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飽和する世界の夜明けから  作者: takenosougenn
第一節 世界の果てまで
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6話 異世界4日で悪魔かよ

 バシャバシャとリヌイの赤い尻尾が水面を叩く音がする。

リヌイはこの個人用の大浴場は大陸の中でも随一の大きさだと朔に自慢した。


 なんでも、初代当主が物凄いお風呂好きだったらしくマルティネス邸を作る際、最もこだわった部分がこの浴場だった。魔法により常に清潔で効能のあるお湯が用意できる状態となっており温かみのある木材が西欧風に使われている奇妙な作りだった。


 リヌイが朔に向かって水の中で燃える炎を見せる。

お風呂の中の水の中でリヌイが生み出した炎の結晶がキラキラと舞っていた。


 地球では見られなかった光景に思わず朔は感嘆の声を漏らす。

その反応にリヌイは満足したのか上機嫌に濡れた尻尾を勢いよく振った。



 お湯から上がった二人が寝間着に着替え食堂へ行くと既に全員揃って席についており、二人の準備を待っていた。

「いただきます」といって食べ始めたリヌイにクロエが「帰ってくるのが遅いですよ。」と遊んでいたことを含めて指摘する。リヌイは朔に魔法を教えていたのだとなんとか弁明しようとしたが、クロエに教えてもらっていたか、と聞かれた朔が「遊んでいました」というと食堂は笑いの声に包まれた。



「ところで、朔様はスキルの術式化は済ませましたか?」


 ふと思い出したようかにクロエが口を開いて、一日中の修行により腹ペコで肉にかぶりついていた朔に聞いた。「術式化?」と朔が聞きかえすと隣でメイドさんと談笑していた命が驚いた顔で「もう術式化するの?」と言った。


「りぬ様から聞いたかもしれないけど、術式化ってのは魂のスキルを肉体に刻み込むことで一回刻んだ術式はもう二度と替えることは出来なくなるんだよ。」と命が朔に説明する。

その説明を聞いていたクロエは二人に再び説明した。


「お二人には次の年の春から魔法やスキルを学ぶ学校へ入学していただきたいと思います。そして受験資格として、術式の所持又は一定の強さを持つ者、年齢が16歳以上である者。の二つがあります。なので朔様には今所有しているスキルの内一つを儀式によって強制的に肉体に刻んでもらおうということです。」


 それを聞いた命が「えぇ。」と怪訝な顔を全面にだして態度だけで抗議する。

一方朔はあまりにも突拍子のない話に、ホグ〇ーツを思い浮かべていた。

因みにリヌイやクロエなどの若くして高ランク冒険者になった者には入学しない人も多いとのことだった


「なのでお二人には受験に合格できるように冬の間にしっかり準備してもらいますよ。」


 笑顔一つ崩さずににっこりと言い放ったクロエを尻目に、リヌイはのんきな声で「がんばれ~」と言いながらデザートをほおばっていた。

朔と命は顔を見合わせ、どうなることかと苦笑いした。




 すっかり月が頭の上を過ぎて全員が寝静まったころ。

マルティネス邸に続く一本道の先に、大きな翼をもった人型の影がマルティネス邸をじっと見つめて立っていた。


 影はマルティネス領へと足を踏み入れようとするが、見えない壁のようなものによってその行動が阻まれる。その後も影は何度か通り抜けようとするが毎回壁に阻まれる。


 何度も壁に阻まれた影は地面が震えるほどの大きな雄叫びを上げた。

木の上で寝ていた鳥は飛び立ち地面の虫は死んだふりをする。


 雄叫びを受けた壁は、半透明になって一部がボロボロと崩れ落ちた。

影は崩れ落ちた壁の穴を通り抜けて街へと足を踏み入れる。

雄叫びを聞いて何事かと思い、外を覗いた住人達が「悪魔だ!悪魔が入ってきたぞ」と大きな悲鳴を上げた。


 悪魔と呼ばれた影は周りに住人には目を向けずに、ただまっすぐとマルティネス邸へと向かって歩いて行った。


 マルティネス邸の一部にもその騒ぎは届いていた。

まず一番最初に壁の崩壊に気づいたのはクロエだった。

壁、結界を築いたのはクロエであり、破られた瞬間に術師本人であるクロエは異変に気付いた。

クロエはすぐに結界を張り直し、リヌイが寝ている部屋へと急いで走った。


 すぐに、リヌイの部屋にたどり着いたクロエはノックもせずに部屋に入ってリヌイを文字通りたたき起こした。


 すると、リヌイの部屋に走って向かってくる2つの足音が近づいてきた。

足音が止まり、3回ノックがあると命と朔が入ってきた。

リヌイは、寝起きでうまく開けない目をこすりながらクロエの説明を聞く。


「えぇ、たいへんじゃん。どうすんの」


「悪魔は住人に見向きもせずにまっすぐ私たちのところに向かっているようです、りぬ様も感じているとは思いますが魔力の大きさからしてランクの高い悪魔だと思われます。ですが、もうすでに彼女が門の前で控えているので範囲内に入ったら私が空断結界を降ろします。」


「おっけ。ならダイジョブそうだね、.....」



 リヌイが眠いと言って2度寝しようとすると、クロエは起きてくださいと言って体を揺さぶって起こした。




 悪魔はマルティネス邸の門の前まで来ると立ち止まった。

少し先にある門の前にメイド服の少女が立っている。

悪魔が少女をを一瞥して一歩踏み出すと悪魔の背後には背後に結界が降ろされた。


「私さ、寝起きが一番機嫌悪いんだよね......ねむいしさっさと終わらせて寝ようかな。」


 少女は足にバンドで止めていた尻尾を外して大きく背伸びをする。

ぐっと動きで屈伸したすると、姿が消えて悪魔の腕が切り飛ばされていた。


「あれ、首を真っ二つにしたつもりだったんだけど。やるね。」そう言った少女は、いつの間にか悪魔の後ろに移動しており少女の手には、いつの間にか巨大な矛がハサミ状になった特殊な武器を構えられていた。


 その光景を見ていた朔は圧巻されて「えっぐ」と呟いた。


「彼女の名前はルシア・フェアリル、狼人ウェアウルフです。その中でも圧倒的な実力を誇ります。りぬ様が対軍の高出力広範囲攻撃であるとするならルシアは対少数でその本領を発揮します。体術だけならS級にまで匹敵します。」


 クロエが説明し終わる前に、悪魔はルシアの手によってバラバラに切り刻まれていた。

ルシアは武器の血を落として拭くと、眠たそうにあくびをしながら帰っていった。



「あぁぁぁまだ、まだ。!!」


 バラバラにされた悪魔の頭はまだ意識があるのか、戦うときは声も出さなかったのに騒ぎ出した。


「あ゛、あ゛のお方が、あのリッチ様が、復活なさる゛。その時には、皆ごろしにな・・・・・・」


 悪魔が言い終わる前にクロエが魔法を発動させて悪魔の肢体を押しつぶした。

クロエは「玄関を汚してしまった」っと言いながら素早い動きで掃除していく。

人の血の匂いではない異様な匂いでおおわれていた空間は、すっかり元通りになっていった。




 朝、朔が目覚めると昨晩の騒ぎはなかったかのようにクロエが朝食を運んできた。

だが朔はどうしても昨晩のことが頭に残ってしまい朝ごはんを食べる気にはなれなかった。


 そんな朔を見かねてか、クロエは少し街へ行こうと言った。

言われるがままついてくる朔を見てクロエは何かを言うことはない、ただクロエは街を歩き必要なものを買いそろえていく。


 ただ最後に子供がいっぱい集まっているところへ立ち寄った。

併設されている遊具で、沢山の子供たちが大きな声で騒ぎながらのびのびと遊んでいる。



「ここは、りぬ様が建てた孤児院です。Sランクになって代替わりをするときに地域に貢献するために建設しました。いま50人近くの子供たちが一つ屋根の下で暮らしています。だいぶ復興しましたがりぬ様が幼い時に戦争があったのです。」



 そうして見ていると子供たちがクロエを見つけて駆け寄ってきた、クロエは「バリアのおにーちゃん」と呼ばれて、見えない壁を出してとせがまれている。クロエはそんな子供たちに結界を小さい範囲で出してあげながら、続けて朔に話をした。



「この子たちが笑顔でいられるのは間違いなく、りぬ様やルシアの様な抑止力が敵をすぐに倒してくれると知っているからです。あの悪魔が何をしに来たかはわかりません、ただ張った結界を無理やり破って街に危険を及ぼすことは許されないのです。」


 そう言った、クロエの顔は子供たちを向いていて朔からは見えなかった。



 朔たちが家に帰ると、朔たち2人が朝ごはんにいなかったことを心配していたリヌイが出迎えた。

リヌイは「心配したよー」と言って2人を客間へと連れて行った。


 クロエは事情を知っているようで「行けば分かりますよ」と言った。

部屋では既に命とが座っており朔はその横に座らせられた。


 リヌイが外に「入ってきていいよー」と呼びかけると、朔が入ってきた反対側の扉が開いて昨晩、悪魔を卒倒させた、少し長めのウルフカットをした少女が入ってきた。


 夜だったので朔は確認することができなかったが、紺色に近い紫色の髪の毛が、大きくてキリっとしている目を申し訳なさそうに少しだけ隠していた。そしてなぜかメイド服の上からパーカーを着ている。



「えっと、ルシア・フェアリル、16歳。よろしく?」

ルシアが短い言葉で挨拶する。その口からは一瞬だけ小さな牙が垣間見えた。


 朔がどうしようかと命を見ると、命とも初対面のようで3人ともどうしたらいいか分からず固まっていた。とりあえず2人は自己紹介をしたが、結局どうしたらいいか分からずクロエに助けを求めた。



「ルシアにはお二人と一緒に学園に入学してもらいます。」



 2人の戸惑いを察したクロエが3人に告げる。


 ルシアも聞かされていなかったようで、人の耳と同じ部分についているモフモフの耳をピンと張らせて驚きを示した。だが、足に止めてある尻尾が揺れているところから喜んでいることが伝わってきた。



 その様子を見た命がルシアに学校へ行ったことがないのかと聞いた。

そうするとルシアは「私は戦争孤児だったの」と言った。



 話を聞くと、11年前に隣の国で起こった戦争で両親も家も失って、奴隷として馬車に乗ってこの国に来るときに魔物に襲われたが、素の戦闘力の高さからただ一人生き残って、落ちていた短剣を頼りに半年ほど魔物を殺しながら放浪していたところをマルティネス邸の前当主に拾われたらしい。



 その後、当時7歳だったルシアは前当主の紹介で孤児院へと入ったが、環境に合わず結局マルティネス邸の小さなメイドとして雇われたとのことだった。


 そして前当主が亡くなった3年前に修行のため遠くにあるマルティネス家の分家へと拠点を移していたらしい。


 更に、ちょくちょく、こっちに帰ってきてはいたそうだが毎回夜遅くに帰ってきていたため、命と顔を合わせることがなかったのだ。


 話し終わったルシアは、自分語りしてしまったと耳をぺたんと閉じて、少し恥ずかしそうにした、そして着ているパーカーのポケットから薄い紫色の指輪を取り出した。

よく見ると物凄く細かいパーツからできていることが分かる。


 ルシアはそれを見せながら「ねぇ、2人とも魔フォン持ってる?一緒の学校行くんだから連絡取れるように連絡先交換しようよ。」と言った。







教えてシズテム!!「なんでリヌ様は水の中で炎を出せたの?」


はい(p・・)/ 通常、物質が液体の中で空気中の酸素と結びつくことができないため炎は液体の中で発生しないですが、魔法によって体内の魔素を外側に放出しながら魔素を光エネルギーと熱エネルギーへと変換するため液体のなかでも炎が発生できます。


ルシア・フェラリル

朔たちと同じ16歳の少女、幼い時から戦闘のセンスを持っており近接戦闘では圧倒的な実力を誇る。

性格は自由奔放で人を寄せ付けるようなオーラがある。

種族は狼人ウェアウルフであり、その中でも人間に近い端麗な容姿を持つ。


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― 新着の感想 ―
だんだんと不穏な感じになってきましたね。 あの方、、気になります。 あとメイド服の上のパーカーは反則だと思いました。
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