5話 魔力の覚醒
朔は街から帰ってきて夜ご飯とお風呂を済ましたあと、今日買ってもらった洋服などを片付けていた。
異世界に来る前は基本研究に明け暮れていた朔だったが、たまに頭をすっきりさせるために運動を兼ねての武術や某ゲームでの完全感覚で対人戦闘したりなどで余暇を過ごしていた。
そんな朔にとってはネットも道場もないこの世界は退屈ではあった。
することもなく暇を持て余していると、ドアを叩く音がして朔が返事をする間もなくドアノブが回された。入ってきたのは案の定、命だった。朔が少し文句を言うと命はケラケラと笑う、そして朔の部屋を見渡すと「何もない部屋だね」と言った。
命は朔のベッドに音を立ててうつ伏せに飛び込むとわずかな時間黙って動かなくなる、朔が寝てしまったのかと思い「寝るなら自分の部屋で寝ろ」というと、命は顔をうつ伏せになったまま口を開くことなく足をバタバタと動かして起きているというアピールをした。
「なんかこういう会話するのも久しぶりだよね、私瀕死で意識もない状態でこっち来てさ2年間必死で勉強してスキル磨いてやっとC級になったんだ。
一生会えないと思ってたから心の準備ができてないのに急に出てくるし。本当はさ昨日の夜寝るの怖かったんだよね寝たら夢から覚めそうで、起きたらいなくなっちゃうんじゃないかなって、でも朝起きても朔君はちゃんと存在しててさ、うれしかった。
ありがとう、探しに来てくれて。」
朔は命の言葉に対して多くの言葉では返さなかった。
お互い感情が高ぶってしまっていて限界だった、朔は昨日命に疑問を感じていた。
それは命が自分と再会したことに泣かなかったことだ、朔自身にそこまで好かれているという自負があったわけではない。ただ命は一週間家族や朔と離れるとなったときに毎回落ち込んでいて、帰ると涙目でお帰りって言っていたからだ。
だが今、命が朔に言った言葉で朔の疑問が晴れた。
今回命が泣かなかったのは再開した瞬間に朔が泣いたから、命はそれ以上朔に心配をかけることがないように泣くことを我慢したのだった。
しばらく黙っているとベッドから静かな寝息が聞こえてきた。
朔は命を彼女の部屋まで運ぶのも面倒だったため、毛布を掛けて自分は椅子の上で寝ることにした。
朔が朝起きると自分の上に毛布が掛けられており既に命は部屋を退出した後だった。
昨日買ってもらった洋服を着て身支度を整えていると、クロエさんが訪ねてきた。
朝ごはんを持ってきていてくれた、おにぎりに唐揚げと何かのジュースだった。
クロエは「ご飯を食べて身支度を整えたら、昨日の演習場へとお越しください。りぬ様が待っているので。」と言った。
朔が身支度(と言っても昨日買ってもらった短剣と拳あてを手に持っただけ)を済まして
演習場に行くと既にリヌイはそこにいた。
昨日のように寝間着姿ではなく所々に金属のプレートが付いた布製の防具を身に着けていた。
「おはよ、まずはデルデアから届いた防具に着替えてもらおうかな、今日は俺と山で修行するから頑張ろうね。」
そう言ってリヌイは紙袋を朔に手渡す、朔が手に取って着替え終わると。「じゃ、飛ぶけど大丈夫?」と言った。
朔がうなずくとリヌイは朔を抱きしめて全力でジャンプする、特S級となると身体能力も桁違いなのか、頭上すれすれに雲があった。
リヌイは落ちながら片手で朔を抱え、もう片方の手で魔法を発動させて、風と炎が生み出されて推進力へと変化させる。真後ろに豪炎があるはずなのに朔には暖炉に当たっているほどの熱量しか感じなかった。
3分ほど経ちリヌイが降り立った先は周り一面山で囲まれている崖だった。
「ここは魔境の1つで植物系の動かない魔物がいっぱいるんだよ、山を全部焼いても2日もあれば植物でいっぱいになってしまうから魔法とかの試し打ちするのにちょうどいいんだよねぇ。だから今日はここで魔力の扱いを習得してもらいます!」
待ってましたと言わないばかりにリヌイのケモ耳がピコピコと動く。
リヌイは崖から突き出ている大岩の上に足を組んで座る、そして自分の足の上に座れと朔に促してきた。
少し物おじしながら座る朔を引っ張って座らせて「魔力感じる?」と聞いた。
朔が全く感じないと答えると、少し考えて口を開いた。
「なら魔力って何?から教えて差し上げよう!!魔力ってのは俺たちから出ていると言われてるし自然界にもいーっぱい存在している、。そして魔力はそのエネルギーを術式や詠唱を通してイメージを具現化させるための力だーって最近のお偉いさんたちは言ってるんだよ。」
朔がそう言われても、と苦戦しているとリヌイは「なら俺の魔力で包み込んであげる」と言った。
リヌイがそう言った瞬間、朔は自身の周りの空気が変わった気がした、よりはっきり情報が流れてくるようなそれでいてとても、すっきりした感じであり、そして安心感と物凄く心地よさを感じた。
「もっと深くまで意識を落としてみて。そして周りを感じて俺の魔力を感じて」
朔はさっきまで感じていたリヌイの感触がだんだんと分からなくなっていって、外の温度や音すらも感じなくなっていった。ただそんな中で朔が感じたのはリヌイから発せられる膨大なエネルギーだった。
自身が異世界に来た時のノアの椅子を彷彿とさせたがあれは力が暴走したようなエネルギーだったのに対しリヌイから感じる力はどこか優しく全てを飲み込むような穏やかな力だった。
そして自身にも同じ力があることを感じる、リヌイの力にかき消されそうなほど小さな力だがハッキリと自分の力だと確信できた。
朔がもっと深くまで入り込もうと息をするのすら忘れかけ始めた時「まだ、その時じゃない」と微かな音で聞き覚えのない女性の声がして朔は一気に現実へと引き戻された。
「あ、リンクが切れちゃった。まぁ分かった気がするでしょ、魔力」
朔に意識が戻ったことをすぐに感じたリヌイが声をかける。気がつくと既に太陽は真上を通り過ぎていた。そしてリヌイのお腹が鳴ったのを合図として二人はお昼休憩をとった。
「(!!。。)スキルで魔力感知と魔力制御を取得することに成功しました。」
朔はどうやら新しいスキルを手にすることができたようでシズテムが報告をする。
リヌイは日向ぼっこ(お昼寝)タイムに入ったため朔はシズテムに今持っているスキルを報告してもらうことにした。
「(””・・)今持っているスキルは「エネルギア」「翻訳」「魔力感知」「魔力制御」「シズテム」
の5つです。また魔力感知と魔力制御を得たことによって、シズテムでスキルの解析を行うことができるようになり、特異系スキルであれば獲得することが可能となりました。」
朔のもとに衝撃的な事実が転がり込む。ただスキルを獲得するためには色々と条件があるようで解析をするのには一度スキルの効果を受ける必要があり、また十分な情報量が必要であることが条件であった。
朔がスキルを使ってみようとしたがリヌイがお昼寝を終わって起きてきたため、それは一旦中止となった。午後は何をするのかと思えばただひたすらに組み手だった。
ただ普通の組手ではない魔力を感じ取った朔がずっと魔力を引き出し続けながら永遠とリヌイに組み手を仕掛け続けながら、魔力をなじませ慣らしていく。一日が終わることには一時的に肉体を強化するところまで魔力が安定して引き出すことができるようになっていた。
リヌイは異世界人は魔力が初めから体になじんでいるのだと言った。
異世界に来る際に肉体が膨大な魔力を取り込み肉体がそれに適応しようとするからだ。
まずは肉体で魔力を扱いその扱いに慣れてきたら、魔力を一か所に集めたり高めたりなどの操作に入っていく。またそれに慣れたらスキルと併用したり魔法にしたりしていく。
それを朔にこの冬の間で会得してもらうとリヌイは言った。
「そういえば、朔ちゃんにスキルと術式と魔法の違いについて説明したっけ」というリヌイの問いかけに対して朔は「いいえ、てかそんなにあるんですか?」と息を切らしながら答える、この会話のあいだも組み手は継続されていた。だが急にリヌイの手が止まる。
「なら、違いについて説明しなきゃじゃん! 面倒だから端的にいうと、スキルは魂、術式は肉体、魔法は技術なんだよ!!」
「え、?! それだけ?!」
余りにも説明を省いた内容に朔は驚くが、リヌイはうまく説明できたと思い、やり切った表情をしている。
リヌイは「今日はここまでしよっか」といって、来たときと同じ方法でマルティネス邸まで朔を抱えていった。
家に帰るとクロエさんが既にお風呂の準備を済ましていて「まずは汗を流してきたらどうですか?」と言った。
朔が自分は後ででいいからと言ってリヌイさんに先に入ってもらおうとしたら、リヌイは一緒に入ろうと言って、そそくさと自分の部屋に戻ろうとする朔を魔法で捕まえてお風呂場に引きずっていった。
教えてシズテム!!「スキルは魂、術式は肉体、魔法は技術って結局どういうこと?」
(= 。。)/
はい、リヌ様の「スキルは魂、術式は肉体、魔法は技術」という言葉について説明します。
朔様が所持しているスキルは訓練とか修行などによって使えるようになる特殊な能力のことです。
ただし中には修行とか関係なくスキルが発現することがあり、それは特異スキルて呼ばれおります。
術式はスキルが肉体にも刻まれることで完全にその人と結びつき強化されたものをいいます。
基本一人一つしか使えないことが多く、稀に複合術式が存在しています。
あと術式は魔法や呪力で強化することができてスキルのランクと違って全部に対抗することが可能になってる。
魔法は魔力を詠唱や陣に流したり道具を使ったりして様々な現象を起こすことです、ただ無詠唱などにより魔法を発動できるケースもあるようです。