11.冒険者活動1
受付で依頼を受注すると、二人は連れ添って依頼人の元へと向かった。依頼人の村は、比較的若者が少なく、雪の始末に困っていたらしい。雪を落としても、それが固まって、水が流れず厄介になっている部分もある。
リョウはスコップを持って屋根に登ろうとしたが、それよりも先にシルヴィアが飛び上がってサクサク落としていく。とても早い。
(なんか、俺が一緒にやる方が邪魔かもしれないな)
リョウは同じスピードで同じことはできないと判断して溜息を吐く。そして、雪を溶かすことに専念し始めた。溝の雪を溶かして、水になったそれを沸騰させる。火の魔法の応用だ。それは少しずつ周囲の雪も溶かしていく。
村人たちに「この中に雪を落としてもいいか?」と聞かれて頷くと、どんどん積み重なっていた雪が減っていく。想定よりも早く終わった時には、村人たちに温かい飲み物を手渡された。非常に困っていたらしく、依頼された時の料金に上乗せしてもらうことができた。
それが評判になって、二人はあちこちに呼ばれるようになった。冬季の雪の始末はどこも大変らしい。
リョウが生まれた世界でも、雪国では、時に家を押しつぶすほどの雪が積もることもあった。それを考えればこういった依頼に需要が出るのも納得である。
とはいえ、毎日雪の始末だけ、というわけにもいかなかった。
需要が高く、頑張れば追加で料金を支払われることもあるとわかった他の冒険者たちも、少しずつこの依頼を受け出した。ヘタをすると、自分が倒せるレベルの魔物と戦うよりもよほど稼げるのだ。乗らない手はない。
手が空いたリョウたちは、次は何をしようかと依頼票を見ていた。
「今度はランクの低い魔物討伐の依頼が増えてきたね」
「魔猪系は倒すと食料にもなるし、いいかなって思うんだけど……」
「ここの地域の魔猪は雪の中でも素早く走り回り、その牙は通常よりも鋭いって聞くね」
枯葉色と白が混ざった魔猪は木々や雪、枯葉に混ざって目視がしにくくなっている。肉は絶品でその牙は売れるというのだから、狩る人間は多い。しかし、景色に紛れるという一点のみでも厄介だ。この辺りでは比較的ランクが低い魔物ではあるがそれでも命懸けだということに変わりはない。
「とはいえ、報酬も考えるとこの辺りが無難か」
リョウはその依頼票を手に取って、受付へと向かった。
受付嬢は愛想良く、依頼票を受け取って、該当地区の案内をする。リョウの左腕にしがみついたシルヴィアがジーッと見つめてくるのが、なんとも居心地が悪い。
「それでは、地図をお渡ししておきますね。討伐部位を忘れずにお持ちください」
「はい。……行こうか、シルヴィア」
話しかけられたシルヴィアは嬉しそうに微笑んだ。受付嬢は笑顔はキープしながら「バカップルめ、爆ぜろ」とちょっと思った。
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シルヴィアが見つめているのは威嚇(だいぶ軽め)。




