15.頑なな心
あまりに毎日やってくるからだろうか。グラシエルの存在に慣れてしまった。
目の前で肉を食べる彼を見ながらリョウはため息を吐いた。
悪い人ではない、と思うけれど自分のその感覚を信用できなかった。ジョーの件もあって、簡単に気を許してはいけないという考えが脳を支配する。
「お前はいつも陰気そうな顔をしているな」
「それはどうも」
「それ、俺以外にやると嫌われるぞ」
「……別に、俺はシルヴィアにさえ嫌われなかったら良いし」
そう言って瞳を伏せる。
グラシエルはリョウの様子を見ながら「よっぽど酷い目にあったんだろうな」と思った。その拒絶ぶりは「怯えている」様にしか見えない。
「こら、リョウを虐めないで!!」
「虐めてない。それに、過保護なのも良くないぞ、お嬢さん」
ジト目でシルヴィアを見る。
彼女がリョウを隠してしまうから、一向に良い方に向かないのでは、なんて考えてしまうほど、彼女はリョウに張り付いていた。
「食事量がまた減ったか?」
「……別に、関係ないだろう」
「関係はないが、心配はする」
旅をしていた時と比べるとストレスが高いのか、痩せたことを自覚はしている。人目があるところでの生活はリョウの想定よりも彼を蝕んでいた。
小さな声で「しんぱい」と口に出すその目は虚だ。
「どうした」
グラシエルの声に、リョウはハッとしたような顔をする。
その言葉を、大切だった人たちにもかけられたことがある。そう思ったら気持ちが悪くなった。
それでも、何か言われるのが面倒で吐きそうになりながら食事を口に運ぶ。
「何でもない」
(青い顔で言われてもな)
それでも、リョウは今日もまた依頼を受けて外に行くのだろうと予想できて、グラシエルもまた溜息を吐いた。
(危なっかしいんだよな。コイツ)
シルヴィアにだけ弱みを見せられる、とかであれば彼もここまでは構わなかっただろう。けれど、リョウにも意地があるのか、その様子も見られない。
思ったよりも腕が立つこともあって、なかなか口を出しにくい。だが、どこにでも二人だけで行ってしまうのは安全とは言い難い。
(後もう一歩、な気がするが)
どうすれば頑なで危うい、目の前の少年の心に響くのだろうかと頭を悩ませるのだった。
読んで頂き、ありがとうございます!




