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無能勇者と竜の姫君  作者: 雪菊


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14/27

14.葛藤



 リョウは村での出会い以降、あれこれと構ってくるグラシエルを「困るな」と思っていた。

 親切なのだろう。それはわかる。



(でも、信用してまた裏切られれば?俺一人なら良いけど、シルヴィアはどうなる?)



 唯一無二の少女がいる。だからこそ一歩踏み出す気にはなれなかった。

 優しくされるたびに、ジョーの声が蘇る。誠也と綾の、見下すような目を思い出す。

 そして、思うのだ。

——ああ、ダメだ。


 死にたくない、そんな気持ちももちろんある。次いで、シルヴィアを巻き込みたくない、もう裏切られたくないという気持ちだ。それらがリョウの行動に制限をかけていた。

 怖い、恐ろしいという気持ちを、どうしても咎められようか。


 シルヴィアはそんなリョウを愛し気に見つめていた。

 竜は愛情深い生き物だ。

 反面、嫉妬心も強い。リョウが一歩踏み出せない理由が自分であると知っているから、可哀想だと思う反面愛しくて、愛しくてたまらない。このままでいいよ、と言ってしまいたくなる。

 彼女も多くに嫌われ、疎まれ続けてきた。たった一人、兄だけは可愛がってくれたけれど、それ以外の全ては敵だった。

 だからわからない。どうすればリョウを支えられるのか。無条件で自分を愛してくれる存在は、リョウが初めてだった。



「リョウ」


「何、シルヴィア?」


「リョウは私が守るわ。だから、好きなようにすればいいの」



 騙されたって構わない。シルヴィアはもうかつての力無き竜ではないのだ。何があってもパートナーを守ることができる。

 そう思いながらその手を握る。



「シルヴィア、それはダメだよ」


「リョウ」



 リョウは苦笑する。自分で考えて、踏み出さなければならない問題だ。



「よ!相変わらず暗い顔してるな。肉でも食えば元気になる!!」


「ならない」



 そんな時に、グラシエルが現れてリョウの背を叩く。シルヴィアが「乱暴にしないで!」と怒るのを見ながら「そんなに強くはしてないだろう」と眉を下げた。



「痛くはないけど」


「ほら見ろ」


「むー!!」



 騒ぐ二人を見ながら、ふと笑みが溢れた。けれどそれは一瞬で、まだ誰の目にも止まらない。



「依頼を見に行こう」


「うん、今日は何があるかな」


「魔猪を倒して食料を増やしてもいい」


「あなたには聞いてない」



 ずっと二人だけの世界には居られない。

 けれどまだ、それ以外が息苦しい。



(それってどう伝えるべきなのか)



 シルヴィアの手を握りながら、そんなことを考えていた。

いつも読んでいただき、ありがとうございます!

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