27.再会
一見地味な馬車が城の前に停まる。
中から銀髪と、黒髪の美青年が現れた。
(王族でも、こんな馬車に乗るんだな)
リョウは少し疑問に思ったものの、駆け出したシルヴィアの姿を見て「よかったね」と言うように微笑んだ。胸が痛いのは自身が家族と再会できる未来を描けないからだろう。
「お兄様!」
「シルヴィア!」
それでも、抱き合う姿を見ていると頬が緩む。
「殿下方、とりあえず落ち着いては」
「誰が発言を許したかしら」
苦笑しながら、屋内へ入ることを促そうとしたフリードリヒが容赦のない言葉に固まった。
シルヴィアが「お前、本当にこの世に必要かしら?」と問う姿に、リョウもそれがシルヴィアの嫌っている人物だとわかったのかその顔を覚えようと凝視する。
「フリードリヒ、何かしたのか?」
「何もしておりませんが!?」
竜にちょっと触ったことがある、くらいのものである。それが嫌われる元になっているなんて思ってもいなかった。グラシエルが近づいて、こっそり事情を説明するとテオドールは呆れたような顔をした。
「女の子に許可なく触れれば、嫌われるに決まっているだろう」
「当時は、私とて子供だったのです……!!」
好奇心だけで未来にこうなるとはフリードリヒも思っていなかった。
テオドールは「フリードリヒはなるべくお前に近づけないようにしよう」と言って宥めると、シルヴィアは「約束よ!」と頬を膨らませてリョウの元に走った。
そして、強引にリョウの腕に自らの腕を絡ませると、とびっきりの笑顔を浮かべる。
「お兄様、この人は私の『運命』!!リョウっていうの!!」
テオドールとリョウはその場で顔を引き攣らせた。
どう考えてもこういった紹介をする場ではない。
地味な格好をしている騎士たちは値踏みするような目をリョウに向けた。
「シルヴィア、とりあえず中に入ろう」
リョウが小さな声でシルヴィアに提案すると同時に、グラシエルをはじめとするカエルム家の者たちが動き出した。彼らはシルヴィアがリョウの頼みであれば聞き入れることをよく知っている。
テオドールは騎士たちに緘口令を敷いて、ゆっくりと息を吐いた。
「もしかして、私の妹……皇女として戻すのは無理があるのでは?」
血筋だけは立派であるが、テオドール以外に彼女に知識を与えようとする人間もいなかった。イザベラの尽力で多少マシにはなっているが、そもそも皇女としての精神性が育っていない。
かといって、放置するわけにもいかない。
ある程度覚悟はしていたものの、想定以上に厄介なことになりそうだ。
テオドールは既に、そんな事実に対して頭を抱えたくなっていた。
それでもテオドールは結構妹が大事なので気合い入れ直してる。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!!




