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王子様になりたい私、勇者候補になりました!?〜全ての虐待児に捧げる幸せな話〜  作者: ユメミ


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星見祭 16.式典閉幕


 「本日の《フェスティバル・ド・ラ・ラジア》は無事終了いたしました。

協賛、援助して頂いた88柱の皆様ありがとう御座いました。

新入生の健やかさをご覧いただいたと思います。


坩堝学園(るつぼアカデミー)はこの通り将来有望な逸材ばかりです。

来年度もどうぞ宜しくお願いいたします。


学園長代理、真神玄狼から心よりお礼申し上げます」


 式典を仕切っていたのは真神教諭だった。

担任なのになかなか会えないなあとは思っていたりんだったが目の前の光景に納得する。

疲れている。

いや。

窶れ(やつれ)ている。


でも不思議だ。

それすら真神教諭の威厳を高めているようだった。


ーーーなんか。ごめんなさい。先生。


勿論。

真神教諭の心労に多大な貢献したであろうりんは手を合わせた。



「わ………。真面目な式典だね」

「このイベントの規模、半端なかったもんな………」

「真神せんせ、舞台いる。うける〜」

「陰湿眼鏡。なかなかの地位にいますね」

「陰険眼鏡。担任以外の役職あるから肩入れしないのか」

「あの人はそもそも僕等に肩入れはしないよ」

「だな」


 あの死闘の跡はない。

ただ熱気だけはまだ冷めやまない。

そんなどこか浮き足立つ綺羅びやかな式典が行われていた。


最初は闘技場のような無骨さが厳格さと趣きを現していた特設会場。

今はまるで舞踏会を執り行うような綺羅びやかさだ。

野外なのに天幕が夜空のオーロラのようにはためき。

雨のように金の粒が降り注いていた。

空飛ぶランタンはふわふわとキラキラと揺らめいている。


豪華なご馳走。

沢山の飲み物にデザート、フルーツ。


正装の大人達や制服の着崩しのない生徒。


そこに。

一人ボロボロの制服のりん。


「やっぱり、血みどろの私は場違いなんじゃないかなぁ」


「現し世ならちょっとした弄りだよな」


岸とコソコソ話していると皆に聞こえていたらしい。

皆が苦笑いだ。

大人達の目線は温かい。

そこに蔑みの視線もなかった。


「これは、幽玄異郷の様式美なんですよ。りん様。

寧ろ誉れ高い格好になります。ご心配には及びませんよ」


澪が魔導端末を見せてくれる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 かつての勇者は闘いから凱旋するとすぐに城に呼ばれた。

ボロボロの姿を讃えた後に労い讃え、着飾らせるのが最大の《敬意》の表れだった。


闘いは綺麗事ではないのだと。

闘ったものの犠牲と献身を貴族に知らしめる必要があったのだ。


英雄は血にまみれても尚、美しいのだ。

その美しさを讃えるために式典の主役は《普通》か《見窄らしく》あえてする祭りも存在する。


英雄を着飾らせるのも権力者の《ご褒美》であった。

大変栄誉なことなのだ。

          《勇者偉伝の書 666項》

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「この式典の権力者は誰だろ」


「学園長………?今は学園長代理かな」


「そっか………。気が重いなあ」


りんの保護者であるリリスが居ないことをクラスの皆が残念がった。

りんの晴れ舞台だ。

やっぱり親は見たいだろうと。 

りんは「仕方ないよ」としか言えなかった。

だって仕方ないから。逮捕されてるからとも言えない。

そうりんは笑うけど、その度に顔色が悪くなる星のことのほうが気になった。

星こそまだ顔色が悪いけど「大丈夫」しか言わない。

大丈夫じゃない人こそ大丈夫としか言わないことを知ってる


 りんは、星が気になって仕方がなかった。

そう気もそぞろにしていると真神教諭と目が合った。

金縁越しの瞳に浮かぶ色が見えない。

お祝いなのにニコニコしていないのが真神教諭らしかった。


軽く舌打ちされた気もした。

あの人は笑うことなどあるのだろうか。



「今夜のフェスティバル・ド・ラ・ラジアの勝者を讃えましょう。


勝者前へ。

佐藤 りん、岸 護、猿田 一彦、(せい)


彼等には希望していた規約内の《希望》が贈られる」


厳粛な呼びかけに反応して前にでた。


舞台までの花道を進む。

両側には花吹雪を散らす生徒や父兄、来賓の人だろう。

皆が笑い皆が拍手する。

さっきの花道よりはその祝福を素直に受け取れた。


「よ!血塗れの女神!!」

「是非とも卒業後は我等の領地の騎士団に!!」

「きゃあ!!勇者候補筆頭!!嫁にして〜」

「りん様〜岸様〜猿田様〜星様〜こっち向いて〜」

「踏みつけて〜踏みにじって〜♥」

「婿にしてくれ〜尽くすから!」

「金返せ〜通年通り狙ったのに!!」



 舞台には仲良く寄り添ったスレア団長とイーテディ団長が拍手で迎えてくれた。

背後の団員が咽び泣いている。

でも、その瞳に恨みはなかった。団長達への落胆の色もない。

両陣営が並び合っている。 

当初は対立していた組織とは思えない。

口惜しいといった顔でも讃えていた。


ーーー悔しいけど誇らしい。そんな優しい匂いがする。


会場を割らんばかりに響く拍手。

それを制したのはスレア団長とイーテディ団長だった。


「ここに。我等がレジオン団と」

「セルクル団、廃団を表明致します」


会場はざわめきも起きなかった。

このことを予想していたかのように。

背後の岸達も頷きあっていた。

動揺したのはりんだけだった。


「え?な?な………なんで?」


あわあわするりんに二人は振り返った。満面の笑みで。

それはそれは晴れやかな笑顔だった。


「佐藤 りんさん。

我等の《怠惰》と《諦め》の歴史に引導を渡してくれてありがとう」


「わたくし達、歴代団長はこの《規約》の歪みを分かっていました。

わかっていましたが《足掻く》ことも諦め。

調べず疑わず。

やはり………。一度得た権力にしがみつく浅ましさがありました」


「貴女は泣いた友の誇りのためと。

自らの野望ではないと笑う方もいるかもな。

軟弱な他力本願の渇望と批判するものもいた」


「でも。

わたくし達は愛する人のためだったとしても成せなかったのです。


志の高さや動機は関係ありません。

彼女が《何を成したか》。

これは偉業です。歴史は今夜動きました」


 二人は手を取り合い頷いた。

そして会場に向かって声を高めた。 

マイクがあったとしてもその力強い声はまさに上に立つものの威厳と潔さがあった。

二人の目は輝いている。


「坩堝学園らしさを失った暗黒の100年は動き出しました。

我等は推薦します。

ステラ・ランキングを経なくとも彼女は《生徒会長》の器があると。

これは事前にステラ(新入生)全てから決裁も取りました。

彼女は。


史上初めてのステラ全ての《認》を受けました。

後日のステラ・ランキングは無意味と判断致しました」


拍手と歓声があがる。

ビリビリする高揚感が会場を包む。

りんは肩をビクリと震わせた。


「我等はIRISアイリス団 団長、佐藤 りんさんの」


「生徒会長就任を見届けて………。退任したいと思います」


満場の拍手が湧いた。

彼等の判断を讃えるような。 

お疲れ様と労うような。

そんな空気に呑まれた。

そして二人は満足そうにマイクを下ろしーー。



「「異議あり」」


その空気を引き裂いたのは二つの声だった。

一つは真神教諭。

もう一つは。


「りん………?」 


岸が呟いた。


会場もざわついた。

何故かレジオン、セルクル団団員が青ざめた。

何か悪い事が起こるような顔をしていた。

まるでりんが《恐怖》の対象のように。


ーーー私の顔怖いのかな?


りんは手を挙げながらも首を傾げた。


「なんだ、なんだ。勝者はこの処分が生温いのか?」

「まあ。普通は旧組織は革命の後は血祭りだからな」

「ほう………。《権利の行使》か。

若いのになかなかの施政者だ」



そう。

りんには物申したいことがあった。

でも。


「ささ。真神先生お先にどうぞ」

「ちッ………ここで気遣えるなら最初からやれ」


舌打ちをしながらも真神教諭はマイクをとった。


「私は「主幹教諭」として、教諭陣代表として。

レジオン団とセルクル団の廃団は反対です。

これは「教諭・職員」の総意です」


「何故?!」

「わたくし達は潔く………」


スレア団長とイーテディ団長はあ互いに寄り添いながら悲劇的な顔で真神教諭に問う。

絵面は悲劇のカップルを引き裂く魔王のようだった。


「君等の決断は「英断」と呼ばせたいのかもしれんが。

それは「無責任」だ」


真神教諭はため息交じりに息をつき。

それでも猛攻は止まらなかった。


「いくら《規約内》で《弱肉強食》で強者が絶対としてもだ。

組織は《回す者》が必要なのだ。

こいつらに任せてみろ?こいつらだぞ?」


りん筆頭にした雷クラスの面々を鋭く指で示した。

雷クラスの皆の顔色が怒りに歪む。

りんと岸は目を瞑り受け入れた。

否定出来なかったから。


「破天荒な規約ばかり改正して好き勝手にした挙句、実務、庶務は崩壊するぞ?

これは「学園運営崩壊の危機」だ。

そもそも、貴様らに自由に廃団する《規約》もない。


ポレモスにあったのは《勝者が廃団を要請出来る》だ。

しっかり読め、規約を」


真神教諭は顎で上空のモニターをしゃくる。


モニターには。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《星見祭》勝者には《ポレモス》を宣言する資格を有する。

《新団設立》はこのポレモスの宣言のみ適用される。

ポレモスは既存団長に「団首争奪ランキング」を挑むことが出来る。

ポレモス敗者は勝者の要請の下廃団とする。

尚、生徒会役員会員は生徒会長が任命権を有する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「「そんな………」」

 

団長二人は青ざめた。


「貴様らのこの一年の働きは教諭並びに全校生徒から《認》がある。

やめてスッキリできると思うなよ?

敗者は奴隷だ。

勝者に尽くせ。働け。以上だ」


ここからマイクを渡されたりんの心中を察してほしい。

皆の視線が痛いし熱い。

少し居住まいを正してもぞもぞ動いてから。

諦めて胸を張った。

頬が熱い。


「あの!」


音声が裏返った。

頬が熱い。

震えそうになりながらまた胸を張った。


「あのですね。

異議は真神教諭の言ったこととほぼ同じになります。


規約には二人の団長の廃団は勝者の私の権利になります。

私は二人を廃団、引退に追い込む気はありません。

勿論、私の仕事は勇んだものとしての責任がありますし邁進します。


でもお二人のやってきたことを無駄にはしたくないんです。

男と女の分断はいけませんが、区別は必要です。

何かイベントを起こすにも性差を度返しは無謀ですし、異性が細やかな内部の調整するのは難儀するはずです。

女の子にしか相談できないことや、男同士じゃないと決まらないことだってあるはずです。


先輩方。知恵を貸してください。

私達はまだ未熟です。

巨星として導いて下さい。お願いします!」


りんは深々と頭を下げた。

どよめきが起きた。


「勝者が「おねがい」………?」

「勝者は敗者を晒し上げてもいいもんだぞ?」

「変革の後はさ。大体敗者は血祭りだよね?

処刑は?歴代退団した団長は一ヶ月くらい入院したよな?」


ーーー野次が不穏ッ………。


下を向きながらりんは冷や汗ダラダラだ。


「頭をあげてくれ!違う意味の晒し者になる」

「強者の威厳がありませんわ!?

簡単にトップはペコペコするもんじゃありませんのよ?!」


りんの肩には二人の先輩の温かな手が添えられた。

背後の団員達はもう号泣だ。


「「謹んでお受けします。《補佐》として。

りん会長の下、働かせてください」」


「わ!一緒にがんばりましょう!!」


三人で握手をした。

ここに。

レジオン、セルクルはアイリスの傘下に入ることが決まったのだ。


《新体制 生徒会》発足は成った、


感動の拍手が巻き起こった。

会場はまた一つになった。


「言ってる内容は同じなのに言い方って大事なんだな」と。


祝福の拍手は鳴り止まなかった。

皆で写真をいっぱい撮られた。

一学園の式典にしてはカメラマンが多すぎる気がしたけど。

お祭りはそんなものだろう。



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