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飽和する世界の夜明けから  作者: takenosougenn
序章 失った光と差し込む希望
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エピソード0 消失

どうもタケノソウゲンです。1話の前の話を書いてみました。

主人公の幼馴染である命が登場する2話からが本番だーという方も多いので出来れば初めの数話を読んでみて下さい!!



 その日は手の先も見えないほどの吹雪だった。

吹雪警報も出てきて学校の教職員は暗くなる前に、子供たちを一斉に下校させた。


 学校から伸びる通学路の一つで、二人の男女が肩を寄せ合って温度を分け合いながら歩いていた。

二人は仲がよさそうに寒さで顔を赤くしながらも、笑いあって話している。


 二人は幼馴染だった。

家族ぐるみで仲が良く、幼少期からずっと一緒で旅行や遊びにもよく出かけるほどの仲だった。

そしてその関係性は思春期となった中学生でも変わっていなかった。


 その日、二人は学校から帰る通学路で次の休みの計画を話していた。

命が、綺麗なショートカットを雪で濡らしながら、幼馴染の朔にイルミネーションを見に行かないかと誘っている。だが、朔はカップルが多いといって、気だるそうに断っていた。


 それでも朔にとって命と過ごす時間は、他と代えがたい大切な時間で、自身の中心でもあった。

だからだろうか、結局朔は照れくさそうな顔をして日時を聞いていた。


そんな誰が見ても幸せそうな2人に、突然悲劇が降りかかった。

地面が凍っていたらしい。ハンドルの利かなくなったトラックが、朔の横を凄い勢いで通り過ぎていった。


 普段なら音や光で気付けただろうがその日は吹雪。


  視界も悪く、風で大きな声でないと聞こえない。

朔の服を掠める形で通り過ぎたトラックは、朔の横にいた命を奪って行く。

トラックは道横に止めてあった車にぶつかってその勢いを止めた。


 朔の命を掴もうとした手は空振って、雪が冷たさを助長させる。

急な出来事に、朔は呆然としてしまい状況が吞み込めなかった。


今、確かに横には大好きな幼馴染の女の子がいたはずだ。


 朔はそう何度も確認した。

後ろも前も左右も。


 朔は諦めることができずに、手袋をしていた手で雪を搔き分けた。

掘り返すが影も形も見えない。

指の感覚もなくなって動かせなくなった時、近くの人が呼んだのであろう警察が駆け付けた。


 警察は、ずっと雪をかき分け続ける朔を必死に静止させて話を聞くことにしたが、運転手も朔も話した内容は同じだった。それは、朔の横にいた女の子がトラックに突き飛ばされたが、その女の子は居ないという事。


 話を怪しんだ警察官は、その場でトラックのドライブレコーダーを確認した。

映っていたのは視界が悪い中、女の子にぶつかった瞬間だけ。

その証拠にトラックには血痕も残っていた。


 その日は一旦そこで事態は収束した。

その後捜索隊も出て、町中の雪がなくなるほど徹底的に捜索されたが、衣類片の一部も見つからなかったという。


それから1年。


 朔は命の行方を追う方法を探しながら、引きこもる生活を送っていた。

高校の受験が迫る中、手がかりが全く見つからないことから朔は生きる為の意欲を失ってしまっていた。


その時だった。


 朔がたまたま見た外国の論文に、時間の逆行をする理論が書かれていた。

その理論はあまりにも突拍子なもので批判も多く、現在の技術では到底成し遂げられないものであった。

だが朔はその理論に一つの希望を見出した。


 朔は関連する研究の情報をかき集めた。

高校など行く気もしてなかったが、大学で研究をするためと本腰を入れてひたすらに勉強をした。

結果が出たのは高校2年生だった。大学の受験のため受けてみた模試で全教科満点を取ったのだ。


 普通の人なら嬉しかったであろう。だが朔にとっては結果と過程に過ぎなかった。

ただひたすら、命を取り戻すために研究と知識を蓄え続け、他との関わりを絶っていった。


 大学は地方の国公立大学に進学したが、個人で研究を進めて公開したことによってスポンサーがつき研究所を設立した。


 そうして命が行方不明になって22年の月日がたったころ、朔は研究を続け、時間逆行装置のほとんどを完成させた。





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― 新着の感想 ―
Xから参りました。 これから、ゆっくりと追いかけます!
とても引き込まれました。朔には命と再会してほしいと願わずにはいられないです。
 朔さん既に半生を命の為に使ってる…純愛が転じて狂気になってく様子がじっくり書かれていて、一気に引き込まれました。
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