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王子様になりたい私、勇者候補になりました!?  作者: ユメミ


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一人と一匹の冒険 2.紫色の大きなかわいい子


 「わ!!かすみ草の妖精姫!?うそ!ほんとに?!」

「ひゃ!おっきい、ふわふわちゃんだ!かわいい!」


「「え?」」


 お互いに叫んで、お互いに驚いたみたいだ。

足元でふわふわちゃん101号が巨大紫ふわふわに突進していく。

大きなかわいい子の上に小さなかわいい子。

りんの何かが爆発した。


「きゃ!かわいいとかわいいの暴力!!」


「うえ?!」

「うきゅきゅきゅ!」


 大きな紫ふわふわとふわふわちゃん101号が同時に鳴くから、面白くてりんは笑ってしまった。

すると大きなふわふわがビクビクしていることに気づいた。

震えているような、おびえているような。

そんな様子に気の毒になる。


「ごめんね?びっくりしたかな?

わあ………。こんなにおっきなふわふわちゃん初めてだよ!

かわいい!………本当かわいいね?

綺麗な緑色の瞳だね?

始めまして!ふわふわちゃん101号とお友達かな?」


「ちがっ………」

「きゅきゅきゅ〜!」


「わあ!そっか。仲良しさんかあ!」


 表には《魔獣研究予備室》とあったのを思い出した。

だからふわふわがいるのだとりんはやっと腑に落ちた。

ここは坩堝学園だ。

ふわふわにも多種多様な種がいるみたいだ。


「ここ。勝手に入って大丈夫だったかな………。

ノックもしないで失礼なことしちゃったな………」


りんは抱えていたかすみ草の花束をそっと木製のテーブルに置いた。

あまりの大きさにりんの顔は埋もれてしまっていた。

まだ髪にかすみ草が絡みついている。


ーーーバチリ。


大きな紫ふわふわの緑の瞳と目が合った。

かすみ草越しでなくてもその子のふわふわの我儘ボディの重量感は凄まじかった。

かわいいとは大きさは関係ないとりんは学んだ。


「!?りーー!」

「きゅきゅきゅ!」


大きなふわふわが鳴くたび、一緒にふわふわちゃん101号も鳴く。


「ふわふわちゃん101号、ごめんね。ちょっと奥に先生いないか探してくるね?」


「ちょっ…まっ」

「きゅきゃきゃきゃ!」

「うん!仲良しさんと一緒に待っててね〜」


りんはふわふわ達に手を振り、パーテーションの奥にお邪魔することにした。


「お邪魔します!」


ハキハキを心がけて声をあげてみるけど、返事がない。


「すみません〜」

「すみません〜だれかいらっしゃいませんか〜」

「もしも〜し」


りんは、さっきの大きな身体を哀れなほどに縮こませて震わせてたふわふわを思い出した。


「かわいいふわふわちゃんが、一人だと誘拐されますよ〜」

「私、連れて帰っちゃいますよ〜」


呟きながらパーテーションの裏に回り込む。

そこには応接セットがあった。

しんと静かな静寂の中。一対のティーカップが湯気をあげていた。


ーーーさっきまで誰かいたけど。どこかに呼ばれたとか?


奥にも扉があるけど、透かし窓からは暗闇しか見えないし気配がない。


背後で興奮しているふわふわ達の鳴き声を聞きながら周りを見渡した。


 壁紙は天井まで蔦を現した幾何学模様のようだった。

りんの部屋にある壁紙とそっくりだった。 

あの凹凸も艶も本物のような蔦の壁紙だ。

触るとじんわりと温かい温もりまでそっくりだった。

りんが大好きな壁紙だ。


ーーー蔦の壁紙とここの蔦の葉っぱの形が同じだ。流行りなのかな?


りんは壁紙だけでもここの部屋の主と話が合うのではと嬉しくなった。


応接セットの背面には本と、色んな大きさ形状のガラス瓶が所狭しと壁一面に配置されていた。

中には摩訶不思議なものが浮いている。

半透明な黄緑の液体の中には何かの尻尾。脈打つ紅い宝石のようなもの。牙や角らしき尖ったものはビロードの布に並べられている。


本は分厚いの、擦り切れているもの、煌めいているもの。年代物とわかるものから、童話のようなかわいい絵柄の背表紙のものがある。

鬱蒼としていてまるで知識の森のような佇まいだった。


ある一角には覚えのある作者の本がイニシャル順に並べられていた。


「あ。これ澪ちゃんが見せてくれた電子教材の作者さんだ」


『君の友達が魔獣なら?』 

『人工魔素生物には自我があるのか』

『不思議な魔植物』

『魔獣の巡る人生と罪、贖罪と食材としての人生』

『魔獣をペットにすることの残虐性とは』

『魔獣を美味しく無駄なく食べよう』


 それらは全て『S.M著』と記されていた。

魔獣や魔植物についての本を書いているみたいだ。

教科書として持っているものから、見たことのないタイトルもある。

帰ったら新刊をリリスお母様に頼もうと心に決めた。



ーーー仲良くなりたいのか、食べたいのか。

わからないタイトルが多いな………。


りんはこの作者さんに興味が湧いた。

りん愛蔵の《死種欄(ししゅらん)ガイド》を語り合える気がしたから。


 もしこの人に会えたら「ファンです」と伝えたい。

りんはそっと背表紙を撫でたけど手を引っ込めた。

部屋の主が不在中に物色はさすがにまずい。

罪悪感から背中がブルリと寒くなった。

振り返ると黄緑色の液体に浸かった何かの目玉と目が合った。

じっと見つめ合って。

正確に言うと目が離せなくなってしまったのだ。

しばらくしてやっとりんは我に返った。


背後では元気な鳴き声が聞こえた。

跳ねている元気いっぱいのふわふわちゃん101号をお手玉のように投げて遊んでいる大きなふわふわが視界に見える。


「どうしよ。あの子置き去りにして帰れなくなっちゃったな………」


こんな辺鄙な部屋に一人ぼっちのふわふわ。

あんなにかわいい子が可哀想だ。

身体は大きいけど瞳は揺れていて、動揺と戸惑いを感じたのだ。

身体の大きさと寂しさは関係ない。

不安で寂しいのではないだろうか。


りんは逸る気持ちを抑えながらふわふわ達の所へ戻った。


「大きいふわふわちゃん………。

ここのお部屋の先生。どこにいるか知らないかなぁ?」


大きいふわふわはりんの声にビクリと跳ね上がった。

大きくて重量がありそうなのに浮いたのだ。

その緑色の瞳は左右にうろうろ動き、黒い手がバタバタとしている。


「ん………?恥ずかしがり屋さんかな?」

「うきゅうきゅ!」


「やっぱり一人ぼっちで寂しいよね?」


りんは大きなふわふわの腹の辺りをそっと撫でた。

小さなふわふわも擦ると喜ぶ部位だ。


「ぎゅッ………」


「あ。ここ気持ちいい?いいこいいこ………」


一瞬聞こえた鳴き声に気を良くしてりんは夢中になって撫でた。

ぷるんぷるん震えたり身じろいで笑っているように緑色の目が細くなった。

小さなふわふわちゃん101号は相変わらずご機嫌で、大きなふわふわの頭で跳ねていた。


「ここで何をしている」


その声に我に返り手の動きを止めた。

見上げた大きなふわふわちゃんが声にならない悲鳴をあげた。心なしか絶望している気がする。


「佐藤………りん?何故貴様ここに?」


背後から困惑のバリトンボイスが聞こえた。


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