異世界から来た聖女2
ミルフィー達は、追尾してくる兵士を認識しながら、そのまま放置する。着いてくるなら頑張って着いて来てね(笑)
「主、あれで隠れているつもりなのでしょうか?」
「子供と女性だと思って、なめているのでしょうね、貴方達を助けた我らの力を忘れたの?何の為について来ているのか忘れたの?」
「愚かですね。姫様が、感謝より力を欲した意味が解っていないのでしょうね。隣町まで着いて来て、住む場所を確認したらそれでおしまいと思っているのでしょう。」
二人はついてくる兵士を無視して峠を下り、街道を歩いていた。隣町まであと30kmくらいに差し掛かった。
「そろそろ野営の準備をしましょうか。」
「そうねここなら彼らも確認しやすいでしょ。今回は焚火とマットレスだけよ。料理はカップ麺で済ませておきましょう」
「了解!」
兵士二人は手渡された水と僅かな乾パンを口に運びながら見張りを続ける。
彼らは焚火の炎を目にしながら、朝までは大丈夫かと仮眠をとるのであった。
朝の8時、彼女らは何時まで経っても移動しようとしない。
何時までのんびりしているのだ!
焚火のそばで座ったまま行動しようとしない二人にイライラするのであった。
「おい!10時だおかしいだろ、少し近寄ってみるか、」
「そうだな」
彼らが野営場所に近づいていくと、二人のシルエットがはっきり見えてくる。
「やられた!あれは藁人形だ。」
「しまった。どうする、姫様に報告するか?」
「いやまて、彼女らが隣町を目指したのは明らかだ、戻るより追いかける方が良い」
「隣町に着いても、直ぐには何もできないだろ、町をうろつくか、もしくは教会に相談しに行くか」
「そうだな、あれだけの回復能力があるのだ、教会も招き入れるからな」
「えっ!お前は少女の回復魔法を見たのか?」
「おまえ、気が付かなかったのか?我らを回復してくれた精霊様と彼女の声が同じだったのを、あの精霊様は間違いなく彼女だ」
「えっ!我らは命の恩人をつけまわしているのか?」
「そうなるな、恥知らずもいいところだな」
「そっか、このまま彼女らを追いかけるのが嫌になってきたよ」
「姫様のご命令だ、個人の感情は介入する余地が無い。」
彼らは知らなかった。彼女たちが方向転回して王都を目指したことを
ミルフィーがその気になれば、休むことなく、王都までぶっぱしれる。
空を飛んだり、転移で移動することはしない。
そんな事をして、事故が起こるのが怖いのだ、ミルフィーは自分に関する事は、石橋を叩いて渡るのであった。
「主、こんな走って王都を目指さなくても、飛んで行きましょうよ」
「いやよ!落ちたら痛いじゃない、」
「練習しましょうよ。何かと便利ですよ。」
「いやだ、怖いからやらない」
「じゃ~転移で移動するのは?」
「絶対に嫌!虫が転送時に交じって、昆虫人間になったらどうするのよ、それに木や壁に挟まるのも嫌なの」
「考えすぎじゃないのですか、今回は走りますが、練習は必要ですからね」
「わかったよ、もう少し大きくなったら練習するよ。」
「姫様達を追い抜きましたよ。」
「のんびり移動しているわよね、」
「馬がいませんから、先に王都に報告に走ったのでしょう。」
「ホントだあの子いないわね」
「姫様も歩きですから、移動速度は稼げないでしょう」
「少しでも距離を稼いで、迎えの馬車を待つのでしょうね」
「主!王都が見えてきましたよ。」
「ホントだ大きな街ね」
「それでは念の為に、私の髪の毛を金髪に変えておきます。主はどうされます?」
「貴女に合すわよ。」
「じゃ着替えましょうか?」
「このままで良いのですけれど」
「ダメですよ、出来るだけ違う姿にならないと、行動しにくいです。」
「お母さんカッコいいわ、まるでモデルさんみたい。子持ちの母には見えないわよ」
「いやな言い方止めてください。なんなら姉に変更しても良いのですよ」
「それはダメ!」
「じゃ~私も着替えてくる。」
「また豪華な衣装を、目立ちまくります。それと背が伸びていません?」
「厚底靴を履いてみたの、ばれないようにドレスにしたの」
「私達の服、ちぐはぐすぎませんか?」
「大丈夫よ、王都よ色々な人々がいるはずだから」
「なら良いのですが」
「まず冒険者ギルドでお金を作らなくちゃ、魔物の素材売り込みましょう。」
「いきなりマジックバッグの披露はお止めになる方がよろしいかと」
「なら何を売り込む?」
「家宝の宝石か短剣で良いのでは?」
「わかったわ」
「見せて頂けます。この指輪、ライトニングのメンバーに渡した指輪ですよね。」
「そうだけれど、地味な宝石ってこれぐらいしかないの」
「付与がされていないのにしてください。この指輪はダメです。」
「箱舟で大量に作った物だから、安くても良いのに」
「ダメです。この星にあってはいけない品です。」
「じゃ~普通の宝石にしておく、けれど大きいよ。」
「大きすぎますね。冒険者ギルドより商業者ギルドがよさそうですね、そちらに行きましょう」
ミルフィー達は商業者ギルドで売却するため訪れていた。
ギルド登録費用は、物品売却後に払うと言う事で話がまとまる。
「お売りになりたいものを見せて頂けますか。」
「こちらです。」
ミルフィーは指輪を取り出し買い取り係に見てもらう。
「大きな石ですね、レッドダイヤモンドですか?」
「いかがでしょうか?素晴らしい輝きだと思うのですが」
「これなら、金貨100枚で買い取りさせて頂きます。」
「えっ!たった金貨100枚ですか?白金貨10枚以上のお宝ですよ。」
「前まではね、今は規制が変わり贅沢な物は所持できないわ、この宝石もギルドで、しばらくは眠る事になるわね」
「それも、戦争が影響しているからなの?」
「そうです。この宝石にも付与がされていたなら、白金貨何十枚になるでしょうね。」
「付与ができる人、いないの?」
「そんな人はいません。もしいたら、軍が出てきて拘束されて、その人の人生おしまいです。」
「そっか~魔族との決着はつきそうにないの?」
「恨みが重なり続けて両者どちらかが居なくなるまで、戦いが収まることは無いでしょうね」
「軍事に関わる者なら買い取り高くなるの?」
「魔法武器とかマジックバッグとかダンジョンから出る物なら高く買い取りすることは可能なのです。」
「そっか、わかりました。これ売るの止めておきます。」
「えっ!」
「私はまだ子供だから、時間はたっぷりあるわ、大切な家宝を安値で売りたくないの、時間が立てばまた高値で取引できるかもしれないから、今回は止めておきます。」
「そうですか、仕方がありませんね。贅沢品禁止法のおかげで、経済が冷え込んでいっています。貴方のその豪華な衣装も規制対象だと、言いがかりを付けてくる人がいるかもしれません。お気を付けください。」
ミルフィー達は商業者ギルドでの売却をあきらめた。
「流石に我が宇宙の宝を、あんな安い金額で売ることはできなかったわ」
「そうでしょうね、貴女に託された物です。大切にしなくてはいけません。盗賊から奪った剣を加工されたらいかがです?」
「そうするよ、兎も角街の中では加工しにくいわ、1回町の外に出て、隠れて作れる場所を探しましょう」
ミルフィー達は1回町から出て、林の近くの河原で簡単な付与の付いた剣を5本作っておいた。
街を出る前に武器屋で金額を確かめたが、付与なしで金貨2~10枚、付与ありで金貨100~という事だった。
武器屋の店主に聞いてみると、国宝になっている剣は、剣自体に付与が三つ付き、装飾の宝石に付与がされているお宝と言う事だ。
宝石にはそれぞれ1個の付与がされており、高価すぎて、戦争に使えないと言う事だった。
オリハルコンとかミスリルでできた剣は在るのかと尋ねる。
そのような武器もあるが高価すぎるとのこと。
ダンジョンや遺跡からしか手に入らない、付与がされた武器に、希少鉱物が使われていることは殆ど無い、あれば直ぐに国宝クラスになると言われる。
金貨100枚ぐらいの武器に、付与がされている物があるのかと尋ねてみたら。
錆防止とか、手入れをしていれば必要のない付与が付いている武器なら、金貨100から販売されている物もあるらしい。
武器屋の親方も綺麗な母親の質問に嫌がることなく丁寧に答えてくれた。
美人はホント得である。
河原で作った武器を携え冒険者ギルドに向かう。
売る剣は、家宝らしくミスリルソードである。切れ味強化を付与しておいた。
これは金貨100枚でも構わない。
ギルドに行き金貨300で買い取りしてくれた。前もって情報を集めておくことは良いことだと思う二人であった。
「お母さん、上手くいったわ」
「そうよね、宿屋を探しておきましょうか、金貨300あればそこそこ良い宿に泊まれるわ」
ミルフィー達は街をうろつき宿屋を探す。ギルドで情報を仕入れていたので、それなりの宿屋を見つける事が出来た。
一泊二人で金貨3枚の高級宿屋である。
ミルフィーは宿屋で着替えをすませた。
「それじゃお母さん、教会に行きましょう。」
「えっ!何しに行くのです?今日はこの宿でのんびりすれば良いじゃないですか」
「私はシスター見習いよ、朝夕のお祈りは必要なの」
「貴女のお父さんだよね、それに祈るの?」
「信心深い親子でこの地に溶け込むの、こちらの世界の教会がどのような物なのかを確認しておきたいわ」
ミルフィー達は教会に赴いた。
そこで見たものは、自分達が住んでいた世界とまるで違うものだった。
「神の祝福を受けし勇敢なる兵士たちよ、今日、我らは聖なる使命を遂行するためにここに集いました。 主の名の下に、我らの地を魔族から取り戻すのです。
天の父は、あなた方の勇気と信仰を見守っておられます。
戦場において、決して恐れず、神の導きを信じて進みなさい。
主の御手が、あなた方を守り、導いてくださるでしょう。
今ここに、あなた方に祝福を授けます。
主の名において、あなた方の道が光に満ち、勝利と栄光がもたらされますように。」
「神の勇士たちよ!主のために戦い、勝利を掴み取れ!」
「うぉ~うぉ~うぉ~~」
「えっ!」
「なんですのん?戦争?出陣式?神の名の下に?十字軍?」
「ミルフィーこの世界、平和を感じられないわ、この世界ダメよ」
「お母さん私達の教会と違いすぎるのですけれど」
「帰りましょう、血生臭さすぎます。子供が来るような所では無いです。」
「でもここ教会よ?」
「この世界、自分達の信じる宗教の為なら何でもしてしまう世界です。魔女狩りも平気で行っていそうで怖いです。」
「信じているのは、デリス教よね?」
「宗教なんか、自分達の都合のいいように解釈します。兎も角、人類対魔族の戦争です。異教徒まで葬るかは、わかりませんが」
人類軍の兵力はおよそ100万、王都からは3万の兵が参加する。ラーレヌ王国全体で10万の兵力である。
他国との協力で魔族討伐の最終決戦が行われようとしていた。
「魔族も酷いことをしているわよね、盗賊が言っていたけれど、人類側もどっこいどっこいだと、」
「人類間の戦争でも醜いのです。他種族だと何が行われるか、どちらの民も占領されれば、皆殺しになるでしょう」
王都軍は合流を重ね、決戦の場に集結した。
神の名の下に集結した人類軍は補給部隊含めて120万
魔族軍90万数は人類軍に及ばないが、総合能力的には上回る。
そして戦いは始まり、人類軍は敗北した。
魔族軍は体制を立て直し、敗残兵狩りを徹底して行った。
人類の生息地体は次々に魔族側に占領されて良き、人類は家畜の様な扱いを受ける。
レジスタンスが奇襲を行なってはいるが、多勢に無勢、贖う事も出来ていない。
王都には難民が押し寄せる。
嘗て勢力が互角だったA大陸も、魔族軍の勝利により、追いつめられる。
宗教国に兵の派遣は要請しているが、到着までにはまだ時間が掛かる。
宗教国の魔導騎士団が到着すれば時間稼ぎができる。
人類側大陸から兵力200万がこちらに向かっているのだ、その兵が到着してくれたら、形勢逆転だ!
他国との兵力を合わせれば、残存兵力20万、この兵力で1か月持ちこたえる事が出来れば、援軍が到着する。
「姫様、とっても20万の兵では太刀打ちできません。」
「魔族側も今回の戦いで兵を消耗しているのです。女、子供にも武器を与えなさい」
「えっ!船を出し、子供だけでも宗教国に避難させるべきでは?」
「この戦いは人類存亡の戦いなのです。手がある者は例え子供でも武器を持たなくてはいけません」
「この戦い、援軍が集結するまで待つことが出来ていれば!」
「魔族の進軍が早まったのです。今更何を言っているのですか。王も兄上も戦死されました。王族として、私が指揮を執らなければなりません。側近であるあなたがしっかりしなくてどうするのです。」
「姫様!・・・・・・」