雷クラスへの挑戦 2.ここのみんなとクラスメイトになりたい
そこにいたのは黒焦げになった男子生徒だ。
深く黒いフードを被っている。
「星君!無理しちゃ駄目だよ~」
りんが近づくと星と呼ばれた男子生徒は一瞬目を見開いてから顔を反らした。
動きが悪い事を見つけられた時の子供のようだ。
「りんさん。僕はいいですから。
なんの役にもヒントも掴めないまま落下する日々ですし」
星は縮こまっていた漆黒の翼を再び広げ飛び立とうとした。
だけど飛び立たなかった。
りんが彼の靴を掴んだから。
ーーービタン!!
星は顔から草原に打ち付けて落下した。
それは申し訳ないとは思うりんだった。
でも顔に腹は代えられない。
「駄目だよ!悟飯大事!
怪我してないからとか。役に立ってないからとか、なし!」
「僕は勇者になりたいんだ!邪魔しないでよ!」
星は泣きそうな顔でりんを振り返った。
りんは目がしばしばした。
辛そうな星の瞳が眩しかったから。
「うん。すごいな。星は将来のことをよく考えてるんだね」
「君みたいに。ご飯のことばかり考えてる人にはわからないよ!」
「ふふ。くいしんぼなの」
「っ。何でそんなにご飯ご飯。
皆にお母さんのように付きまとうのさ!」
りんは固まった。
言われてみるとなんでだろうか。
「う〜ん。そうだね。
うっとうしいよね………」
りんはしばし考えた。
頬に爽やかな風が撫でる。
BGMにしばし「ちょ………離して」とか。
「え?なんでこの子女の子なのに握力こんなあるの?」とか。
「え。強まった?え?イタタタ………」とか。
星の必死な声は最早風と同化しつつある。
考えるけど手は離さない。
聞こえるけど気にしない。
ほんとに嫌なら蹴ってでも抵抗するのが男の子だ。
それがないということはやっぱり星ははらぺこで力が出ないのだ。
しばらくして。
星の力が完全に抜けたあたりでりんは話し出した。
少し抵抗した瞬間関節を決めたのがよほど痛かったらしい。
「あ。うん。ごめんね。そうだな………。
たぶん。昔ね、ご飯食べないで力でなくて。
大事な人守れなかったことがあるの。
それから出来るだけ食べられる時食べるようにしてる」
「ごめん。
すごく聞いちゃいけないこと聞いた気がするけど。
君の握力が強くて。痛くて。
捕まったら最後逃げられないのはわかった」
「うん。逃がしたら死ぬ子達と遊んでたから」
「そんな子いるの?」
「すぐ死にに行くよ………。野生の子供は」
「野生の子供………?」
星はすっかり大人しくなった。
時折りんをチラチラ見て申し訳なさそうにしながら鍋をつつく。
その様子になぜか澪がご満悦だ。
「何度無礼なこやつをぶった斬ろうかと思っていましたが。
人知れず鍛錬をする。努力を見せない。
皆のために挑むものに嫌なやつはいない。
さすがりん様、見る目があります!胸糞は悪いですけど!」
星がお茶を吹き出した。
りんはニッコニコだ。
顔を真っ赤にした星を皆が囲む。
「期待させないように隠れて攻略しようとしたんだろ?」
「なげ〜縄の強度確かめながら腰に着けといて。
『一人で抜け駆けしようと頑張りました』は無理あるなあ」
「え?あ?り………りんさん?!」
首まで真っ赤な星がりんに詰め寄る。
りんはそれを笑いながら首を振った。
「無実無実〜。皆君の事よく見てるだけだよ〜」
賑やかな鍋パーティーは楽しく過ぎていく。
「まだ『雷クラス挑みの落ちこぼれ』はいるのか?」
「お前らよく頑張るな〜?退学したいとか(笑)」
「りん様〜私たちのクラス来ませんか?楽しいですよ?」
心配の声もいつもより頻繁に聞こえる。
学園の皆も当事者じゃなくとも気になるみたいだ。
「皆。辛かったら………」
りんの言葉はいつもかき消される。
「「「「「「「「負けず嫌いなんで」」」」」」」」
「うふふ。私もそうみたい」
りんが吹き出すと皆が思い思いに話し出す。
進行役はいなくとも意見を言い合えるいい空気だ。
「なんかさ。『来るもの拒まず』とか嘘ばっかだし」
「なにが『草原で途方に暮れろ』だ。
あれ書いたやつぶん殴ってやりたいものだな!」
「栄誉、キラキラな視線!特別すき〜」
「ん!ん!」
「ここのみんなとクラスメイトなりたい〜!」
「勇者………なりたいです」
「ここ来るとふわふわちゃん101号の仲間が来るから仕方なくだな。金平糖の食付きがいいんだ。
明日は飴試したい。りんを見張らなきゃだしな」
「りん様の覇道へのお手伝いですね」
「女の子達心配だし」
「うん!明日も諦めず頑張ろう!」
円陣を組む。
ーーーこの子達とクラスメイト。叶うといいな。
退学まで。
残り一日である。




