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無能勇者と竜の姫君  作者: 雪菊


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13.探る者


 二人の背中を見送りながら、「どうしたものか」と男はため息を吐いた。

 放っておくには特異過ぎる。何を起こすかもわからない。今は休戦しているが、彼らが前にいた国とは長らく争っている。

 それに、少女の顔には見覚えがあった。厳密にいえば、その顔立ちに。聞き覚えがあった。その名に。



(アイツに似過ぎている)



 ちょうど白銀の竜がどこかに消えてしまったのだ、と内密に捜索の依頼が出ていた。それは己がかの人の友人でもあるからこそ打ち明けられた言葉であり、頼みだ。

 確かめようにも元々、その『竜』は酷く人見知りだった。自らの母とそれに関わる者たちが生まれたその瞬間から命を狙ってくるのだから致し方ない話であるが。

 この国の守護神は竜だ。王族はそれに連なる血筋だと言われている。にも関わらず、その竜は兄以外から愛されることもなく、そして姿を消した。

 連れ出された、捨てられた可能性はどうしても捨てきれなかった。


 ならば、人に不信感を覚えていても仕方がない。彼女があの白銀の竜であればそう簡単に信頼を得ることなど不可能に近いだろう。

 であれば、男の方から仲良くなれないかと思ったが。



(むしろ、あの男の方が人に不信感を抱いているように見える)



 どこかで手酷い裏切りにでもあったのかもしれない。そうなると打つ手がなくなる。



(もし彼女が()()()であれば、他の人間には任せられないしな)



 少しだけ考え込んで、「まぁ、やれるだけやるしかないな」と口に出す。指笛を吹くと愛馬が駆けてきた。馬を撫でて、その背に乗ると、男は村人に声をかけて去っていった。



 男はリョウたちが冒険者ギルドに辿り着く、その前にもう一度声をかける。

 村で声をかけてきた男だと理解したのかリョウは「何」とそっけなく返す。



「つれないな」


「用があるなら早く言ってくれ。俺はなるべくシルヴィア以外に時間を割きたくないんだ」


「お前たちと仲良くなりたいだけさ」


「……は、嘘だね。俺と仲良くしたいやつなんて、いるものか」



 吐き捨てるようにリョウは言う。

 理由のない親切心も、友情も信用できるはずがない。だって、それに裏切られてきているのだから。

 このままでいいとは思っていない。二人でずっとやっていくのならば、相応の関係性を築いていかないといけないだろう。けれど、今はどうしてもそれが受け入れられない。

 そんな自嘲するような言葉を聞いた男は苦笑する。



(これは苦労しそうだ)



 そんなことを思いながらも彼はリョウたちに名を告げる。



「俺はグラシエルだ。気軽にシエルと呼んでくれて構わない」


「俺たちはあなたと関わる気は……」


「そう言うな。まずは知り合いから始めようじゃないか」



 そう言って男……グラシエルはリョウに近づいた。

 しつこい、とぼやくリョウににっと笑う。


 知りたいことがあるのも本当ではあるが、まだ少年だというのにそんな荒んだ目をするリョウを気にかける気持ちもある。



(年相応の顔で笑うくらいにはさせてやらないとな)



 どこか放って置けない、そう感じた。シルヴィアが「リョウは私だけでいいのに……」と頰を膨らませているが、そうは思わない。

 今の彼が幸せいっぱいには見えないのだから。

読んで頂き、ありがとうございます!

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