表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/48

29 同じ戦場に立つ方法

『はい!』と元気なお返事をしたライズは、両手をピョコピョコ動かしながら説明を始める。


『これまでのジーク殿下を見る限り、殿下はとても頭がいい方のように思います。越えてはいけないラインをよく分かっているというか……』

「確かにね」


 ジークが王宮のルールを無視して感情のままに動くような人間なら、早々に婚約破棄できたはずだ。しかし、ジークからロアンナへの無理難題は、あくまで「王太子妃に相応しい者には、これくらいの能力を求めます」と見せかけた上での嫌がらせだった。


『ジーク殿下は無理難題を出すことにより、ロアンナ様が失態を犯すように誘導しています。しかも、自分は常に安全な場所にいて、ロアンナ様を他の人と競わせているのです』


 ロアンナはハッとなった。ライズの言う通り、バラ園の整備ではお飾りメイドのエリーと。馬の早駆け勝負では王宮騎士団長のデュアンと競わされた。


『このやり方なら、うまくいこうがいくまいがジーク殿下は無傷です。現状では、ロアンナ様とジーク殿下は、同じ戦場にすら立っていません』

「なるほどね。じゃあ、どうすればいいのかしら?」


 ライズのつぶらな瞳が、まるで悪だくみをしているかのように細くなる。


『ジーク殿下を無理やり同じ戦場に引きずり出してやりましょう』

「何か考えがあるのね。教えてくれる?」


 ロアンナのお願いに、ライズはコクリと全身で頷く。


『異世界では、城に籠っている敵を戦場におびき出して、相手をボコボコにした戦いがありまして』


 ライズは小さな手で、シュッシュッと殴る動作をしている。


『諸説あるのでこれが正解だとは言えませんが、センゴクダイミョウ(戦国大名)……えっと、この世界で言う領主かな? その領主達の戦いで、籠城戦(ろうじょうせん)をしようとしていたトクガワ イエヤス(徳川家康)の城を、タケダ シンゲン(武田信玄)があえて無視して素通りすることにより相手を挑発して誘き出したという説があるんです』


 素通りされたトクガワ イエヤスは、城から出てタケダ シンゲンを背後から奇襲しようとした。しかし、打って出た先ではタケダ シンゲンが待ち構えていたため、討ち死に寸前まで追い詰められ大敗を期した、とライズは説明を続ける。


『これを応用して、まずジーク殿下を徹底的に挑発します。それと同時に、相手に今、城から出てきて攻撃すれば勝てると思わせるのです』

「私達は、それを待ち構えて倒すのね?」

『そうです!』


 ライズの言う通り、これまでのやり方ではジークと対等に話すことすらできていない。ロアンナは覚悟を決めた。


「それ、やりましょう。となると、ジーク殿下を挑発する方法を考えないとね」

『あっ、それも案がありまして……。うまくいくかどうかは、エリーさん次第なんですけど』


 そのとき、ロアンナの部屋の扉がノックされ、弟のレイが入ってきた。


「姉さん。エリーさんが目覚めたよ。姉さんに会いたいって言ってるけど、どうする?」

『ちょうど良かったです!』


 ライズは、作戦をロアンナに耳打ちする。


『という感じなんですけど、どうでしょうか?』


 作戦を聞いている間にも、激怒しているジークが思い浮かんで、ロアンナは苦笑した。


「それが成功するかは、確かにエリー様次第ね。やるだけやってみましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ