帰り道
女「この公園の桜、今年も綺麗に咲いたね」
男「この公園、昔はよく子供会のメンバーで遊んだよな」
女「懐かしい」
男「俺がサッカークラブに入ってお前が吹奏楽部に入って、他の奴らも塾やら野球チームやらで忙しくなって、中学に上がる頃にはもうみんなで集まる事もなくなったけど、それでも学校ですれ違ったり、体育で一緒になった時なんかはちょっと話したりしたじゃん」
女「そうだね」
男「だから、卒業式の日、もう今後はそういうことも無くなるんだと思うとなんかちょっとだけ寂しくて、勿論泣くほどではなくて、いや寧ろあんまり寂しさを感じていない自分に対して寂しくなったというか。何言ってるんだろう。お前と二人きりでこんなに話すのすごく久しぶりだからかな」
女「もしかして泣いてるの?」
男「まさか」
女「そっか。大人になったね」
男「何言ってんだよ」
女「いや、ハヅキちゃんが北海道に転校しちゃったときは大泣きしてたなあって」
男「何年前の話だよ」
女「確か、小4の夏だったから、六年前?」
男「あー、もう顔も忘れたな」
女「嘘だよ。初恋だったじゃん」
男「あんまり言うと降ろすぞ。もうここからなら歩いて帰れるだろ」
女「ごめんごめん。でもさ、彼女も死んでいなければ今頃どこかで高校一年生やってるって思うと、ちょっと不思議だよね」
男「それは、……確かに」