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王子様になりたい私、勇者候補になりました!?〜全ての虐待児に捧げる幸せな話〜  作者: ユメミ


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星見祭 10.風船割れたら負け★どきどき鬼ごっこ

「そのための《ステラ・ランキング》なのよ!!」


空気を割いたの冷静だったはずの女王だった。

スレア団長が横目で彼女を見て苦い顔をしている。


「《ステラ》は新入生。

生徒会長は新入生の持つ点を多く獲得した《団長》しかなれないものなのよ。

長年、レジオン、セルクルは成せていない。

だからお互いに切磋琢磨して………」



「まだ、分からないのですか?」


「分かっているわ。誉れ高き《団制度》に疑問を持つなんて。反逆も甚だしいものよ?」


「疑問を持つことも規約違反ですか?」

「くッ………」


りんは冷静だ。

さっきまで規約を盾にりんの問いを裁いていた女王はいない。

今いるのは《感情論》を語るただの女の子の姿だった。

その姿をセルクル団員の女子生徒達が痛ましいものを見るようにハラハラしている。

彼女達も初めてなのかもしれない。

動揺するトップの姿を見ることが。


りんは悪い子だ。

目の前の苦しんでいる女の子に更に畳み掛けた。


「この学園は男子生徒と女子生徒同数(・・)なんですよ?


ステラ・ランキング《選挙規定》1項。ステラ・ランキング勝利団長が生徒会長となる。


ステラ数は《星見祭》の得点数の総合計3000点のうち2500点とする。

僅差ではダメなんです。

お互いの陣営の裏からの懐柔にも限界があります。

それこそ《一番星クラス》の実力者が結託したとしても不可能です。


私の得点ですら1000点です。 

雷クラスだけ集めても2000いかない。

残りの500点超を女子生徒だけで?

無効票は大抵一割近くあるはずです。


仮に。全員投票だったとして。

新入生男女ほとんど皆の票を獲得しないと不可能です!!


いつまでも男と女で争っていたら停滞するに決まってるんです!!

これは《規定》が私達学生を馬鹿にしてるんです!!」


会場が騒然とした。

今まで当たり前のように行ってきた様式美が矛盾を孕んだ《無理ゲーム》だと知らされたのだ。


「え………?今までの死に票?」

「女の天下は?新しい改革は?」

「男が生徒会長になっても女子を敵に回したら新しい行事も作れないのか?」


そこで行き着くのだ。


「え?何のためのレジオンとセルクルなんだ?」


会場の混乱の最中。

声を上げたのはイーテディ団長だった。

震える手の中の扇はポッキリと折れている。 

それを乱暴に放おった。

マイク越しの声は高らかだ。


「だからこその《貴女》なのよ!!」


イーテディはりんに歩み寄り両手を掴む。

握り込むにしては強引に。

その揺れる空色の瞳が必死にりんに縋っていた。


「性別無。そのカリスマ。男子だって魅了するわ。

わたくしですら。惚れ惚れする。

そんな性別。遠い魔境の《スライム種》か《神》くらいなものなのよ。


現し世人類の《貴女》だからこそ。

ラブバーゲンに重きを置かない。無謀な精神。

生命の根源の欲を欲しない気高さ。奔放さ。


現し世人類の貴女こそセルクルの希望なのよ!?」


りんは乙女に縋られるのに弱い。

揺らぐ瞳にも弱い。 

だけど。

心を鬼にしてイーテディ団長の手を握り返した。


「セルクルが生徒会長の座を射止めたとします。

《規定改定》には8割の全学園生徒票が必要です。

レジオンを支持する男子生徒の票を奪えますか?

仲違いしていたのに?

散々男子生徒に毒を吐きつづけたのに?


それはレジオンでも同じこと。


今既存の《団》ではどちらが生徒会長になっても《規定改定》は不可能なんです!!」


「そんな………?なら。わたくしがしてきたことは?」

「すごいな。君は。新入生でそこに気づくか。

俺は………。団長になってからだ。それに気づいたのは」


イーテディ団長が呆然とする中スレア団長は腰に手をやりため息交じりに首を振った。

もう会場のざわめきを止める人はいなかった。

どんどん会場は混乱の渦を巻く。

りんは成功したのだ。《|平和に疑問を持たせること《わるいこと》》を。


「100年の争いの歴史を簡単になかったことには出来ない。

下手すると祖父母の世代からの遺恨だ。


それこそ戦争が起こって男女が一致団結する脅威くらいないとーーー」



「だから。その平和の中の停滞。

そのぬるま湯を私が蒸発させてみせます!!」


りんはスピーカーに脚を置いた。

キーーんと響いた音が会場のざわめきを止めた。


「私は新たな団を立ち上げを希望します!!それが私の《渇望》です!!」


岸と猿田、星がザッと垂れ幕をめいいっぱい掲げた。

そこに金色の花吹雪もスポットライトもあたる。


背後でファンファーレが鳴り響いた。


計画にはなかった音楽にチラりと音響係のほうを見ると。

そこには入学式で仲良くなった見知った面々がニコニコしていた。


巨大なスクリーンに虹色の弓が天の雷を貫くエンブレムが映し出された。

その中央には《IRIS》とある。

いい仕事に心からの感謝を込めてりんは胸を拳で叩いた。

りんが一人では成し遂げられなかったことだ。


背後の観客席に押し殺す嗚咽が聞こえた気がした。


「佐藤 りん。《IRISアイリス》団長として既存の団長にステラ・ランキングで打ち勝ってみせます!!


IRISは虹色。

革命の色。

男や女で分かたれない組織を!!


規定に基づき、


《ポレモス》団首争奪ランキングの立ち上げを宣言します!!」



ーーーーボーンボーンボーン。

時計台の鐘が鳴った。

まるでりんの宣言を祝福するように。



「時計台が………」

「鳴った………?」

「それこそ100年ぶり………」


来賓やOBがざわめく。


「これは………。100年ぶりに歴史が動くぞ」


誰かが囁いた。


鐘が鳴り響く中。

スレア団長は呆然としていた。

イーテディ団長はにこやかな笑顔は消え去り真っ青だ。


「新《団》だと………?そんなもの、立ち上げられたのか?!

そんなの、規定には………。文官はどこだ?文官!!」


「《ポレモス》?そんな規約があってたまるもんですか。

文官!!聞いたことないわよ?

そんな規定は無効よ!!文官!!文官!!」




「ありま〜す。

このプロジェクターをご覧ください〜」


一つの移動式モニターがどんどん大きくなり空中で光り輝いた。

多方面へのプロジェクションマッピングのように画面が具現化した。


レジオン陣営から眼鏡をかけた黒髪の男子生徒が進み出た。


「ガンザ先輩!!」


りんが叫ぶとガンザはりんにニッコリと微笑んだ。

くいっと持ち上げた眼鏡は不気味に光る。


「りんさん、後はこちらにお任せを」


ガンザはステージ中央に躍り出てマイクを持った。

彼のマイクは音響音声を担当する係が用意している。

その係の顔がホクホクとしていた。


「古代坩堝学園規定条項0項。


1000年前の条項ですね。

これ。つい20年前に《発掘》されたんですよ。

アーカイブ成功したのは一ヶ月前です。ある意味最古にして最新の規定ですね。私も知りませんでした。 

すごいですよ。彼女。

《普通》は規則の成り立ちなんて疑問も持たない。 


んん。


《星見祭》勝者には《ポレモス》を宣言する資格を有する。

《新団設立》はこのポレモスの宣言のみ適用される。

ポレモスは既存団長に「団首争奪ランキング」を挑むことが出来る。

ポレモス敗者は勝者の要請の下廃団とする。

尚、生徒会役員会員は生徒会長が任命権を有する。


これは先ほど《永続資格者》に確認を取りました。 

ですから。《有効》なんです。

ほら。

教諭も誰も止めないでしょう?!

これは《規定内》なんですよ!!

彼女は歴史的先駆者だ!」


スレア団長とイーテディ団長が実況モニターを見上げた。

沈黙が続いていて観客も存在を忘れていたモニター。


そこにはニコニコした空隙教諭と眉間にしわを寄せた真神教諭が《規定内、問題なし。教諭は干渉しません》と書かれたプレートを掲げていた。


「あ………真神先生………」


りんはモニター越しに真神教諭と目が合った。

口元が「驚かせよって」と呟いているのを見た。

思わずへニャリと笑う。


「お。真神公が反対するか、とめるかと思ったが」

「あぶねー。教諭を敵に回すのは流石に策なかったよ」

「はは!心臓バックバクだよ!」


猿田、岸、星も肩の力を抜いた。


「《永続資格者》だって………?」

「学生でありながら権限は教諭同等の研究生だよな。

専門の分野だと一教諭より権限が上だ」

「あの幻の………?佐藤 りん。何者なんだ………?」


観客のざわめきの中。

団長二人は身近な《裏切り》に身体が脱力してしまっている。


「文官。何故貴方?!」

「おい。君はレジオンの側近だろ?………いつからだ。

いつから我等を謀ろうと」

「はあ?彼はセルクルの二重………」


団長二人が詰め寄るのを真顔で受け止めたガンザは。

二人を一瞥してりんに視線を投げた。


「いつから?

僕は最初から貴方方二人に重きは置いていませんよ。


それとも。彼女のあの《奇策》ですか。

彼女の友人が泣いてからだから………。

ものの15分前ですね。


彼女。即決判断実行のスピードが速い。

ふむ………。上に立つものの素質がある」


「「なッ………」」


「僕は《強者》の参謀になることが《渇望》なんですよ。

そして。

面白いほうにつきます。

伝統、停滞。まあ良いでしょう。

ただ《無知》を他者のせいにするのは頂けない」


「あと。僕は文官ではなく《ガンザ・グリフォン》です。

彼女だけなんですよ。

僕を文官としてじゃなく。

グリフォンとしてじゃなく。

ガンザ先輩として見て、《規約オタク仲間》としてお願いされたのは。

まあ………。人徳の違いと諦めてください」


もうスレア団長とイーテディ団長は目が見開いたままだ。

驚きで口が開きっぱなしにならないだけまだマシな状況だった。


「お前。賢者グリフォンのものか?」

「なら最初から………」


「この坩堝学園はね《仮名》オッケイなんです。

僕の真名察せない時点で。

まあ………。察した所で僕を懐柔出来たかは疑問ですね。

お二人は《器》が狭かったんですよ。


まあ。さっき僕も気づいたんですがね。

僕が欲しかったのは権力ではなく、僕の真価を面白がってくれるあるじだったみたいです。

彼女は面白いんです。僕でも知らない自分を曝け出されるんです」


スレア団長とイーテディ団長は少し迷子のような顔をした。

いつも自信に溢れた二人の狼狽ぶりに背中を見ている団員も不安げだ。

それを気付いている二人はなんとか表情だけでも取り繕うと強張っていた。



「お二人もたぶんそうなりますよ」


目を隠すように長めの暗髪をかきあげながらガザンは眼鏡を外し微笑んだ。

眼鏡に隠されていたのは《グリフォン》特有の縦に裂けるような猛禽類の瞳だった。

それを見たら誰もが気づいただろう。



「賢者、グリフォン………?」

「あの。首席のガンザが《グリフォン》?あの目立たない陰キャがか?」

「魔導図書館の館長の………血筋?」



ざわめきが収集つかなくなりかけた時。

それを破ったのは。


「はい。素晴らしい《渇望》見届けました。

さて。

団長二人。

教諭は干渉しませんが君等は《巨星》だ。

彼等、超新星への《試練》を忘れていないよね?」


ニコニコした教諭からのスピーカーからの爆撃だった。

重くなった空気を書き換えるかのような陽気さは面白がっているようで淀みない。


「雷クラスの諸君!!


素晴らしい《渇望》。《規定内》うん。素晴らしい理想だ。


ただ。ここは弱肉強食。坩堝学園。

団長が出す《試練》に打ち勝たないと、貴方達の《渇望》は机上の空論になる。


さあ。団長達。君等が聳え(そびえ)立つために出した《試練》は?!」


顔色の悪いスレア団長とイーテディ団長は真顔でマイクを持った。


「鬼ごっこです」


「「「「ん?」」」」


「鬼ごっこさ。これは伝統。

我等とタイマンの鬼ごっこを生き残る。

それが試練さ」


「「「ん………?」」」


りん達は聞き返したけど会場中が半笑いな所を見ると誰もが予想していたらしい。


 猿田や岸はなにやら「バトルロワイヤル」なんかを想像していたらしいから落胆していた。

岸も元々血の気は多い。

大人数にビビったとしても一対一の喧嘩では現し世では負け無しだった。

なんせ今の岸には具現化したエクスカリバーがある。


「ごめんね。僕の身内もこの最終ステージの内容は教えてくれなかったんだ」


星が申し訳なさそうにするけど、りんは寧ろ安堵した。

だって。


「力押しはこちらがやるから寝て待ってろ」とは猿田に言われたけどそこまでおんぶに抱っこは嫌だったのだから。

鬼ごっこ。

それならりんにも勝ち筋はある。



「………毎年恒例の《風船割れたら負け★どきどき鬼ごっこ》です」


苦い顔の団長二人が少し気の毒になった。


「だよね〜。知ってた。

この空気の中、宣言立派だったよ。

もう申請出したもんね。今更変えられない。

君等が大好きな《様式美》だよ!!じゃ!!

実況に戻りますね!」


空隙教諭のから笑いが会場中を包み込んだ。


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