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王子様になりたい私、勇者候補になりました!?〜全ての虐待児に捧げる幸せな話〜  作者: ユメミ


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星見祭 2.乱獲の祭典


 坩堝学園では新入生は《(ステラ)》と呼ぶ。


それが輝くのか燃えカスになるのか。

恒星になるのか衛星になるのか。

はたまた《ビックバン》を起こすのか。


新入生は無垢で透明な原石なのだ。

産まれたばかりの原始星。


将来有望な《星》達を歓迎し上級生達が愛でる(・・・)


夜の静寂の中。

夜空の星を共に見よう。

親睦を深めよう。


それが。

《星見祭》の由来である。



 夜の坩堝学園は幻想的だった。

手作り感のあるランタンから魔術とわかる火の玉まで。

ありとあらゆる光の装飾が施されている。

花壇近くには発光する花々に蝶。

妖精の子供達も遊びに来ているのか甘い砂糖のような香りがする。

水辺には魔術で創り上げた水生生物のオブジェが点滅していた。


「佐藤さ〜ん!運ぶの手伝ってもらったオブジェ。間に合ったよ〜」

「良かったですね!すごい綺麗〜」

「りんちゃんや。君が運んでくれた肥料のおかげでこんなに綺麗に咲いたよ」

「わあ!本当!おじいさんの腕がいいんですね〜」

「りんさん〜」

「りんさん〜」

「佐藤さん〜」


道中りんを見つけた人見つけた人が手を振る。

岸はまたいつものかといった顔をしているが澪は慣れないみたいだ。


「りん様は色んな方とお知り合いですね」

「うん。まだサークルもしてないし、放課後帰る時間まで時間余るじゃない?

どうも身体動かさないとむずむずしちゃうし。

キョロキョロしてると目が合う人、目が合う人話しかけられると楽しくてついね」


「こいつは《困った人》ほいほいなんだ。

なんか《たのんだら大丈夫そうオーラ》出してるんだと」 

「りん様はカリスマもあり、下々にもお優しいのですね」


感心したように頷く澪はいつもりんを過大評価気味だ。


「んん。お互い様なんだよ。うちでは家事するのも狩りするのも大勢でやれば皆が助かったからね。癖かな」

「ああ!!りん様は大家族でしたものね?」

「そ。25人いるからね〜。賑やかだよ」


「おい。狩りは聞いてないぞ?何狩ったんだ」


岸がこそこそと青ざめながら言った。


「………ある日〜森の中〜」

「熊か?野生の子供はすごいな!!」

「現し世の熊はどのくらいの大きさなのですか?!」


「んとね。1階の屋根に登っても引きずり下ろされるくらいかな?」

「小さめですね」

「いやいや。それ相当巨大な熊だろ?!」

「魔グマは二階建ての屋根にぶら下がります」

「こえ………」


 曲芸する先輩方。

大きな剣を丸呑みしながら血飛沫を上げて退場する芸は圧巻だった。


「あれ………演技だよね?」

「演技だよ♥って看板でてますし」

「血飛沫あびてもぴょんぴょん跳ねる看板………。

おいおい。裏方の先生顔青くね?」


魔術を披露して夜空に新しい星座を作っている集団もいる。


「あ。星が落ちて燃えてる」

「あ〜。下の屋台丸焦げだ」

「その火で魔豚焼いてますよ」

「めげねぇ〜なあ」


食べ物の屋台もある。

牛型の魔獣の首がどんと掲げられた肉串の店の脂の薫りは蕩けそうな破壊力だし。

妖精の集めた蜜を謳うかき氷屋さんもある。

現し世風を謳っているのにたこ焼き屋さんのタコは緑色でグネグネ動いている。

パンゲアキッチン程ではないにしても、摩訶不思議な食材がまるで新入生を誘うように待ち構えていた。


「食道楽だあ!」

「りん様のための祭りですね」

「これ全部無料?!すごくね?」


 りん自身も、芳しくも罪深い匂いにふらふら誘われていくと、食べている最中ずっとサークル活動の勧誘を延々と聞かされることもあった。

食べ過ぎて食材がなくなったのか、ゲンナリとされて解放されたこともあった。

演し物でサークルを紹介している野外舞台もある。


《祭り》だ。

りんにとって初めての友達と経験する祭りだ。


「りん様は箱入りだったのですね?りん様の《初めて》。光栄で御座います」

「日本では行かなかったな。確かに。」


岸も感慨深げに光り輝くランタンを見上げた。


「「「たのしい!!」」」


 腕いっぱいにお土産や食べ物お菓子を抱えてりんはホクホクで練り歩いていた。

岸も澪もりんと付き合ってたからか満腹みたいだ。

岸なんか無理して食べたのかお腹が出ている。

りんはまだまだ入りそうだ。

チラりと屋台の食物屋の先輩方と目が合う。

少し顔色が悪い気がする。

隣の屋台はさっき食べ尽くしてしまったからかもしれない。


「おい………。満腹幸せ動けない作戦。あいつに効くのか?」

「胃袋も規格外なのか………現し世人類は?」


なにやらコソコソされている。

気のせいだろうか。


「君達いっぱい食べたね。お腹パンパンじゃん。

大丈夫?逃げられるの?」


背後から声がかかった。


「琥珀!アンテも!楽しんでる?」


「やっほ〜」とアンテが琥珀を肩車しながら歩いてきた。

ちんまりした琥珀は弟分といった風貌だ。だけど肩車したアンテに指示をだしているからさながら《操縦士》のようである。

優男なアンテは甘いマスクで前髪を常に風魔術で巻き上げている。

カッコつけたい年頃らしい。


「りんさんは格好の獲物だもんなあ………。あ〜ぁ。満足そうな笑顔。琥珀。この笑顔を悲しませたくないだろ。黙っとけよ」


「それはそれで、無責任じゃない?アンテ。

君。逃げ惑うりんを模写したいとかじゃないよね」


「いや………。どっちかというと。《夜の》りんさん待ちというか」


「うわ。なにそれ。面白そ」


二人は何やら楽しそうに小突き合っている。

コソコソ内緒話もしている。


「琥珀とアンテは仲良しさんだね?」


「はあ?」

「そうなの!わかる?幼なじみなんだ!

岸とりんもそうだろ?」


琥珀は恥ずかしいのかそっぽを向いているけどアンテは興味津々といった感じだ。


「あ………。あ〜。幼なじみ………」


岸が気不味そうに頭をかいた。 

幼なじみとは幼少期から一緒にいる友達のことだ。

それには当てはまらない。

だけど。 


「そう?幼なじみに見えるって。仲良しさんに見えるんだね?嬉しいね?岸」


「り………りん」


「「うわあ………」」


何やらポカンと琥珀とアンテにされてしまった。

その後ろで澪が歯噛みしている。


「ぎぃ………。出会えた時期の違いなど。

私達の《大好き同盟》にはなんの障害はありません!

でもッ………悔しいッ………」


「澪ちゃん?澪ちゃんも幼なじみくらい仲良しさんだよ?」

「ひきゅうッ」


「あ。澪がまた爆発した」


「お〜い。そろそろ腹を落ち着かせた方が良いぞ!!」


猿田もたくさんのお土産を抱えて合流した。

福耳にもグルングルン動く長い尻尾にも何か光るものがついている。

紅い髪の上に光るカチューシャをしている。

祭りを満喫しているみたいだ。


「あ。猿田は《光らせる》ハンデ持ちなの?」

「おう。レギオンの奴らに付けられた」

「おお!《一番星》候補なんだ?」



「なに?一番星って」


笑っている間に聞き慣れない単語に反応したりんに猿田が気の毒そうな目で見下ろしてきた。


「お前等も貰ったろ。レギオンやセルクルの奴らに光るブレスレットとか花飾りとか」


 りんは自身を見下ろした。

胸にはキラキラ点滅する花飾りのブローチ。

頭には王冠のようなカチューシャ。

背中には光るたび音が鳴る妖精の羽バックに、

足首にはリンリン鳴り熱くない火花弾けるアンクレット。


「うん。たくさん貰ったよね。申し訳ないくらいだよ」

「今夜付けるようにってペタペタ貼られたこのシールとかか?」

「りん様なんか、レギオン、セルクル両方の使者から貰ってましたよね?」 


「うわ。モテモテじゃん」


岸はほっぺに剣のシール。頭には王冠のようなカチューシャ。

澪はリンリン鳴る花飾りが両腕に装着されている。


よく見ると琥珀の髪にも点滅する剣のピン。

アンテも色違いのピンがしている。


そうなのだ。

今りんを筆頭に雷クラスの面々は身体のドコかに目立つ点滅した小物や装飾品をつけているのだ。


「お祭りらしいよね」


「あぁ。本当の祭りはこれからなんだ。


乱獲の祭典が始まるんだからな」


「ら………」

「乱獲」

「祭典?」


りんと岸と澪は同じ角度に首を傾げる。


「澪は知らんか。親御さんがここ出身じゃないな?」

「俺等の親卒業生だから知ってるんだあ」

「まさか今回目立たないようしてたのに「標的」とはなあ………」


「おい!俺の養父はここ卒業生だぞ?!知らね!」

「わあ………ご愁傷さま………」


「標的?」

「申し訳ありません。魔導端末にない情報でしたね」


りんと澪が顔を見合わせる。


「あのね………」

「あのだなーーー」


琥珀と猿田の声が重なった途端に学園中の明かりという明かりが消えた。


大きな学園の城の側面や木々にスポットライトが当たり、そこに映像が映し出された。

どこにいても映像が見れるようにとの配慮みたいだ。


「あ。プロジェクションマッピングみたい」

「すげ!一学校がする規模か?」


何かの新しいイベントだろうか。

ワクワクしながら見上げる。

横では猿田が屈伸をしていて。

アンテが琥珀を背中に背負い紐でぐるぐる巻きにしている。


「あれ。そういえば。

ナタージャちゃんと、咲ちゃんは?」


魔導端末では何にも連絡なかったのだ。

当日合流かな?って澪と楽しみにしていたのに。


「《棄権》した。か弱い女子には打診が来るんだ」

「あ………。か弱い………あれ。私は?」


りんは愕然とした。

確かに蝶よ花よと育っていないし、性自認は《無》である。

でも身体は貧弱だし、普通の人類だ。

そこら辺の忖度はないらしい。


「因みに。棄権した子からの助言やリーク防ぐためにあの子達魔術かけられてるから。恨まないであげて」


「「ナタージャちゃん!咲ちゃん!カムバック!!」」


寂しくて澪と叫んだ。

うっすらと空で微笑んで手を振る二人が見えた気がした。



「ちなみに男子は強制参加。すごいじゃん。りんも澪も《強者判定》なんだからーーー」


ピンポンパンポーン。

アナウンスが鳴った。 

なんだか聞いたことのある音楽も流れ出した。

なんだか焦らされるような急かされるような曲調だった。


「運動会の徒競走みたいな音楽だな」

「なんだろ。リレーでもするのかな」


そこには。

見たことのある教諭のニコニコな顔が映し出された。



「あ。空隙(くうすき)せんせいだ」


魔素属性判定の時の金色のおかっぱ髪の男性教諭だ。

相変わらず笑い顔で瞳が糸目のように弧を描いている。


その教諭がマイクを爪で叩き動作を確認した後、更にニッコリ笑った。


「さあさあ!始まりましたよ!

こちら実況の《空隙》がお送りします!


ここからは教諭の介入はありません!!

監視はしてますが治安維持はレギオン団とセルクル団に全権委託されております!!

これ、監視カメラ」


空隙教諭が指さす先には、黒い目玉がギョロギョロした生物が虫のような羽を唸らせながらホバリングしている。


ちょっと個性的なカメラだ。


「相当な出血がない限り教諭は介入いたしません!!

繰り返します!

教諭は介入いたしません!!

教諭を見つけても助けを求めないように!

寧ろ鬼に知らせます!!


会場のレギオン団長、スルト君〜!

セルクル団長、エール嬢〜!」


「「はい」」


目の前の広場の壇上の上の上。


空に浮かぶ先輩方二人が現れた。



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