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王子様になりたい私、勇者候補になりました!?  作者: ユメミ


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星見祭 4.有望株の受難


 「「「「「りん!逃げろ!!」」」」」


「へ?」


歓声が上がった瞬間。

四方八方からの殺気と叫びにりんは反射的に跳躍した。手近な木にぶら下がった瞬間にりんのいたところは低い衝撃音が響いた。

土煙が上がりよく見えなかった。

見てから判断してたら間に合わなかっただろう。


でも、そこにいたらりんは肉団子のようにグニャグニャの肉になったかもしれない。

そのくらいの衝撃音がした。


「《警告!!》声かけのない捕縛は反則です。

貴方は5ポイント失いました」


どこからか声がする。 

空中で光るレンズからだ。


「わ!こっちもか?!離せ!!」


「岸?!」


りんの悲鳴にこちらに来ようとしたらしい岸の方角からギジョンギジョンと金属音が響く。


「何奴?!りん様の所に行きたいのに邪魔するな?!」


「澪ちゃん?!」


隣にいたはずの澪のほうでもむせ返るような香水の香りとバシャバシャ水音がする。


夜目に慣れないりんには音と香りしかしない暗闇のサスペンスホラーの世界に迷い込んだかのようだ。


ーーー祭りは?楽しい友達との食道楽は?………。


さっきまでの楽しさが異常事態に霧散する。


「警告!警告!

「エトワール・サリュ」の挨拶と、サークル名を名乗りなさい。

星への挨拶は礼儀です。 

品行方正ポイント減点になります。

5点減点」


「5点減点」

「5点減点」

「5点減点」


先輩方の背後の虫のような監視カメラから警告音らしきキンキンした音声が鳴る。

無機質に響く電子音。

一斉に舌打ちが響いた。

治安が悪い。


「ち。だめか。呟いたのにな。

大道芸サークル。「エトワール・サリュ」しに来ました。剣に興味ある?好きにさせる自信あるよ」


「「エトワール・サリュ」

これ嵌めちゃえば、なあなあよ。

魔導騎士団っす!よろしく〜♥かわいいこちゃん。

あ。性別無だ。いけね。

でも、彩り欲しいんすよ〜」


「あん。毒入り紅茶違う人に浴びせちゃったあ。

「エトワール・サリュ」大丈夫。痺れるだけよ〜。

お茶会サークルよ。一緒に刺繍しましょ?

殿方にモテる所作とおもてなしで貴女は無敵♥」


「魔獣食材研究部っすよ!

「エトワール・サリュ」!!

あの食べっぷり!しびれ毒すら消化する胃袋!!覚えてる?

そそ!屋台の!

屋台の肉美味しかった?ボソッ………薬盛ったんだがな………。

楽しく魔獣狩って食べて標本にしてまた食べようぜ?」



 にこやかな笑顔とセールス文句はすごく興味がある。

何なら話だけならすごく聞きたい。


でもその絵面がおかしかった。

彼等の足元にはクレーターが出来てるし、紅茶がかかった辺りは溶けている。

ゴリゴリと重そうなこん棒を引きずっているし、

りんのぶら下がる木にどこからかナイフが刺さった。

それも溶け出したから堪らない。


「お話だけなら………」


「「「「「まず、これ嵌めさせて〜〜」」」」」


先輩方の手にはうごうご動く《星堕ちの花冠》。

さっきよりも棘が鋭くなっている気がする。

持っている先輩方が痛くないのか心配だ。

たぶん痛い。

禍々しい臭気を放っている。甘い香りの中に怪しい薫りがした。


サイコホラーのゾンビのように。

それよりも攻撃力が高く機動力もある《鬼》が一斉にりんに襲いかかる。


「「「「「「「「エトワール・サリュ!!」」」」」」」」


「サークル名聞こえないよ〜〜反則〜〜」


なんとか避けて跳んで身体を捻って。


エトワール・サリュの洪水の中警告音は鳴り響く。

それでも。


「へへ。反則ポイント減の5ポイントなんざ。

何十回した所で500点もらえばおつりがくるさあ………」


下世話な笑いと呟きが聞こえた。


「ちょ?!《減点ポイント》システムの不備を告発します!!教諭!!誰か!!」


「警告! 佐藤 りん、ここにいます!!

警告!!ペナルティ。「教諭を呼ぶ」」


りんの背後の虫型監視カメラが唸りだした。


「ひ!理不尽?!」


りんの周りの監視カメラもサイレンを鳴らす。

その上にはりんの顔写真。


まるで指名手配犯だ。


「「「「正義感あり!!有望株!!」」」」


ズドン!!騎士団のこん棒が地面を抉る。


「ひあ?!騎士ってこん棒使いますっけ?」

「使いません。だから適応されました。剣だったら君死んじゃうよ?」

「武器の適応基準おかしくないです?!」


「「「「ツッコミ力!!有望株!!」」」」


ドロッ………じゅ。蜂蜜のように甘い香りがする液体なのにりんのキュロットが一部溶けた。

匂いの反射で動かなかったらもろに被っていただろう。


目が合うのはにこやかなポットを掲げた女の先輩方。

徒党を組んでポットを掲げている姿も優雅だ。

刺繍針を突き出す先輩方もいる。



「きゃあ!?なんでスカートなのに蜂みたいに飛ぶの?!」

「女のスカートの中は魔窟なのよ〜」


「待って?おしとやかなお姉さま憧れてたのに?!刺繍とか編み物とか私好きですよ?!」

「ならいらっしゃい〜」


「お話!お話だけなら!いや〜〜!!」


女の先輩方もえげつない攻撃をする。

りんは叫びながら走った。


「「「悲鳴かわいい!!有望株!!」」」


ネチャネチャ。暗闇でなにか粘っこいのが蠢いた。


「いやあ!!なんか変態いますよ!!運営委員さん〜。

変な音する〜」


「魔植物学研究部だよ。君植物の悲鳴が分かるの?」

「植物の匂いが蠢いてこわいです!!」


ヒュンヒュン鞭のようにしなる植物がりんの脚を捕縛しようとしたけど踏んづけた。

「う………ふん………」と悶えながら闇夜に消えた。


「えげつないな………。生殖器官踏んだぞあの子」


「一番匂いが臭い所踏んだだけですよ?!」

「恐ろしい子………」


先輩方が青ざめ口を押さえる。

蹲っている先輩もいる。


「こっちは被害者ですよ?!」


怒りに震えたザワザワとした葉の音がした。

仲間の悲鳴に共鳴したのか。 

キュイキュイとか何かが聞こえた。


「植物の悲鳴が怖い!!」


「「「耳がいい!!有望株!!」」」


バキバキ!!魔獣食材研究部の大きな網が木を薙ぎ倒しながら迫ってくる。

あれをどう防げと言うのか。


「美味しかった!美味しかったので!!お話だけしましょうよ?!」

「しゃらくせえ!弱肉強食だ。悪く思うな。

捕まえたらたらふく食わせてやんよ」


まだ炭火焼きの魔獣の匂いを纏わせながら先輩は網を振り回す。

一瞬肉のいい匂いに動きが止まりそうになる。

一番の強敵かもしれない。


「優しいけど怖い〜」


りんはなんとか対話を試みた。

皆と目が合うし正気だ。

それなのに止まない攻撃にりんも仕方なく脚がでてしまう。

もう正当防衛だと思う。


「あ。蹴っちゃった?大丈夫?退学とかないよね?」


叫んだら背後で警告音がした。


「警告。

今夜は無礼講。弱肉強食の宴に破壊と暴力は必然です。

大丈夫。死ぬ前に止めるよ。


佐藤 りん、カウンターポイント加点。50点」


退学はなくても先輩を蹴るたび加算されるシステムもどうかと思う。

それに誰のための加算なのか。

敵が増えるだけだ。


「や〜!新入生に武器持たせないとか理不尽です?!

盾!!盾くらい配布して!!

生徒会!生徒会の職務怠慢!!サイコパス!」


「生徒会を招集。受理しました。

生徒会との一騎打ち申請が受理されました。


発言力、統率力あり。運営の不備指摘。

様々な発言を加味。

罵詈雑言なし。いい子ちゃんポイントも加算されます。

ご褒美加点ポイント200点。


佐藤 りん、さんのレアポイントがあがっています。

鬼の皆さん、こぞって攻撃し捕縛しましょう」



「へ〜。罵詈雑言言わないポイントなんてあるんだ?」 

「聞いたことないな?」

「大抵の新入生。泣きながら俺等貶して泣くもんな?」

「それも含め、かわいい後輩だよ」

「俺等もそうだったよな〜」


背後からのほほんとした集団の声が聞こえる。

何やら薬草のような香りがした。

危険な香りがする。ぷんぷんする。

先輩方は丁寧にお辞儀する。


「エトワール・サリュ。魔術研究部です。

エルル先生から伝言。

「貴女は絶対魔術の才能があるの!!私育てたいから大人しく捕縛されなさい!!」 

以上。


いけ!!昏倒魔術放射!!」


ばひゅん!ばひゅん!


「ひあ!」


辛うじてりんは避けられた。

光っていたのと危険な匂いがしたから。

勘は正しかった。

りんの背後で被弾した他の新入生がどんどん倒れていく。

その新入生に笑いながら群がる先輩方。

地獄絵図だ。


「「「いい子ちゃんおいで〜〜」」」


「いやあ〜〜や〜〜」


アナウンスが鳴り響いた。

より気配が増えてきている。

ポイント加点なんかしたらただりんの《獲物の価値》が上がるだけだ。

りんに何にもご褒美にならない。


「わ!なんでぇ?」


りんが叫び抗議する度に鬼が増えたような気がするのは気のせいだろうか。



ーーーー。一方リリスホールでは。


 教諭達の実況のもとそこはライブ会場の様相だった。

出店もある。飲食も可能だ。

ちらほら親の姿もある。

立派な祭典だった。


「おっと!有望株勇者候補!岸選手!


なすすべもなく、花冠を………………なんとか逃げ切ったあ!!」


岸が逃げ惑う姿をラブバーゲンの乙女達がハンカチ握りしめて観戦している。

岸が先輩方を殴った時にはスタンディングして大盛り上がりだった。

その隣のモニターの上部がチカチカ点滅している。

注目すべき変動があった場所は光る仕様らしい。

映るのは猿田だ。


「猿田選手!!先輩方をちぎっては投げ、ちぎっては投げつけて無双だあ!!

無双ポイント加点150点!!

おっと!佐藤 りんと合流かあ?!走るはしる!」


その上のモニターがチカチカ点滅した。

そこにいるのは星だった。


「星選手!!

優雅に上空から先輩方を襲い気絶させている!!

暗闇からの奇襲!!


上空ポイント80点加点!!」


その左のモニターがチカチカ点滅した。

点滅した割にその画面は平和だった。


「琥珀、アンテ選手ペア!!

魔術研究部に自首をした!!賢い!ずるい!

この狂乱の中、無傷だあ!!

無傷ポイント20点加点!!

魔術研究部100点獲得!!おめでとう!!」



アンテと琥珀は白旗振りながら魔術研究部の部長と握手していた。

だが笑顔はそこまでだった。

花冠を首に巻く儀式は自首した生徒にも適応されるらしく。

アンテと琥珀の首に花冠が蠢きながらギチギチと食い込んでいく。


彼等の血を吸い花は輝きを増した。

神々しいはずの儀式が禍々しい。


「うわ………」

「棄権して良かったあ………」

「あれは毎年見るけど無理〜」


会場中がどん引きしている。

絵面がやばい。すごく面白い。



「佐藤 りん選手!!

あの数の鬼を一切傷付けず避け続け………。


え。そこも躱す?

あれ。そこはいなすんだ。

へえ………。そこは関節の動きに合わせて威力を殺して………。


へ………。すごいなこの子。

先輩方無傷ポイント100加点〜〜」


ポチっとなと楽しそうに教諭がボタンを押す。

新入生の人数分のモニターに指示を出す姿はどこかの艦隊の司令官だ。

教諭達がモニターを注視し、点数を割り振っている。

リタイアした生徒の緊急要請にてんやわんやだ。

金髪のニコニコした教諭の実況は面白くて白熱していた。


「りんっち。あの子すごくね?」

「逃げてる………。だけに見える………のに」


「ダンサーのあたいも身震いするよ。まるで演舞の動きだよ。あれ」



ナタージャと咲は食べていたお菓子を置きモニターに魅入った。

学園の皆は派手に立ち回る猿田や星、岸や、澪の戦闘を歓声を上げながら見ていた。


でも。

りんのモニターからはまるで戦闘ではなく。


「踊りながら笑いながら会話してるんだよ。あの子」


「舞う姿は蝶。避けるカウンターはまるで………」

「うん。しなやかな女豹みたいだよ。

特にしなる長い脚が猫科の尻尾みたいなの」


相手の攻撃を手をしならせて感知した後、唸る脚が先輩方がりんを掴もうとする度に鞭のようにしなる。


ピシリとかパンといった音とともに先輩方はよろめき他の先輩方ともつれ合う。

ゆらりと動いたと思ったら残像を残して背後で足払いする。

また先輩方はもつれて転ぶ。


りんのキュロットと二ーハイブーツのブルーの軌跡が闇夜に透けてよりミステリアスだ。


「りんっち。あの子「ただの人類」ってよく言うけどさ。

やっぱ現し世人類は規格外だよね………」

「………。ん。岸君もね」

「澪ちゃんも猿田も、星もすごいな」

「アンテは………ずるい」

「琥珀守る最短ルート叩き出したんだよ!あの頭でっかち!ウケるかも!」


 画面ではぐったりとしたアンテと琥珀を担ぎ上げてお祭り騒ぎの酒盛りをしている先輩方が映し出された。

モニターの下に字幕で「お酒ではありません。生徒が魔術で作ったアルコールのジュースです」と注釈がでた後そのジュースもどきは弾けて消えた。


最低限の治安維持は果たしているらしい。


「でもな………。りんっち。

一人の時雰囲気変わるね。まるで………」

「足枷のない野生動物みたい」

「それだ!!りんっち。いつも周り見てうちらフォローしてるから………」

「私達………足枷………いやだ」

「足手まといは嫌だな………あたいも」


ナタージャと咲は棄権したことを後悔していた。

だけど。


「ごきゅっごきゅっ………」


「ぎゃあ〜〜」


「棘が〜棘が〜 」


「へへ。ポイントいただきい〜!」


 雷クラスがなかなか捕まらないフラストレーションが他の生徒に向かっているような阿鼻叫喚と地獄絵図のカオスがモニターに映し出されていた。


「やっぱ次頑張る」

「ん」


ナタージャと咲は身を寄せ合いながら空へ皆の無事を祈るしかなかった。



「おっと?!

残り時間一時間半。動くぞ?!


レジオンとセルクルが!!」



何か動きがあったようだ。

残り時間は一時間半である。

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