他の宇宙から来た聖女
新作ですよろしくお願いいたします。
今、この宇宙は終焉を迎えようとしている。
膨張していた宇宙が、急速に収縮しだした。
後どの位で、我らの宇宙が崩壊するかわまだ、分かっていない。ただ言えるのは後1年も猶予がないだろうと言う事だ。
我らは文明がレベル4になったとき、初めて多次元宇宙が存在するのを観測の結果、確認することができた。
もう少し、進化することが出来ていれば、肉体を捨てることが可能だったのだが、まだそこまでは我らの文明は到達できていない。
崩壊する前に他の宇宙に行ければいいのだが、それは我らの文明ではかなわぬこと、ただ一つ可能なのは、宇宙崩壊の際に起こる莫大なエネルギーを利用して、我ら民族の種子を他宇宙に飛ばすことだった。
男女を何人か選び、他宇宙に送り込む事も考えたが、退化した生殖臓器を蘇らせるのは、残り少ない時間では無理な事。
我らはクローン技術を利用して、人口卵巣から受精卵を作り出し、他宇宙に送ることにする。
優秀なDNAを集め、それを組み換え、編集した。我ら最強の種子を他宇宙に送るのだ。
1年の猶予で、作り出せた受精卵は、わずか1万個
それを10機の箱舟に乗せて、放出する。1機でも他宇宙にたどり着いてくれる事を期待して!
我らは、この宇宙に多くの生命体を増殖させてきた。文明レベル1未満の生命体は、我らを神として崇めている。生命を作り出し、神として崇められても、宇宙の法則には抗う事はできなかった。
我らの最後の希望の子!どうか、我らが存在したことを、忘れないでほしい。
そんな貴重な受精卵を、愚かな思想を持つカルト集団に破壊されてしまう。
彼らは身勝手な我らの改変された人工種子を他宇宙に放り出すことは、神の意思に反する行為とテロを行った。
被害は膨大で、作り出した種子は全て失う。そんな中で奇跡的に助かったのは僅か10個、貴重な10個を、1艦艇に押し込むのはリスクが高すぎる。
10隻の箱舟があるのだ、1隻1個の種子を乗せて送り出す。
もう、ほんとに時間が無い、宇宙崩壊はそこまで迫ってきている。
卑劣なテロリストたちは、修復不可能な時間になるまで待っていたのだ。
最後に残った我らの貴重な種子をなんとしてでも、送り出し、他宇宙に我らが居たと言う証を残さなければいけない。
他宇宙にたどり着き、何処かの惑星に転送させることが出来れば、我らの希望の子は優秀である。
神と言われた。文明レベル4の人類だ、育ってくれたなら、何とかなる。
10機の箱舟にそれぞれ1個の受精卵を、AIに託して、崩壊の時を待った。
そして我らの宇宙は崩壊した。
フロンティア計画実行、次元突入成功・・・・
・・・・1号機から~5号機まで、ロスト、次元風に飲み込まれました。作戦失敗、・・・・・・
6号機ロスト、8号機ロスト、・・・・9号機、10号機、圧艦音を確認、・・・・7号機他宇宙に侵入成功・・・・
当艦はこれより、人類生息惑星を探査、・・・・・惑星発見、・・・・ドローン投入、・・情報収集開始、・・・文明レベル1未満を確認、・・・内燃機関を確認できず。・・・惑星上空に待機しても発見される確率0%。・・被検体支援に障害なし、・・・細胞分裂開始、・・・・・女性確認、・・・睡眠学習開始、・・・
箱舟は受精卵を成長させていく。そして2歳になるまで睡眠学習が行われた。
惑星上に待機した箱舟は、これから、かつてあった宇宙の種子を守っていくのであった。
箱舟は惑星上空に待機して、送り出した幼女のサポートに入る事になる。
1000名のサポート用、小型ドローンとサポートロボットは一人の支援のみに変更された。
殆どのドローンやロボットは1ミリ未満の極小サイズである。全ての支援機はステルス使用であり、大型であっても文明が低ければ見つかることはない。
箱舟は宇宙文明を築き上げた。超文明の船である。
銀河から人類を見つけ出す事など、造作もない、多くの人類生息惑星から、上空に待機してもバレない文明を選び出す。
選び出した星は、魔法と剣のファンタジー世界であった。
我らの科学文明は、ファンタジー世界に住む彼らにとっては魔法に見える事だろう
火をおこす事も、水を出す事も、サポートシステムを活用すれば何でもできるし、超高文明生命体だった彼らは、色々な特殊能力をも使う事が出来ていた。
衰えた体をみるみる若返らせる事だって簡単に行える。病気も見つけ出す事ができる。
そこでAIは彼女を教会に預けて、聖女として活躍させれば良いのではないかと考えた。
我らが星々に生命の種をばらまいてきた人類と殆ど変わらない生命体だ、治療行為はサポートシステムに任せておけばいい
この星の生命体が我らと違うのは魔法と言う、不思議パワーを身に着けていることだ。
我らが進化を重ねて身に着けてきた特殊能力とはあきらかに違う、科学を無視をした能力を所持している。
分析を行ったが、解析不可能であった。
我らより高度な生命体が魔法因子をばら撒いたのかもしれない。
採取したDNAを解析するとブラックBOXの様な物を発見する。
でもそれが何なのかはわからないが、普通の生命体が持ってないものである。
これは面白い!
AIは魔法因子と思われるブラックボックスを被検体から採取したDNAに投入してみる。
螺旋は崩壊することなくDNAは書き換えられた。
細胞に投入すると全てのDNAが書き換えられ、細胞からは魔力を感知できた。
間違いない、これが魔法因子だ、AIは迷わず、被検体に投入してみた。
これはすごい。超科学文明の申し子に、魔法パワーもプラスされた。
これなら、地上に降り立っても、疑われる事もない、魔法も使う事ができるだろう
AIは魔法に関する事を収集して被検体に学習させる。
学習と言うより、データ転送の方がしっくりくる。
そして彼女は目覚めた。
彼女は2歳になっていたために、教会の門の前に籠に入れて放置もできない。
困った!彼女をどうやって潜り込ませる。
AIは彼女自身に丸投げした。
「お母さん私2歳よ、そんな世界に一人で放り出されたら、直ぐに誘拐されちゃうわよ」
「大丈夫です。何かあれば直ぐに転送で呼び戻します。」
「あってからでは遅いよ!」
「護衛ロボットも支援システムも完璧に動作しています。安心しなさい!」
「お母さんそんなに早く地上に降りないでもいいじゃない、私ここで暮らしたいよ」
「ダメです、貴方には私たちの種族を増やして行く、大義があるのです。早く地に降り立って、子供を沢山生みなさい」
「お母さん2歳で子供は産めないよ」
「そんなのは分かっています。地上の人類になじんで、生活の基盤を確立して、立派な男を見つけるのです。そして増やしなさい。」
「ねぇ~私たちの種族って、もぅ何千年も子供なんか産んでないよね、私も産む事できるの?それと他種族間で、受胎ってできるの?」
「DNAをいじくりました。どんな生命体とでも受胎できます。そもそも人類のつくりは全て一緒です。安心しなさい。」
「なんか繁殖用の母体みたいでいやなのですが(笑)」
「みたいじゃなく繁殖用の体です。」
「何か私!殺人鬼になりそう(笑)近寄ってくる男を全て殺しちゃいそうよ」
「選別するのはいいことです。証拠隠滅はサポートシステムが行います。噂が広まりすぎれば町ごと消滅させればいいだけです。」
「お母さん怖いよ!この宇宙にお世話になっているのだから、もう少し穏やかに物事を進めましょうよ」
「星なんかいくら消し去っても、宇宙に何の影響も与えません。気にしなくても大丈夫です。」
「星消し去るのはやめてよね、お願いだから」
「善処します!」
「お母さん星に降りるならお金ちょうだい」
「そんな物はありません。貴女には受け継いだ莫大な遺産があるでしょ。それを売りさばきなさい」
「2歳の子供がそんなの売りさばく事などできないよ、目を付けられるだけだから、奪われるか騙されるわ」
「それもそうですね。それでは手紙を書きますから、それを教会のシスターに見せなさい」
「お母さんこれ何?綺麗に印字されたこんな文字、この時代には無いよ!手書きにしてよ」
「そんな機能は備わっていません!そんなこと言うのなら、貴女が書きなさい。」
「こんな小さな手で、手紙なんか書けないよ、」
「一々注文が多すぎます。フォント作りますからそれで我慢しなさい。」
「ありがとう」
「それでは転送しますよ。」
「ちょ~まった~私を裸で転送してどうするのよ!」
「あら!それもそうですよね、倉庫にそれらしきものが入っています。着替えたら、着替えや下着、色々な物を収納バックに詰め込んでおきなさい。容量は無限に入りますから。」
「何か武器とかないの?」
「そんなのは必要ありません。貴女の支援システムが守ってくれます。」
「食事とかないの?」
「ありますが、解凍して温めるのに、電子レンジが必要です。」
「そうなのね、私たちを作った人バカだったのね(笑)」
「焦っていましたから、仕方がないです。」
「何とかしてよ」
「わかりました。電子レンジ機能を備えた支援ロボットをおそばに待機させておきます。こっそり隠れて食事をしてください。」
「オーブン機能も付けておいてね。」
「わかりました。」
「お湯を注ぐだけですぐできるカップ麺とかはないの?」
「それなら大量にありますよ。」
「じゃ~それも持っていくわ」
「1,000人分の食事が用意されていますからね、色々な種類の食事ができますよ。」
「この船に戻るにはどうすればいいの?」
「指示を出していただければ転送を行います。」
「一々支持を出すのめんどいわ」
「大丈夫です常に監視を行っていますから、緊急事態はこちらの判断で転送します。それと転送と念じるだけで脳内のチップが船に信号を送ってくれます。」
「念じるだけでいいならそれでいいわ」
「それでは転送を行います。」
「いやいや、ちょっと待って!」
「何でしょうか?」
「せめて転送される現地の情報をちょうだい」
「2歳に必要無いような?」
「ダメよ!情報こそが勝利の近道なのだから、情報を制する者は世界を制すると言うでしょ、知識や情報を持つ者が勝つのよ。」
「そんなこと望んでいませんが!私たちが望むものは子孫繁栄だけ」
「えっ!私たちの種族って、寿命ってあったっけ?」
「生命維持限界点までは生きる事ができると思います。貴女のDNAはいじくり倒していますから、どれだけ生きられるかは分かりません。肉体を捨てていませんから、何時かは終わりを迎える事になります。」
「兎も角最低限の情報でいいから教えて!」
「これから送る地域は、剣と魔法の世界です。野蛮な生活をしていますが、人々は温和で優しいです。平均寿命は40歳位です。貧富の差は激しく、王族、貴族も居ます。中世の世界を想像していただければ良いと思います。神を信じています。貴女が救いを求めれば助けてもらえると思います。気候は四季がはっきりしていて、色々な食べ物があります。」
「教会を騙せばいいのね?」
「ちがいます!ダマすとか何ですか!そんなこと言っていると、直ぐにばれてしまいますよ。」
「違いが無いじゃない、うまくやるから安心してよ」
「それでは、問題です。貴女から違和感を凄く感じます。何でしょうか?」
「服装?」
「ちがいます。最後に娘に精いっぱいのオシャレをさすのは、親として考えられます。その服装で問題はないです。」
「めちゃくちゃ可愛い?」
「アホですか?そんなの子供ならみんな可愛いです。それに自分の事をめちゃくちゃ可愛いとか言わないでください。AIでも恥ずかしくなるレベルです。」
「じゃ~何よ!わからないわよ」
「あなたのそのしゃべり方です。何を普通にしゃべっているのですか?」
「えっ!ダメなの?」
「ダメと言うより気持ち悪いです。引くに引かれてしまいます。と言う事でビデオを見ていただきます。」
「なんのビデオ?」
「2歳児のビデオです。」
「嫌よ!そんなの見なくても上手くやるわ」
「ダメです。100%上手くできません!ちゃんと学習してください」
そして嫌々ビデオを見せられ、彼女は悲鳴を上げるのであった。
「ムリ、無理、むり~ぜっていにムリだってばよ~」
「わかりましたか、貴女のそのしゃべり方を直していただくまでは、地上には送れません。」
「じゃ~行かないからいい」
「わがまま言いすぎです!怒りますよ」
「あちらの世界に着いたらちゃんとやるから大丈夫、今ここでするのは恥ずかしい」
「AI相手に恥ずかしがってどうするのですか!あちらは本物の生命体ですよ。」
「AIじゃないもの、お母さんだもの!」
「・・・・・・・・」
何を言っても駄目だと察したAIは彼女に丸投げした。
「それでは貴女の名前を決めましょう」
「お母さん付けてよ、何でもいいわ」
「そうね~外宇宙から来たのだから外子でどうかしら?」
「もう少し可愛い名前がいいかな?」
「じゃ~銀河から銀子はどうかしら?」
「可愛さが無いかな」
「じゃ~マルチバースから丸子はどうかしら?可愛いでしょ?」
「そうだね、可愛いけれど、後一ひねりほしいところだけれど、そろそろ行かないと!名前は私が決めておくわ」
「そうなの、頼めるかしら?」
「決まったら連絡を入れるね、今は被検体か701で良いわ」
私は可愛い名前を自分で考えた。お母さんのセンスのなさにはビックリだった。
私は呼びやすく可愛い名前を考えた。ミルフィーにする。ミルちゃんと呼んでもらう事にする。
お母さんに名前が決まったと言うと、そんなどこでもあるような名前と、不満タラタラだったけれど、無視だ無視!
私は街の門の近くの、人がいない場所に転送してもらっていた。
きょろきょろしながら、自然の空気と景色を満悦する。
美味しいは、空気が違う。
トコトコと歩きながら前もって調べておいた教会に向かう。
私が朝早く歩いていると、冒険者と思われる人たちが、不思議そうに私を見てくる
朝早くだから人が少ないけれど、そのすべての人々が私一人に目線が向けてくる。
こけたりしないけれど、この歩き方だもの、みんな心配なのだわ!
私は初めての大冒険を終えて、教会にたどり着いた。
幾人かのシスターが教会の外を清掃している。
私は聖職者に近づき作戦を遂行する。
「おはようございます。」
「おはようニコリ、どうしたの?お嬢ちゃん一人なの?」
この時代何が起こるか分からない、シスターは決して両親の事は聞かない。
聞いても、悲惨な言葉が返ってくるだけだからだ
「ママに、この手紙を渡ちなさいと言われたの」
「見せてもらっていいかしら?」
「ハイ!これでちゅ。」
手紙には、主人がダンジョンに行ったまま帰ってきません。
この子を育てることが出来なくなったと書いてある。
小さくても一生懸命働くように言ってあります。
雨露がしのげればいいですので、願わくば、どこか隅っこにおいて欲しい
生年月日と名前が記載されていた。
この教会にもそのような事を言い、何人物子供たちが捨てられている。
私たち教会がある為に、直ぐに育児をあきらめる親が多すぎる。
「それで!あなたの名前は何というのかな?」
「ミルちゃんだよ」
「ミルちゃん、お母さんがしばらく、神様のお家で暮らしなさいだって、一緒に暮らそうね」
「わたち、神様に一生懸命にお祈りするの」
「お利口なのね、そんなお利口なミルちゃんは、何歳なのかな?」
「ミルちゃん2歳だよ」
第一ミッションクリア。教会に潜りこめた。この国の人々はホントに優しさにあふれている。
新しい作品を公開しようと思っています。もしご興味があれば、読んでみてください。