表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飽和する世界の夜明けから  作者: takenosougenn
第一節 世界の果てまで
4/33

3話 マルティネス家

「はじめてだね、俺の名前はリヌイ・マルティネス17歳。一応特Sランク冒険者兼ここの領主をしてるよ!!」


「俺は斥宮朔16歳、命の幼馴染です。」



 お互い短い挨拶を終えて、一瞬静まる、だがリヌイは元気そうな見た目の通りよくしゃべる人だった、そのおかげで二人はすぐに打ちとけた。

朔がする質問にリヌイが楽しそうに答えていく、そうしているうちに日も落ちて肌寒くなっていった。


 冒険者にはランクがありE~特Sまでのランクがある。

リヌイはその一番上のランクに分類されており、世界中でも同じランクは18人しかおらずそのうちの一人であった。また、特Sランク帯に分類される魔獣や呪霊などもいるとのことだった。


 朔が空腹を感じ始めたころ、3人が待合室で談笑しているとクロエが夕食ができた事を伝えに来た。

朔がこの世界に飛ばされたのが昼前であった上に世界を渡ってきているため、朔は久しぶりの食事だと感じていた。


 3人で食堂に向かうと既にご飯が取り分けられたお皿が並んでおり、3人とも席に着いた。

また、意外にも使用人たちも一緒に食べるらしくリヌイが座ったすぐ後に、使用人たちも席に着く。


「それじゃーいただきます!!」


「「いただきます」」


 リヌイが挨拶をすると使用人や命も挨拶をする。

なぜか日本と同じ挨拶に朔が戸惑っていると、横に座っていたクロエさんが命の発案だといった。


 命が今の朔と同じように、初めて一緒にご飯を食べるとなったときに「いただきます」と言って食べ始めたのを見た、リヌ様が真似をし始めたのがきっかけだという。


 どんな状況でもしっかりと作法を忘れないのは、流石神社の跡取り娘といたところだった。

良くも悪くも命が来たことでマルティネス家に和風の文化が取り入れられていたらしい。


 初めて見る料理に箸をつけることのできない朔を見て、命が「大丈夫おいしいよ」という。

朔が意を決して、料理に口を付けてみると意外にも食べなれないようで食べなれたような味だった。


 少し新しい世界で緊張して強張っていたうえに、肌寒くて冷えた体には温かい食事がとてもよく浸みていった。話を聞くとどうやら、作法だけでなく料理の味にすら命が口を出していたらしい。

だからこそ、異世界から来た朔でも食べやすい味となっていたのであった。


 今この地域では、四季でいう秋らしくもうすぐ冬支度をするところだった。

そこでクロエは朔が来て朔がこの世界で暮らすための準備を整えるついでに、明日街へ出て冬支度をすると言った。


 全員がご飯を食べ終わると使用人は残りの仕事に、他は自室へと戻った。

一人取り残されそうになった朔のもとにクロエがやってくる。

どうやら、朔の部屋の準備ができたようで朔の部屋は2階の命の部屋の隣だった。


 案内された部屋は中のきらびやかな装飾がなされている内装とは違って、落ち着いた見た目であり何故か一角に畳があった。


 朔としては畳は慣れていて寝転がると気持ちいため申し分ない。

朔は異世界であるマルティネス家に畳があるのは正直不可解と感じたが、すぐに命の影響だろうと結論付けた。



 朔は身一つで飛ばされたため部屋に置く荷物もなかったので、お風呂があるといったクロエさんにお風呂を案内してもらう。そこで朔が着ていた洋服はとりあえず洗ってくれるらしく、着替えは脱衣所に置いておいてくれると言った。


 朔は今までの経験から一瞬、窯風呂じゃないかと疑ったが、流石にそこまで変えられているわけもなく普通の大浴場だった。朔はシャワーを浴び体の汚れを落とした後、贅沢にも大きな湯ぶねにたまった濁り湯に身を沈める。彼の口からは無意識にも大きなため息がはき出てきた。


 まず、朔は研究によってシャワーで済ます生活を続けていたため湯ぶねにつかるのは数年ぶりだった。

彼がこんな状況でゆっくりと湯ぶねにつかっていられるのは、命と会えたことで肩の荷が下りたためであった。


 それだけ、不確証な、100のサイコロでぞろ目を出すような実験の日々であったことが伺える。

実際のところ彼の一日は身を削るほどであって、何度倒れたか計り知れない。


 そのたびに助手の人たちが慣れたように介抱していたのだ。異世界という意味の分からない状況ではあるが、命と出会えた今のほうが彼にとってよっぽど楽なのである。


 朔がお風呂を終えて脱衣所にある着替えを確認してみると、そこにあったのは案の定旅館にあるような浴衣だった。


 浴衣を着て西洋風の部屋のベッドで就寝という何とも不思議な状況だが、朔はもう考えるのを諦めていた。彼はどうにでもなれという思いで就寝した。肉体が若返っているといっても長年の疲れも溜まっていたのか、その日は一回も目覚めることなく一夜をこえた。



 朝、朔は猛烈にドアを叩く音で強制的にたたき起こされた。

外では鳥の鳴き声がしており、朝日が部屋に差し込んでいた。

前の世界では地下の研究施設で寝起きしていた朔にとっては、朝から地上に出て日光を浴びることがあっても目覚めと同時に朝日を浴びることがなかったため、数年ぶりの健康的な朝であった。


 朔が寝相によってついた髪の癖を撫でながら少しかすむ目でドアを開ける。朔はてっきり命だと思っていたが、そのにいたのは赤髪の少年だった。朔は思ってもいない人物に少し戸惑うが、少年の次の言葉でもっと戸惑うことになるのだった。


「朔ちゃん! 今から実習場へいくよ!!」


「へ?」


 朔がリヌイに起こされる少し前のこと、リヌイはクロエの部屋に押し入っていた。

それは、朔にリヌイ本人が稽古を付けたいという要望をするためであった。


 前回命がこの家に来たときはクロエが魔力操作の方法やスキル制御や知識を教えていた。

だからそれを見ていたリヌイは自分もしたいと今回言い出したのである。


 クロエはだいぶ渋っていたが、あまりにもリヌイが懇願するため仕方なく実技を教えることを許可したのだが、それを聞いたリヌイは一瞬にして朔の部屋の前に来てドアの鳴らしたのだ。


 朔は言われるがまま用意されていた服を着て中庭のようなところに来ていた、実習場と言われてここにつれ来たはいいものの、連れてきた本人はすぐにどっか行ってしまって朔は暇を持て余していた。


 待っているとやっと実習場の扉が開いて、リヌイが出てきてすぐ後ろにクロエもついてきていた。

朝早すぎるし冬支度をしないといけないと言うクロエに対して、言い訳すこともなくただリヌイは駄々をこねて「手合わせくらいいいでしょ」、と反論していた。


 ただ、クロエはリヌイを甘やかしてしまうのかクロエの両手には様々な武器が握られていた。

朔は拳で大丈夫だと、武器を使うのを断った。


 「受け身はとれる?」そう聞くリヌイに朔は一応と答える。

するとリヌイは「まぁ、子供でも傷がつかないレベルで投げ飛ばすから。」と楽しそうに言った。

因みに朔はこの世界での子供の身体能力がどれ程か知らなかったが、まぁ大丈夫だろうと考えてしまっていた。


 朔は牛との戦闘経験やこの世界に来た時の経験から、自分の身へのエネルギーをスキルで軽減する方法をずっと考えており、昨日の夜にシズテムを使ってある程度のスキルのセットをしていたのだ。

朔はスキルの発動の仕方に3種類あることを事前にリヌイから聞いていた。


 1.使用者の意志によって発動させる方法

朔が牛にとどめを刺した際に使用した方法である。


 2.何かしらの条件によって自動的に発動させる方法

朔がこの世界に来た時にシズテムか自動でスキルを発動した方法である。


 3.常時、スキルを発動させる方法

朔がリヌイたちの言葉が分かるように相互に翻訳されるスキルがある。


そこで、朔が昨日の夜シズテムにある程度の調節をさせることによってセットした内容が以下である。


1効果範囲内で朔自身が負傷しそうなエネルギーを負傷しない所まで低下させる。

2鋭利状の物や鈍器などが飛んできたときに効果範囲内に入った瞬間、速度を減少させる。

3打撃の瞬間、朔自身にかかる負荷を軽減し相手に与えるエネルギーを増加させる。

4朔が戦闘を開始したと感じた瞬間、朔にかかる重力を軽減する。


 この4つの手段をシズテムを使用した条件付き発動にしてみたのだ。


「さぁ、時間無いから始めちゃおっか。」リヌイが大きく背伸びをする。

クロエが合図をした瞬間、朔は反応することもできずにリヌイに投げ飛ばされる。



「(!!。。)エネルギアを発動させました。」



 シズテムが半自動でスキルの発動をする、そのおかげで朔は投げ飛ばされはしたが外傷なしで済んだ。

「もう少し手加減しないと」と、リヌイは言いながら次は受ける構えをとって手招きしてくる。


 朔は不安を感じながらも地面を蹴るエネルギーを増加させることにより、生身では得ることのできないレベルでの推進力をもってリヌイに突っ込む、そしてなれた手つきで柔道技をかける。



 リヌイは防ぐ気がないのか流れるように技に合わせて受け身を取りすぐに立ち上がって、今度は朔でも反応できるレベルの速度で突っ込んでくる、それを朔は合気道の応用で受け流していく。



 ずっとシズテムがスキルを発動させたという報告をしてくることから、まず触れられてる時点で外傷を受けるレベルの攻撃であることが伺える。


 だが朔も簡単にあきらめるような弱い人間ではなかった。元来、朔は命の事件によって勉強し始める前まではずっと武道などをしていたのだ。そのためか受け流す動きが体に染みついていた。



 組み手をし続けて5分くらいしたところクロエから、止めの合図がかかった。

ヘロヘロになってしまっている朔に対して、リヌイは一切の疲労が見えない。



 「すごいね、最初の投げでノックアウトさせる気だったのに5分も耐えちゃった。あと攻撃した感触よりもダメージが少ないように見えたけどそれはスキルの効果かな.....俺の動きに朔が反応できていないとこをみるとスキルの発動は自動かなーあと身体能力強化もスキルな気がする。」



 一回手合わせしただけでリヌイは大抵のことが分かったらしく、感心しながらある程度の分析を口にする。一方、朔の中ではこれからの異世界生活に期待と不安が入り交って複雑になっていた。





クロエ=フローレス

マルティネス家の執事兼教育者

性格は非常に穏やかでいつもにこにこしているが、怒らせたら怖い一面も。

基本的に甘いところがありリヌイのわがままにもいつも付き合ってあげている、

大人びているがまだ19歳であり、リヌイの執事ではあるものの悪友兼親友的な立ち位置でもある。


リヌイ=マルティネス

マルティネス家現当主であり、18人しか現存しない特Sランク冒険者の一人である。

最年少特S級認定記録者であり、圧倒的な強さを誇る。

性格は純粋無邪気で基本わがままである、ただ他人に優しく街の人の手助けなども多い。

特Sランクになるほど強くなった理由も敵が痛みを感じる前に殺す為である。




教えてシズテム!!「スキル発動3法のメリットデメリット」

(”。。)!はい、そのトピックについて箇条書きで詳しく説明します。

1では、使用者が操るためより細かいスキルの制御や早い発動ができたり、スキル本来の性能以上を引き出すことができる、ただ扱いが難しいスキルは自爆の原因となったり効果が発揮できないことがる。

2では、自分の意識外で発動したりできるためオートでのガードやカウンターなどが発動できるようになる。ただし、オートなのでセットしたことしかできなかったり想定以上の攻撃やスキルに弱い。

3では常時発動することができるが常に脳のリソースを埋めてしまう事になる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Xの企画からきました! マルティネス家が和洋折衷になっているの面白いですね。 状況を想像すると笑えました。 シズテムの能力も色々と設定があって、いいですね!
 シズテムが半自動的に『エネルギア』を発動させて朔の外傷を防ぐとのことですが、そのエネルギーは何処から来てるんだ…  朔が消耗しているようにも見えないし…別の空間から?  シズテムが万能過ぎる。  
朔は格闘技かなんかやってたのかな?それかスキルのお陰か?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ