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飽和する世界の夜明けから  作者: takenosougenn
第二節 学院入学試験

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29話 白紙のテスト

「受験者の方は右ゲートから、付き添いの方は左ゲートからお願いしまーす。」


 テオス・アナテマ学園の入門ゲートでは入り口が2つに分けられて、係員の人が整理を行っている。

すでに受付を済ませたマルティネス一向の5人は、一度ここで別れることとなった。


 テオス・アナテマ学園の入学試験は5日間によって行われる。

毎年、各形式は様々だが三次構成で行われており、一次が筆記、二次がサバイバル試験、三次では能力試験となっている。


 観客が入ることができるのは二次試験からなのでクロエとリヌイはお見送りをした後、またお祭りを見て回ることにしたらしく、リヌイがクロエにどこに行こうかと質問していた。


 受験者ゲートを通って受験会場に移動した朔・命・ルシアの3人は、広い部屋に通されて1次試験の説明を受けていた。説明員はいかにも魔法使いのような見た目で、青いローブを身にまとい身の丈はあるであろうステッキを手に持っていた。


「えーそれでは。1次試験の説明をさせていただきます。80分の試験時間内で、この紙に書かれた問題を配布された鉛筆で解いてください。またカンニングが発見された場合は10点の減点とし、最低合格ラインの30点を下回った場合はその場で失格となります。」


 そのルールは朔が思っていたよりも簡単なものだった。

説明を受けた部屋には扉が一つあり、いつの間にか朔たちが入ってきた扉はなくなっていた。

唯一の扉が開かれ、その先の部屋で朔たちは各々自由に席に座った。


(たぶん、この試験はカンニングを行うことを前提として試験が行われてる。ならどんな問題でも解ける俺は最後に一気に書き込むしか方法がないな。)


 朔はそう思いながら問題用紙を見つめると、問題用紙はまさかの白紙だった。


「いや、まじかよ。」


 朔は小さい声で思わず呟いた、幸運なことに誰にも聞こえていなかったらしく何事も得なかったが、これでは回答することができない。


(シズテム。これ分析できるか?)

「(”○○)既に完了しています。どうやら魔力感知でしか見えない文字で書かれているようです。更に分析系の能力を持っていないと判断できない隠された暗号が見つけれました。」

「まじか.......」


 朔はシズテムの分析力に余りにも呆然としていた。

もし今回の試験でシズテムがいなければ、朔は問題を説くことすらままらなかったであろう。


 朔が魔力感知を最大にして問題用紙を凝視すると、ぼんやりと異世界の文字で問題が浮かび上がって見えてきた。


「第一問。ここに伝導率AAAと伝導率Aの魔道具があります。この二つの魔道具に魔力を200dp加えたときの差を答えよ。※魔道具の材質は問わないものとする。」


(うーん。思ってたより簡単だな。中学生でも解けそう。あ、でも大学レベルの内容のものもあるな。やっぱりカンニングを想定してるだけあって正攻法では30点はとれなさそうだな。大丈夫かな、あの二人。まぁ、まずは全部回答してから暗号を解くか。)


 朔は問題を見ると、すぐに暗算で解き始めた。

10問ほどある大問を僅か20分程度で暗算すると、暗号解読に取りかかろうと更に魔力感知を最大にした。


 その時、朔のすぐ後ろに見張っていた試験官がやって来た。

(まさか、シズテムがばれたのか)と朔がドキドキしながら様子をうかがっていると、朔の真後ろの人が試験官と一緒に受験会場を出ていった。数分して試験官だけが戻ってきて後ろの受験者の答案用紙を回収していった。


(失格、か。まぁこのシステムだとそんなこともあるだろうな。シズテム暗号ってなんだ?)

「(#。。)暗号を確認するためには、用紙に魔力を流してみてください。」

(ん?こうか?)


 シズテムに言われた通りに朔が魔力を用紙に流してみると、魔力感知で見えていた文字が見えなくなり新たな文字が浮かび上がった。


「これは一人一人の最後の問題で、魔力に反応して一人一人に用意されたものである。紙は一人一人に予言となる文書を与える光羊紙。世界を変えると追い求め、果てに得たのは力。力は欲を生み世界は変わらずあらゆる物は支配される。魂は流転し、からだは土地となる。神は果て世は滅び、力は巡る。神の子となるば世を正す。力は潰え飲まれ糧となる。生きとし生ける全ては元より無常と進む。」



(おん.....ほう....?うん、分からん。)


 朔は文章を見ても何も分からなかった。

なぜなら問題なのに何を回答したらいいかすら書かれていなかったからだ。


「残り10分!!」


 朔がわからないまま何度も文章を読み直しているとかなり時間がたっていたらしく、試験官が50分も過ぎたことを大きな声で叫んでいた。


 朔は慌ててまだ回答していなかった大問10個分を解答用紙に書き込むと、再び最後の問題に目をやった。問題を書き込んだことで少し頭の中が整理されたのか、先ほどより考えがまとまっていた。


(一人一人を3回も言ってるのは不自然だよな。絶対何かある。そして問題が本当ならばこの問題は各個人違うもので決まった答えがあるわけじゃないだろう。予言っていうからには多分俺のことを言っているはず。なら答えは.......)


 朔が解答用紙に最後の答えを書き込むと、待ち構えてたように試験終了の合図があった。

皆がペンを置いて紙から手を離すと、試験官が持っていた杖を振る。

すると、まばらに解答用紙が浮き上がり、杖を振った試験官の下に集まった。


 朔の解答用紙も試験官のものに飛びったっていく。

だが、周りを見ると浮かび上がっていない解答用紙もあった。


「えーいま、解答用紙が手元にない者が1次試験の合格者です。なのでー解答用紙がある者はその解答用紙を持って後ろの出口からお帰り下さい。」


 解答用紙が無い合格者の人たちが座る中、不合格であろう50人ほどが椅子から立ち上がり、後ろのドアから出ていった。泣いている人もおり不合格者の人々は足取りが重そうだった。


 だが、まだまだ人が残っており、朔が見る限りではざっと400人弱が残っている。

例年通りであればここからさらに半分ほどが落とされるため、朔は莫大な魔力を持つ強者たちを見て気を引き締めていた。


「えー合格者のみなさまは、えー明日からの二次試験に備えて一旦帰宅してもらいます。明日は2日間に渡ってのサバイバル形式の試験となるので、会場はとなりの浮島で行います。なので直接となりの浮島まで来て下さい。移動手段としては船がありますが、大変込み合うことが予想されるので十分な余裕を持ってお越しください。あと、飛んだり泳いだしてこれる人達はできる限りそうして下さい。では解散。」



 試験官はそう言うと、魔法で壁にドアを出現させて出ていった。

残された合格者達は各々自由に動き始め、その場で友人と話す者や、すぐに出ていく者もいた。

朔はとなりにいた命と少し離れていたルシアを見つけ出し、一旦人が少ないところまで移動した。


 まだまだ余力のある朔に比べて、命とルシアは相当頭を使って疲れたのかぐったりとしていた。


「最初白紙が来たからびっくりしちゃった。印刷ミスかなって思ったよ。」

「インサツ?けど、何とか解けて良かったね。」

「あ、そういえば二人は最後の問題解けたか?予言のやつ。」


 朔が2人に聞くと不思議そうに二人は首をかしげた。

聞くと存在にすら気づかなかったようで、紙に魔力を流すという仕様にも気付かなかったらしい。


 試験会場から3人が出ると、クロエとリヌイが出店で買った料理を手に持って出迎えた。

リヌイは食べるのに我慢できなかったらしく、串肉を片手に持って可愛らしい頬をもぐもぐと動かしている。



「良かった全員1次試験通過できたんですね。」



 クロエは3人一緒に出てきた所を見てほっとした様子で肩の力を抜いていた。



「あ!そういえば、デルデア様が来ているようなので明日のサバイバル試験に向けて道具のメンテナンスもできるみたいですよ。」


「あ、それなら私はヴェアヴォルフを見てもらおうかな。スタンピードの後も結局見せてなかったし。

「俺もついてくよ、大太刀を見てもらわないとだから。」



 クロエからデルデアが来ていると聞いた大型の武器を使う朔とルシアは、デルデアの下に向かうことにした。一方、大した武器を使わない命は先にホテルに向かうらしく、いったん分かれる事になった。


 朔はルシアと2人で、人込みをすり抜けながらデルデアの下に向かう。

思えば朔はルシアと2人で何かすることがほぼ無く、少々話題に困っていた。


 ルシアはそんなことを気にする様子も無く、小さく鼻歌まじりに楽しそうに歩いていった。



「あ!そういえば、髪飾りは命ちゃんに渡せた?」

「え、なんでそのことを?!」

「ふへへ、すごいでしょ。」


 ルシアはニコニコと切れ長の大きな目を細くしてドヤァとふざけた顔をする。

それにつられたのか、朔は気まづかったことも忘れて自然と笑ってしまっていた。


「いやー、ここ最近ずっとソワソワしてたし分かっちゃうよね。」


ルシアは脚に括り付けてる尻尾を振って笑いながら話す。

朔はその様子を見て(あぁ、自分が絡もうとしていなかったんだな。)と反省していた。



「命、喜んでくれたよ。ルシア、ありがとな。」


 朔が笑ってルシアの名前を呼んで感謝を伝えると、ルシアは目を大きくして驚いたで笑った。


「わ!!始めてちゃんと目が合って名前を呼んでくれたね、こちらこそどういたしまして!」



 そうこうしている内にいつの間にかデルデアが出している出店の前まできており、二人は「早かったね」といって顔を合わせて笑った。



 だが、そんな平和な雰囲気の中、一人異様な様子を隠して人ごみに紛れている人物がいた。

その人物はルシアの鼻や耳でも、数々の冒険者の感覚でも捉えられないほど巧妙に殺気を隠している。

ローブを被り、顔には狐のようなお面を付けている。

お面は左あごの辺りから頬の部分まで欠けており、僅かに血色の悪い白びった肌をちらつかせていた。


 一瞬その人物はルシアと朔を見て気に留めたが、すぐに興味を無くしたようでそのまま人の流れに身を任せる。お面の人物は誰にも気づかれないま

教えてシズテム!!~光羊紙って結局何?~


(!!・・)はい!光羊紙とは魔法学園で育てている光羊と呼ばれる羊の毛から作った特別な紙で、魔力をよく含み様々な魔法の土台となったり、魔法を刻んだりする事が可能です。さらにとても頑丈で炎で焼かれても水で濡れても形を変えることはなく魔力でしか加工することができません。

今回は光羊紙に予言を与える魔法や点数を判断出来るような魔法がかけられていました。

また予言と言っても、いつ、どこで、だれが、どうなるのか、という部分がとても不明瞭で、どうしてこの様な予言が読まれるのかまだわかっていないそうです!!


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