なら可だ それより上はあり得ん。だから辞退して貴様の部長やモルガン、星に譲るのは不可能だ。

規定では可能だかな。そんな名誉ある権利を投げる者などーーー」


「じゃ、ナタちゃんと咲ちゃんにあげます」


りんはナタージャと咲を呼び寄せた。

二人は何が起こるか分からなそうだ。りんも分からない。一緒だ。問題ない。


「二人にね?ランクをプレゼント」


益々分からなそうな顔をする二人の額に手を置いた。

ついでに呆然とした真神教諭の手をりんの肩に置かせた。

その間コンマ0.001ほど。(当社比)



「二人はか弱いもん。肉弾イベントは絶対不利だもん。

二人は怖いから棄権したのに応援合戦もさせてこの役員にも引っ張り上げたでしょ?巻き込んだお詫び。

私はこれから自力で取れるから!!


《宣言》!!

ナタージャ・A・メノウス、木ノ葉 咲に炉度の賞品を一ランクずつ譲渡します!!」


「まっ………アホ!!行動力が反射なみか?!

すぐに高らかに声に出すな………《言挙げ(ことあげ)》が………貴様ッ握力だけは強いな?!」


離れようとした真神教諭の手をグッと抑えた。


「女に二言はありません!!即断即決!!仕事の速さ。良く褒められます!!」

「少しは《熟考》しろ!!」


ピカン!!


「「「あ」」」


ナタージャと咲のボタンが光り輝いた。神々しいほどの白い光だった。

そこには《03》の数字が刻まれた。

二人はプルプル震えている。

「りんっち………」

「りんちゃん」


はわはわしている二人をぎゅっと抱きしめた。

「戦場に巻き込んでごめん」と謝った。

二人が泣きそうな顔をした。何故か感謝された。

「巻き込んでくれてありがとう」と。


二人は棄権したことを後悔したんだとか。

なら次回は共に闘える。頼もしくも可憐な友達がいるなら心強い。


「権利………譲渡………」

「1位特典………ゆずる?」

「おいおい。無欲にも程があるだろ………」


会場中にバレてしまった。

こっそりしたかったのにあんなに光るとは思わなかった。


「ランクアップの《宣言》を教えてもいないのに熟すな。

何故知っている」

「予習をしろと真神教諭が言いましたよ?以前」

「ほう。言うようになったな」


《宣言》。

炉度のランクアップの権利の行使を叫ぶこと。

本来は教諭が促してその後高らかに目立つ所で《宣言》する。

それが本来の式典な様式美だった。


「それは四郎先輩から教わりました!予習済です!!」

「ち………奴の織り込み済みか」

「炉度の解説もさっきしていただきました」

「さっき………だと。

貴様の家は過保護なのか放任なのかわからんな」


眉間を揉む真神教諭がリリス学園長を振り返り睨んだ。

リリスは口笛を吹いて目をそらしていた。


「「ね?!僕等に譲渡は!?」」


アンテと琥珀が異議ありげりんに詰め寄った。

りんはきょとりとした。

確かに二人も炉度は2。か弱い部類。普通だ。

肉弾戦も苦手だろう。

首を傾げしばらく考えた。


「二人は強いのに私の手助け必要………?かな?」


「つよ………?」

「身体の作りなんか女の子と変わらないよ!!僕等」


「二人の武器は《頭》。

頭脳戦では絶対負けないはずだよ。

大丈夫。二人が輝くイベントは必ずあるよ。

ここは《身体の強さの絶対》を掲げていない坩堝学園だよ。


二人が困ったら助ける。今は二人は困ってないよ。

不安なだけ。大丈夫」


ポカンとされた。

でも二人の耳が真っ赤だ。

二人の肩をポンポン叩いたら二人の口がモニョモニョとした。


「よかったな。信頼されとるぞ」

「りんは見る目あるんだぜ?大丈夫だとよ」

「りんさんの信頼はある意味《祝福》だからね?羨ましいよ」


岸に猿田、星に肩や背中をバシバシ叩かれてアンテと琥珀は項垂れていた。


「一年かあ………。色んな行事とイベントがあるよね?」

「また意味不明で摩訶不思議なんだろな」

「りん様の覇道を間近に見れます」


りんと岸と澪が空を見上げた。

式典も終わりとなって皆で坩堝学園の校歌を歌っているところだ。

初めての行事だ。

楽しむだけのつもりが試練も貰ってしまった。

りんには《平穏》とは無縁なのかもしれない。


「次こそりんっちの足手まといは嫌だもんね」

「ん!んん!」

「二人ともやる気だね!!私もがんばるッ」


ナタージャと咲もりんに背後から抱きついた。


(それがし)は《夜のりん》と昼間でも会いたいんだがな。

手合わせもしたいし語り合いたい」

「僕もお礼したいな。僕がりんさんと会えたきっかけの人だからね。《夜のりんさん》もりんさんと話せるといいね」


「あの子なかなか《会いたいな》では出てきてくれないからなあ。夢で逢えたら聞いてみるね?伝えてみる」


猿田は《夜のりん》に凄く興味があるみたいだ。

強いし言葉も力強い。りんにはない魅力がある子。

りんもああなれたらいいなと思うくらい理想の子だ。

力を極めたいらしい二人に確かにぴったりだ。



「僕は魔術研究探究かな。先輩面白いし、坩堝学園はまだまだ未開の地があるしね」


「発明もしたいけど僕は女の子ともっと仲良くなりたい〜モテたい〜」


「うふふ。私も琥珀とアンテと研究してみたいし勉強会してみたいな」


「「いいよ!!」」


「二人は仲良しだね〜」


「仲良し!!」「ちがう!!」


琥珀とアンテの凹凸コンビは仲良しニコイチだ。

頭脳派コンビは皆の知恵袋だ。頭でっかちのりんにはない閃きと哲学的になってしまうりんを冷静にしてくれる。

そしてさり気なく男のこ達のストッパーになってくれる。


ーーー私やっぱり。周りに恵まれ過ぎでは?!


「皆が一緒ならなんでも出来そう!!」


そうりんが呟いたら皆がニマニマした。


そこにリリスがりんを浮かせて空中なワルツに招待してく

れた。なんでも《星見祭》のファーストダンスを踊れなかったことが心残りだったらしい。

りんは踊れなくて《らん》が慎一郎と踊ったことを伝えたら狂喜乱舞していた。文字通りに。ぐるぐるに回された。

楽しくて笑いが止まらなかった。

いっぱいハグしていっぱい頬にキスをされた。

その度にくすぐったくて笑う。

りんの《初めてのダンス》はリリスにとってはかなりの価値らしい。


「ママもらんちゃんと踊りたかったわあ」

「ん。出てこないかなあ………」


リリスは学園長よりもお母様の顔をしていた。

コソコソ話の始まりだった。

そこは学園を見下ろせる上空。

呆れた顔の真神教諭や手を振る雷クラスの皆が辛うじて見える位置。

ナイショの話にはぴったりな高度だった。


「りんちゃんは。らんちゃんを好き?」


これは質問より《確認》だな。とりんは思った。

だって。

分かりきった答えしかりんにはなかったから。

リリスはあえて聞いてるのだ。

これは知りたいだけの質問だった。


「うん。もっと表にでて楽しんで欲しいの。

らんちゃんにはいつも………。怖い時とか。助けて欲しい時ばかりだから。夢でね。毎日話しかけてみてるの。返事はないけど」


「………なんて」

「大丈夫だよって」

「大丈夫?」

「うん」


りんはくるりと回転した。



「『ここの人は皆が優しいの。らんちゃんが怖がることは起こらないよ。誰も私達のせいでは傷つかない世界だよ。って。

だから遊びたくても出てきて?』って」


「………りんちゃんは『解離性同一障害』が怖くないのね」


りんはヘラリと笑った。

現し世でも幾度となく聞かれた。

『直したいか』とか『忘れたいか』とか。

それは一度もりんは望んだことなどなかった。


「あの子は理想の私なの。寧ろ憧れの女の子。

大好き………なのに。いつも隠れちゃうから私の片思い………かな」


「片思い………。辛いわね。わかるわ」

「え〜?お母様が片思い?」

「私はりんちゃんに片思い〜」

「え〜?なら両思いです〜お母様大好き!!おかえりなさい!!」


りんは抱きついた。

たぶん。りんからは初めてだった。 

だから。

リリスの身体が少し硬かった。


「………ただいま。りんちゃん。らんちゃん」


下からは高らかな校歌が繰り返し歌われている。


《坩堝学園〜るつぼアカデミー〜校歌》


《全体コーラス》


勇者 賢者 騎士〜

文官 魔法使い

花売り 大工

そして――遊び人〜


みな個性をぶつけ合い

みな削られ 磨かれる

るつぼ〜 るつぼ〜

坩堝るつぼ学園!



《2番》

坩堝学園は 炉の中

正しさも 夢も

どろどろ溶けて

混ざり合い

ぶつかって

失敗して

それでも

より良くなる!




目立て 輝け〜

逃げるな 誇れ

見られることは

祝福だ!




勇者は剣を

賢者は言葉を

騎士は忠誠を

文官は秩序

魔法使いは夢

花売りは日常に彩りを

大工は未来〜



るつぼ〜 るつぼ〜

坩堝学園

溶けて 混ざって

形を変えて

笑われても

見られても


るつぼ〜アカデミー〜我が母校〜


こうして星見祭の二日目は幕を閉じた。

明日の朝。

やっと学園の結界は解けるのだ。


「おうちに皆で帰れるね」

「ええ。帰りましょうね。おうちに皆で」


祝福の花火をリリスが打ち上げた。

七色の花火。月や太陽惑星や星座の紋様が流星群の空を彩った。

狂乱の宴は終わりに近づいていた。



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