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飽和する世界の夜明けから  作者: takenosougenn
第一節 世界の果てまで

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14話 商人の目的。そして

 帽子の商人は髪と帽子で目が隠れてしまっておりうまく表情が見えないが、だからこそニタニタと笑っている口元が異様な雰囲気を出しており、朔にとって気持ちが悪く感じられた。


 クロエが問いただすと、商人は彷彿とした表情で語りだした。

それは魔法という世界を回すための歯車が存在しうる世界だからこそ産まれた禍々しい理由であった。



「水銀、、懐かしい言葉だなぁ、僕が昔いた世界ではそう呼ばれてたよこの金属。君は昼間問いただしてきた人だよね、足元に落ちているのはアマルガムかなぁその手にもってるのはアルミニウムかな?すごいねぇこの世界で作ったんだ。」



 関係のない内容を商人は口にする。

口振りから、商人もほかの世界から来ているであろうことが伺われた。

商人はこの世界の言葉ではなく、急に日本語をしゃべり始める。



「僕が転移して2年半、あの時、あっちでの僕は研究者をしていたんだ。マルチバースの研究だよ。3年前の夏、ロシアを中心として空間にゆがみが生じたんだその歪みは数か月かけて世界中を包んだ。世界では不思議なことがいっぱい起こった。飛んでいた旅客機が突然行方不明になったり、もともと存在していたかのように砂漠のある一点だけが海になったりした。もちろん人だって消えた。僕はそれに巻き込まれたんだよ!!」



 商人は朔に少し興奮した様子で話しかける。

つかまりながらも食い気味に話す様子をみて、日本語の通じる朔と命は少し引いていた。

クロエとリヌイは、商人が急に話し始めた日本語にぽかんとする。

商人は少しからかうような表情をして、言葉を戻した。


「僕の目的はね、水銀に適応した人間を探すこと。」


商人は顔を上げる、髪が流れて見えた目には禍々しい光が爛々らんらんと輝いていた。


「水銀は多くの金属と溶け合ってアマルガムと言われる合金を作る。それは魔力があっても同じことだったんだよ。魔力を持つ生物の中で稀に水銀と適応する者がいる。適応した人間は全身が水銀と魔力のアマルガムとなって、魔法も物理攻撃も効かない新しい種族となる。」


 その言葉を聞いた、全員が商人を睨む。

リヌイに至っては、全身の毛を逆立てて唸っていた。


「もうやっちゃっていいかな、こいつ。」

「だめです。こいつはまだ何も話していません。」


 怒りが抑えきれずに殺そうとするリヌイをクロエが静止するが、その手は固く握られている。

商人はじっと朔を見つめた。


「この世界ですぐにアルミニウムをつくって水銀かどうか確かめる.....か。面白いね、いつか君を仲間にしてみせるよ。楽しみに待っててね。」


 そう言うと、商人は懐から一枚の紙を取り出すと同時に商人から莫大な魔力があふれ出て周囲を取り込んだ。


 その紙を見た途端、リヌイが飛び出しす。

それと同時にクロエが結界を張ることで商人の動きを封じて逃がさないようにした。


赤炎刺突(せきえんしとつ一点いってん!!」


 だが、リヌイの炎は商人に届く前にかき消えて、リヌイの刺突も見えない壁に阻まれるかのように15㎝前ぐらいで急停止した。


掌握しょうあく修繕しゅうぜんうつつの支配、流れの本流。」


 商人が呪文のような言葉を唱えたからであった。

リヌイがいくら炎を放出しても、商人には届かずに搔き消えていく。


「教えてあげる、俺と君たちの間には世界がある。僕の術式は自分の世界を生み出すこと。世界に君たちは干渉することができないから何をしても無駄だよ。」


商人は深くかぶっていた帽子手に取って真上に打ち上げる。


「僕の名前は、浅久良 南雲ナグモアサクラこの世界の破壊者です!!」


 そう言うと、空間が裂けて商人アサクラはノイズが走ったようにかき消えた。

そして同時に、打ち上げられた帽子がビリビリと破けて、頭が5つあるケルベロスの強化版のような巨大な狼の魔獣が出てきた。


「私が討伐る。りぬ様はまだ貯めないと。」


すぐに蓄熱した熱を放出しようとしたリヌイを命が止める。



神霊憑体しんれいひょうたい・ライブラリー、アーサー王。」



 避難誘導に行く朔に手を振りながら、オオカミべロスと相対する。

命は黄金の剣を構えるとオオカミべロスに向かって突進した。


 オオカミべロスはうざったらしい邪魔者を排除しようと、鋭い爪を命に突き立てるが、命は剣で防御する。オオカミべロスは同時に咆哮をあげると真ん中の頭以外が口を当開けて命に向かって魔法を放った。


 複数の属性の魔法が命を襲う。

見えなくなるほどの土煙が上がって、煙とともに命の姿が見えなくなった。



「危なかったぁー。あと少しミカエルの発動が遅れてたら死ぬとこだった。」



煙がやむと、命は背中から生えた大きな白い翼で身を包んで自身を守っていた。


「硬い皮膚に剣は効かない。なら、、、殴る!!」


 命の攻撃の本質は、憑依させる神霊ではない。

憑依させた上の魔力&武気術による強化であった。


 命は武気術を発動させて全身を魔力で強化すると、振りかぶって命を攻撃しようとするオオカミべロスの前足を殴った。


 命の体長ほどある厚さの前足はたった一点の打撃だけで押しのけられた。



「重複憑依・ヘラクレス」



 命は真ん中の頭の目の前まで飛び上がると、鼻頭を全力で殴る。

オオカミべロスは「きゃいん」という情けない悲鳴をあげて鼻を地面にこすりつけた。


 だがその間にも他の頭たちが命を食べようと攻撃をしてくる。

時間がたつにつれその勢いは激しくなっていき命も攻撃をまともに食らう場面が多くなっていった。



「一つ一つの攻撃は強くないけどあの手数の多さと体力が多すぎ。とっておき出すしかないかな。」



 命はミカエルの翼で光線のような攻撃を防ぎながら考える。

すると、痛みでうずくまっていた真ん中の頭が起きてきて更に激怒した様子で大きく吠えた。


 命の体が急に重くなる。立って走るのがやっとで光線などはミカエルの翼で防御できたが前足の物理攻撃はどうにもすることができず、立ったまま払い投げられた。


 少し先に投げられた命は何かを決めた顔をして構えを取った。



「全解除。憑依・オリオン。」


 全ての憑依を解除して、新たな神霊を憑依させる

命が立っている場所に、半透明の大きな巨人が現れて、巨人は命の姿をしていた。


「言うことが聞けないワンコにはお仕置きしなきゃね。」


 そういった命が空中を殴ると。

巨人も合わせてオオカミべロスを横から殴った。


 巨人は街を壊すことなくオオカミべロスだけを攻撃する。

オオカミべロスは突然現れた巨人に光線を出して攻撃するが巨人をすり抜けて空の遥か彼方に飛んで行った。


「再憑依・アーサー王。」


命はオオカミべロスを捕まえた巨人の操作を切り離し、再びアーサー王を肉体に憑依させる。


「すぐ.....楽にするからね。王ノ断罪キングデバイド!!」


 真横から放たれた貯めの斬撃によって5つの頭が綺麗に切られて地面に落ちる。

疲れた様子でため息をついた命に、住民から大きな感謝の歓声が上がった。




一方そのころ。


「あぁ、危なかった。あれはヤバすぎる。」


 浅久良 南雲ナグモアサクラはマルティネス邸から少し離れた森の中を歩いていた。

森の中はシーンと静まっており、僅かに小動物が駆け回る音が響いてる。

遠くからはオオカミべロスが討伐されて歓声を挙げている声が聞こえていた。


浅久良の口からは血が滴っており、歩く足取りがフラフラしている。



「あらあら、ボロボロじゃないですか。どうしたんですかぁ?」



 浅久良に一人の人物が話しかける。

全身包帯で目にゴーグルを付けて、フードをかぶっていた。

石に座っている全身包帯は、通り過ぎる浅久良に合わせて瞬間移動のように石ごと移動していった。



「リヌイ・マルティネスだよ、世界を分けたのに貫通して攻撃が届いてきた。ずいぶん威力が弱まったはずなのに満身創痍だなんて。あれは化け物だ。」


「だから、言ったのに。あれに手出しはできないですよーって。」



 全身包帯は背負っている小さめのリュックから液体の入った瓶を取り出すと、蓋を開けてぶっかけた。

こぼれた液体が地面に染み込んで、かけられた浅久良は少し顔色が良くなった。



「え゛!?最高級のハイポーションですよ切られた腕ですら一瞬で再生するはずなのに。」


「無駄だよ。威圧による精神攻撃と僅かな炎が届いてきた。その上神炎しんえんの影響もあるから簡単には回復しないよ。自然回復を待つしかない。」


「そう、一本無駄にしちゃったな。」


全身包帯が空になった瓶を真上に投げると、一瞬の間に分解されて灰のように風に乗って飛んで行った。






浅久良 南雲ナグモアサクラ


術式「世界ヲ分ケル者マイワールド」を所持する謎の商人。

商人であるかも疑わしい。

リヌイの攻撃を受け止めるほどの強力な術式ではあるが、リヌイにかなうほどではない。

水銀と見抜きすぐさまアルミニウムを作った朔のことを評価しており、是非仲間に加えたいと思っている。中性的な見た目と声で女の子と間違われることが多いが、れっきとした男である。


全身包帯

浅久良と行動を共にする不明な点が多い人物。

瞬間移動していたり投げた物を粉レベルまで分解しているが、はっきりとした能力はわかっていない。

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― 新着の感想 ―
わぁこんなに魅力的な新キャラが出てくるなんて! これからの新展開がクソ楽しみです。
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