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王子様になりたい私、勇者候補になりました!?〜全ての虐待児に捧げる幸せな話〜  作者: ユメミ


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星見祭二日目 13.一位の発表


 《就任式》の演説中雷が落ちた。

しかも同時に100もの雷が。

天が割れた。

紫紺の雲から白い光が漏れたのだ。

ミシリと音がした。それは雷の音ではなかった。

その直前にリリス学園長が天に手をかざしたのも見えた。

紫紺の光で空が包まれた瞬間雷の光が細くなったのだ。

りんがわかったのはそれだけ。


空隙教諭の持つマイクからサイレンのようなアナウンスが持続的に流れた。何故彼は笑っていられるだろうか。

これは緊急事態ではないのか。

そして内容が摩訶不思議で意味不明なのだ。


「繰り返します。

《僭越ながら勝手に呼んではいけないあの天の秘匿》の正式な役職名を口に出してはいけません。

天罰が落ちます。

リリス学園長がバリアを張りましたが学園外では決して口に出してはいけません。死にます。

あれは迷信ではありません。事実です。

繰り返します。死にます。

繰り返します。

《僭越ながら勝手に呼んではいけないあの天の秘匿》の正式な役職名を口には出さないでください。思想は自由です。でも決して口に出してはいけません。神は見ています。繰り返しますーーー」



ーーーなにごとですか?


チラりと真神教諭を見る。

真神教諭相手に指信号は出来ない。

でも彼は頷いた。

事前に引き継ぎがあった仕草だ。

それは"問題なし続行"の頷きだった。


 壇上に上がってしまったが最後今もしっかり《生徒会長》の顔をしていたけど少し頬がヒクリとした。

けれど考えるより叫んだ。もう反射だった。


「救護委員会!!

各自サルベージの指示を養護室教諭の指導の下行うように!!


皆さん!!大丈夫!!

我等が坩堝学園の安全体制は万全!!

このまま式典を続行します!!」


騒然として当然だったのに。

歓声が上がった。

上がったことに安堵するやら驚愕するやらりんの内心は忙しい。

パニックが起こるより遥かにマシなのは組織運営側からすると助かる。

でもやっぱり《危険》の感覚がぶっ飛んでいる。


ーーー観客席でポカンと驚いている側にいたかったかも。


背後にいて息を飲んでいるであろう岸と澪と視線を交わしたい気持ちをぐッと我慢した。


「さあ!皆さん。

《星見祭後夜祭メインイベント》ステラ獲得数の受賞発表となりました!!」


りんは解説をスレア副団長とイーテディ副団長に引き継いだ。

二人の役員服も様変わりしていた。

黒の騎士と白の妖精王女とお互い相反する制服だった。

でも今はチャコールグレーの軍服に身を包んでいる。

ズボンとスカートといった差があるが皆が統一されている。

その首元には紫紺のスカーフが巻かれている。

元レジオン団とセルクルを表す黒と白のスカーフリングが輝いていた。

以前の制服より個性はなくなった。

けれど二人の威厳は増した気がするのは不思議だ。

彼等はさすが一年間数々の式典を回してきただけある。

まだりん達は見習い状態だ。

岸達は勿論りんも今日だけはマニュアル通りの進行をしている。

これから少しずつりん達の色を出せば良いとの処置だ。

だから《見習い象徴》のりんはトロフィーを渡すのが今夜の役割だ。


「ここからはスレア副会長とイーテディ副会長が進行いたします」


マイクを持った二人は流石に淀みない。

サクサクと式典を進行していく。



新入生(ステラ)の獲得人数と得点数の集計が終了致しました。


三位から発表します!!

第三位!!


「# 魔導騎士サークル!!

新入生獲得数15名!!200点!!」



「え?15人もいるのに三位なの?」

「マンモスサークル、ついに陥落か………」

「岸 護と澪・モルガンを獲得したのに三位かあ………」


 特設会場は歓声が渦巻いた。

壇上に上がるのは赤木団長とキマリス先輩だ。

りんはトロフィーと副賞の《一年間ランチにレア食材券》を手渡す。

ランチ。しかもレア食材券。

あまりに羨ましくて内心歯噛みしながら副賞のプレートを手渡した。


「おめでとうございます」

内心を抑えて握手をしながら祝福する。

赤木団長は悔しそうだ。なんでも毎年1位だったのだと。


「ありがとう。君を獲得出来ず残念だよ。

でも遊びに来てね。入隊しなくてもあそこの鍛錬場は一般開放してる」


「はい。ぜひ。

魔導騎士サークルに拍手を!!」


二人が退壇した後静けさが流れる。

異様な熱気だ。

前回の覇者が《三位》なのだ。

二位と一位はどこなのか。りんすら結果を知らなくてワクワクする状況だった。

りんはその役目じゃないし時間がなかった。


「二位!!

# 放送・音響サークル!!

新入生獲得数22名。獲得点数は220点です!!」


どよめきが起こった後歓声で音が割れた。

ガンザ先輩がしずしずと役員席から躍り出た。


りんはトロフィーと副賞《部室拡張》特典のプレートを手渡して握手をした。


「おめでとうございます!!

すごいです!!マンモスサークルの仲間入りですね」


「ありがと。でも嫌味にしかならないかな」

「ん?」

「君は君の《価値(得点数)》を自覚しなさすぎだ」

「どうも………?」


「一位の発表を前に。


皆様に一つお知らせがあります。

今回の《ステラランキング》の特典がこの一位に上乗せになりました。

副賞は《団長炉度ランク二つアップ》《部費増額》《旅行券》となります」


「「「お〜〜」」」


豪華だ。

いよいよ一位の発表となる。

何故か真神教諭が渋い顔で登壇した。

りんは思い出した。イーテディ副会長が説明した内容を。


「この学園でリリス学園長と並ぶ《炉度》授与官の資格があるのは真神教諭だけなのよ」と。


今回の副賞に関係があるみたいだ。

りんも心してトロフィーを持ち直した。副賞のプレートは多いから岸と澪に手伝ってもらった。

背後に二人の気配を感じながらりんは前を向いてニコリとした。王子様スマイルだ。

何処からか悲鳴が聞こえた。知った顔も見つけヘラリと笑った。

もうすぐ式典も終わる。

気を引き締め直した。


「映えある………一位は………」


ダラララララ………。

とドラムロールが鳴り響く。


………。

………………。

………………………?


読み上げるはずのイーテディ副会長が固まっている。

彼女の手に持つカードを覗き込んだスレア副会長が代わりに読み上げた。


「………一位。


新入生獲得数4人。

獲得点数………1500点。


# 現し世研究同好会………です」



「え」

「あ」

「あれ」

「え。僕等?」


りんと岸、澪と星が同時に声を出した。

ざわざわと会場が騒々しくなった。


「うつしよ………同好会………?そんなのあったんだ」

「え。非公認団体もステラ獲得出来たんだな………」

「あれ。変人の集まりだと思ってた」

「すげぇ………1500だぞ。ステラ上位者ここに集中したのか」


ざわめきが止まらない。

背後で岸と澪と星が周りにバシバシと小突かれている音がした。

りんは切実にそっちに混ざりたかったが敵わない。

マイクを引き継いだ真神教諭がこちらを見た。

りんは待つ。

我等が《部長》の到着を。四郎先輩の姿を探した。


………。

………………。

………………………?


時間が流れても誰も登壇しない。

空隙教諭がコソコソと真神教諭に耳打ちした。

それを聞いた真神教諭は長い長いため息を漏らした。

そして。

りんを顎でしゃくる。「来い」のジェスチャーだ。



「団長は所用で不在だ。副団長佐藤。前へ」


しばらく反応出来なかった。

その時りんは初めて気付いた。

自分がイレギュラーな事柄に反応が遅いことを。


「え」


辛うじて反応したのは口のみだった。


「………………佐藤 りん!!」


ーーーあ。やっぱり私のことだった。


そうは思っても身体が反応しない。

だって。

式典の流れになかった。

りんは《進行側の歯車》だ。

まさか《自身が主役》になるとは思わなかったから。


「え…………ええ?!」

「囂しい!!囀るな!!」

「団長?………御嶽四郎団長は!!?」

「ええい!叫ぶな。やつはいない!」

「こんな豪華な式典に来ない生徒普通います?!全校生徒参加の式典ですよ?!」

「いるんだ!!お前の同好会の団長はそういうやつだ!!覚えろ!!そして慣れろ。

実質あいつは《研究生》。

教諭同等としてすでに炉度の沸点に限界まで迫る。

だから特典授与もお前になる。

ち………。何故俺が説明せねばならんのだ」

「え………?」


「さ。りん様。貴女様が受取人ですよ。前へ」


いつの間にか副団長二人にエスコートされる前日の夜の再現が繰り広げられようとしていた。



「まさか。また靴に口付けとかありませんよね?」

「少しは黙れ。ない」


りんはしずしずと真神教諭の前に進んだ。

彼の手にはあったのはそれは大きな大きな。


「桃?」


宝玉(もも)だ。今回は予習したようだな」


真神教諭から珍しく罵倒はされない。

それは桃の果実の形をしたツルンとした丸みのピンクの宝石のようなものだった。


そこにりんの顔が映り込む。

キラリ。

りんの瞳の虹彩の色が反射したような気がした。

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