9.シルヴィアの変化
朝日が差して、その眩しさに目を覚ます。いつもよりも隣が暖かい気がして、それに違和感を覚えた。シルヴィアの身体は鱗に覆われているから、どちらかといえば少々ひんやりとしている。
ゆっくりと目を開けると、銀髪の美少女が隣にいた。信じられなくて目を擦る。上体を起こすと、服を着ていない様子がちらりと見えてしまった。真っ赤になりながら布団を少女に巻き付ける。ふと下を見ると、竜の尻尾のようなものがゆらりと揺れていた。
「まさか、シルヴィア……?」
リョウにとってシルヴィアは存在するだけで愛しい存在だ。姿が変わろうが、大きさが変わろうが大した問題ではないけれど、急に姿が変わったのならば、それには普通に驚く。
「ん……リョウ……?」
脳内に聞こえていたものと同じ声だ。ただし、脳に響くようなものから普通に耳から聞こえてくるものに変わっている。
「シルヴィア?」
「あ、おはよう!リョウ!!」
いつものように抱きつこうとしているのだろう。布団から飛び出そうとした少女を押し留めて、リョウはゆっくりと「シルヴィア、今の自分の体を、よく見て?」と告げた。
その言葉でいつもと大きさや距離感が違うことに気がついたのか、彼女は自分の体を少しずつチェックしていく。そして、泣きそうな顔をした。小さな声で、「どうして、いまさら……?」と呟く。
「リョウ、私……」
「何?シルヴィア」
「あなたは、私があの白い竜だと信じてくださるの?」
少女の言葉に、リョウは笑顔を向けた。
この強く惹きつけられる、何かの感情は間違いなくシルヴィアに向けていたものと変わらない。であれば、疑う余地はなかった。
「うん、どんな姿でも君は俺の可愛い子だよ」
向ける瞳は竜の姿の時と変わりない。人として正しいのは今の姿をこそ愛することなのかもしれない。けれどリョウには本当にどちらでもよかった。
ただ全裸の美少女は普通の人間の常識的にやばいとは思っているけれど。
(服……あとし、したぎ?寝袋も新しいのがいるかな)
全く離れることを想定していない彼は必要なものを脳内で考えていく。
一方でリョウの言葉に「この人は私の全てを受け入れてくれる!」と思ったシルヴィアは感極まっていた。リョウに抱きつくと、布団は落ちてその柔らかい身体の感覚が伝わってくる。思わず真っ赤になる。
「し、しるゔぃあ……?」
「大好きよ、私の大切な人。運命の方!」
リョウは普通の初心な少年だった。
全身真っ赤になっている。
抱きしめ返すには、素肌の彼女に触れなくてはいけない。それができなかった彼の手は宙に浮いたまま固まっている。
結局彼は拳を握り込んで、「お願い、一回竜に戻れないかな」と頼み込んだ。裸の異性と抱き合う経験なんてなかった彼には刺激が強すぎたのである。
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