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飽和する世界の夜明けから  作者: takenosougenn
第二節 学院入学試験

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新章 16話 入学試験に向けて

第一章を読んでいただきありがとうございます。

異世界の生活に慣れぬままスタンピードに放り投げ出され、新たなる敵の出現。

そんなトラブルを乗り越えた朔を待ち受ける試練がこの先も続きます。

是非とも朔の冒険を暖かく見守ってください!


※ここからは作者からのお願いです。

小説を書くのにも評価やコメントがあると、執筆のモチベーションになります。

なのでブックマークを押して、☆☆☆☆☆→★★★★★に変えてもらえると嬉しいです。

書籍化の後押しをしてください!!

 残冬の寒さがわずかに残り、出てきた草花が寒さで震えている。

そんな草花を踏み分けながら一人の少年が広い草原を歩いていた。


 Eランク魔獣の尾長兎テールピットが少年に向かって鋭い牙をむき出しにして飛びかかっていく。

音もなく背後からとびかかってくる兎を少年は回し蹴りで遠くまで蹴り飛ばした。

兎は勝てるわけがないと悟って朔の方から走って逃げていった。


「(!・・)11時方向50m先から推定Dランクの中型魔獣3体が向かってきてます。」


 シズテムが朔に報告したわずかか3秒後、ガサガサと音が鳴って3匹のネコ科のような猛獣が飛び出してきた。青黒い体毛に一部緑色が混じる姿は獲物に強い威圧感を与える。


 朔は2体の爪を避けるととびかかってくる1体のお腹に拳を突き立てた。

猛獣、ヴェルデマキュラーは殴り飛ばされるがダメージを感じている様子が無くすぐに起き上がって唸り声をあげる。


 朔はショルダーバッグのように肩にかけていた1.2mの大太刀の柄に手をかけた。

牙をむき出しにして嚙みつこうとするヴェルデマキュラーを大太刀で受け止めると刀を支えにしてお腹を蹴り飛ばす。


 エネルギアで打撃のエネルギーが増加できるのならば、刃の点にかかるエネルギーも増加することができる。朔は蹴り飛ばしたと同時にヴェルデマキュラーが刃を離したのを確認すると一歩踏み出して刀を振り下ろした。


 ヴェルデマキュラーは脳天から綺麗に半分に切り分けられた。

逃げようとする残りの2体をクロエから受け取っていた結界で捕獲して首を落とすと、周りにいたのであろう小動物が血の匂いを感じて朔からガサガサと離れていった。


 生き物ではなくただの物となったヴェルデマキュラーの血抜きを済ませると、命がよく使っている収納袋を取り出した。一見麻で編まれているような手のひらサイズの巾着袋は2m近くあるヴェルデマキュラー3体を全てしまい込んでいく。


「Dランク昇級任務、発生しすぎたヴェルデマキュラーの駆除か。まぁこれでいいでしょ。」


 朔は任務依頼の紙を取り出すと紙に魔力を通して任務達成のサインを書くと紙が一瞬にして燃え尽きて灰となった。



 朔は異世界に来て冬を超える間に様々な経験をした。

魔力の習得を始めとして、日々の稽古、スタンピードや浅久良アサクラ 南雲ナグモの襲来。

朔はスタンピードでの活躍やアサクラ事件による大型魔獣の発生での避難誘導が認められてEランクへとなりDランク昇級任務の許可が下りるまで成長していた。


 あの事件以来、浅久良は姿を見せていない。

朔は浅久良の言った「仲間にしたい」という言葉がずっと引っかかっていたが、学校の入学試験の特訓で日々忙しくなり次第に意識も薄くなっていった。


 大太刀は朔がデルデアに頼んで作ってもらった特注品であり、スタンピード後に直接届けられたものであった。


 始めは扱いに困りまともに振り下ろすことすらできなかったが、エネルギアで大太刀にかかる重力を減少させて軽くする事で大振りながらも小回りの利く戦闘ができるようになっていた。



 朔は戦利品を肩掛かたかけのバックに詰めると草原をあとにした。

1時間ほど歩いてマルティネス領に戻ると、いつも通り警備しているおじさんから話しかけられた。



「フィリム君お疲れ様。冒険者の仕事には慣れたかい?」

「はい、やっと慣れてきて一人でも依頼をこなせるようになりました。」



 朔は冒険者名であるフィリム・エヴァーローズの名前で普段生活している。

異世界人の存在は目立つため危険やいざこざに発展することが多く、その為に名前をこの世界に合わせて変えることで異世界人とバレないように過ごしていた。


 いつも警備している門番のおじさんは街全員の顔と名前を覚えており、そのおじさんとも親しくなったことは、朔にとって街そのものに受け入れられたようでうれしく感じていた。



 朔が街の一番外側にある食材市場を通り過ぎ、更にお食事通りを抜けると大きな門構えの武具屋が現れた。中に入るために4mほどある大きな扉を開けてと3mほどある亜巨人の店主がいつも通り武具を磨いている。

 


「ん。サク様か。いやフィリム様って言った方がよかったか、道具のメンテナンスにでもきたのか?」

「あぁ。妖天虎の防具とこの大太刀を頼むよ。あと今はお客さんもいないしどっちでも大丈夫だよ。」



 朔が防具と大太刀を手渡すとデルデアは優しく受け取って観察し始めた。

デルデアは集中して全くしゃべることがない。

朔はその様子を見て、自身が研究していた時のことを思い出していた。


 一概に言うと世界を辿たどる研究をしていた朔は、生物や化学、物理学を幅広い範囲で履修りしゅうしていた。命を取り戻すためという目的もあったが元々科学は好きだったこともあり、朔も研究をしている間は食事すら忘れて没頭していた。


 そんな朔だからこそ、職人のデルデアにシンパシーを感じていた。

朔がメンテナンスを待っている間、店の中を見回すと繊細な工芸品や武具などが並んでいる。


 朔は、どうしたらデルデアの大きな手でとても小さな装飾品が作れるかと疑問を持つことがあるが集中しているデルデアを邪魔することができなかった。


 見ているとアクセサリーコーナーで綺麗な髪留めを見つける。

透き通る銀色に輝いており、表面に掘られた模様が高級感を漂わせていた。


「メンテナンス終わったぞ。丁寧に扱ってるな劣化も少なかった。リヌイ様たちによろしくと言っといてくれ。」

「ありがとう、デルデア。あとこの髪飾りを買ってもいいか?命に渡したいんだ。」

「あぁ、12テスタだ。」


 朔はふところに入れていた財布を取り出すと中から12枚の貨幣を取り出してデルデアに手渡す。デルデアは髪飾りを綺麗に包装紙で包むと朔に手渡してくれた。



 朔はデルデアの武具屋を出ると、その足でアナスタシアギルドに向かった。

ギルドの依頼受付はとても混んでおりあまり人のいない完了受付まで人が流れてきていた。

朔が完了受付まで行くと、受付嬢のラスネルがいつも通りの笑顔で朔を待っていた。



「お疲れ様、フィリム君。依頼達成の報告は届いてるわよ。ヴェルデマキュラーの討伐依頼でしょここに素材出してね。」



 朔がラスネルに言われるとおりにヴェルデマキュラーが入った収納袋を渡すと、ラスネルは受付の奥まで入っていく。戻ってきたラスネルにはオレンジ色のギルドカードと依頼達成の書類が握られていた。



「Dランク昇級おめでとうございます!これがDランクのギルドカードだから。」



 Dランク冒険者は一人前の冒険者としてのスタートラインとして有名だった。

才能がないものはEランクで止まってしまい中々そこからあがることができない。


 理由は昇級任務という制度によるものだった。

G~Eランクまではギルドで開催される昇級試験でランクを上げることができるが、D~Bランクは一人で指定された任務を期間内で達成する必要がある。更に上のランクは推薦や達成した依頼などが評価される形で昇級する。その昇級制度から一人で依頼を達成できない冒険者は、ふるいにかけられてランクを与えられることはなかった。


 夕方になって人が帰る人が増えて、街の通路を歩いている人が増える。

受験時期になったマルティネス領では怪しい占い師が合格祈願や祈禱きとうをしていたり、文具を店頭に並べていたりなど、そうゆうことは日本と同じだった。


 朔が家に帰るといい匂いが漂ってきた。

キッチンに行くとクロエが料理をしている。


 クロエは結界をまな板代わりにして食材に包丁を入れている。

食材はクロエが捕獲してきた巨大な牛、ラージボバインだった。

朔の胴体の2倍ほどありそうな太ももの肉を大きな包丁で解体しており、はがした皮は空中に張った結界の上に一旦置いていた。


 クロエは朔に気付くと丁度今焼き上げた肉のかけらが乗ったスプーンを手渡す。

朔が口に入れると、柔らかい肉がほどけたかのように肉汁があふれ出て旨みがいっぱいに広がった。


「ラージボバインは筋繊維の間に脂肪を蓄えるんです、そのことを脂肪交雑と言ってとても肉が柔らかく美味しくなるんですよ。」


 クロエは話しながらもどんどん野菜を切り刻んでいく。

1時間ほどたつ頃には全ての料理が完成していた。


 朔は完成した料理を使用人たちと一緒に運ぶ。

1時間ほど経っている肉もクロエの結界で囲む事で熱を逃がさず暖かいままであった。


 リヌイの「いただきます」という声でみんなも「いただきます」と言ってご飯を食べ始める。

クロエと専属料理人が作った料理は絶品で、みんなよく食べるが中でもリヌイが多く食べる方だった。


 リヌイの術式である「蓄熱」は基礎代謝などのエネルギーまでもため込んでしまうため、多く食べないとすぐにお腹が空いてしまう上に、寝ている間も基礎代謝が高いままなためエネルギーが貯めれなくなるからであった。


 リヌイはぺろりと5人分程食べ終えると既にデザートを食べ始める。

そうしてあどけない顔をしながらデザートを頬張る様子は、現特級冒険者で軍隊を一人で沈めるほどの力を持っているとは微塵も感じさせない。



「さて、3人ともあと少しで受験迫ってますけど大丈夫ですか?」


 クロエが受験の二文字を口にすると、食事する手が止まる2人がいた。

命とルシアだった。


  2人は戦闘テストでは合格ラインを優に超えているのだが、魔法学理論や教科知識など

筆記テストでの得点獲得が難しかった。


 一方朔は戦闘テストはギリギリ合格するレベルで、知識は地頭が良いのと自立発動型スキル「シズテム」が存在するので合格だけならできる見込みだった。


「2人は受験が終わるまで俺が教えますから、依頼は受けないで下さいね。」

「「えぇーーーーー」」


 ルシアと命ががっくりとうなだれる。

朔はそんな二人を尻目に美味しい料理を頬張っていた。

教えてシズテム!!「12テスラって日本円でどれくらいの価値?」


(¥・・)/ 1テスラで1000円ほどの価値があると思われます。

今回朔様が購入した髪飾りは名誉鍛冶師のデルデアが作成したもので、透き通った銀色の金属が使われていて表面には美しい模様が刻まれており、日本円で1万2000円ですがそれ相応のものであると思われます。またテスラの下にはオリザという単位があり1オリザで1円の価値があります。



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― 新着の感想 ―
なんか世界観にすんごい浸れた。 明日この世界にとんでも生きていける気がする。 リヌイ様と会えれば。
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