親友
なんか最近小説書いてなかったというか、あんまり自分が書かないジャンルを書いてみたくなったので書きました。
僕はどこにでもいる陰キャの一人。名前もごくごく平凡で
田中耕一と普通すぎる名前。
中学の頃から周りの陽キャにいじめられたし、頭も良くないから県外にある偏差値38の私立高校に通っている。
ひとついいことがあるとすれば、小学校の時からの仲である親友…といっていいのかな?廣川大河くんが僕と同じ高校に通っていることだ。 僕は彼のことは親友だと思ってるけど、彼からしたら僕はただの友達かもしれないけど…でも違うクラスながら彼とはよく話すからただの友達でも仲良いとはおもう。
大河くんならもっと上の高校を目指せた筈なんだけど、試験当日に色々とした都合があって、滑り止めで受けていたココに入学したらしい。
高校に入学してから、あっという間に月日は過ぎて夏休みに入る前の期末テストの時期となり、僕は図書室で大河くんに勉強を教えて貰っているわけなんだけど…。彼が数学の公式を教えてくれている最中でも心ここに在らずっていう感じで別の方を見ていた。
「…耕一。ここの公式についてはわかってくれたか?」
「え?ああ…ごめん。聞いてなかった…。」
「まぁテスト対策プリントさえやっておけば60点は余裕で取れるからそんなにやる気も出ないか。」
彼に対してすごく悪いことをしているので平謝りする。
「で?考え事の原因は…アレか?」
大河くんが親指をクイッと向けた先には、僕が常々眺めていた図書委員として受付をしている内山さんの姿が。
一見物静かではあるが、アニメの話になるとすごく目が輝くし、僕も彼女とは色々とアニメの考察とかを話したりしていた。できればそれ以外にも色々話したいんだけど、アニメ以外の話をして場がしらけるのも嫌だし…。
「俺で良かったら、練習としてコラボカフェに行くの手伝うぞ?俺でなれたら彼女も誘ってみたらどうだ?」
「え?いやぁ…うーん。…お言葉に甘えて行ってみようかな。」
「そうか。だけど今は期末テストの勉強をしような?」
うっ!大河くんの笑顔がこわい…。考え事をしてたのちょっと怒ってるかも…。
その後は真面目に大河くんに勉強を教えてもらった。
〜3日後〜
「うわぁ…人が沢山。やっぱり東京って人がたくさんだな…。」
「あんまりキョロキョロすると田舎者丸出しだぞ。あまり来ることもないからそうなるのも分かるが。」
秋葉原には前に行ったことがあるけど、今来ているのは池袋であり、秋葉原とは違った喧騒さがある町だ。事前にカフェの場所を頭に入れてきたという大河くんに連れられて歩く。はぐれないようにと手も繋がれている。
「ふっ…こうして歩いているとデートみたいだな…♡」
「ははっ。大河くんも冗談言うときあるんだね。」
「…冗談でもないんだが…(ボソリ)」
「ん?なんか言った?」
「いやなんでもない。はぐれるなよ。」
それからも大河くんに連れられて歩くと、目的地に到着した。案の定混んでいたのだが…なんと内山さんも来ていて、彼女は僕の姿を見つけると、
「あ、田中くんじゃん!ちょうど良かった!私のお姉ちゃんが急用で抜けちゃってね、予約してたのが2人だったから困ってたところだったの!もし良かったら…ってあら?友達がいたのね。」
「あー…。俺のことはお構いなく。付き添いだからな。こいつが方向音痴なもんで。」
「あー、私も似たようなもん。んー、とじゃあ田中くんだけでも一緒に入る?」
「え?あ、大河くんは…どうする?」
「池袋なんて中々来ないからな。珍しいコーヒー豆がないか見て帰るよ。」
大河くんの気遣いに感謝して、内山さんと思いがけずカフェでのデートとなった。向こうはそんな気はないかもだけど。
そのあとはアニメの話もしたけど、当初から気になっていた内山さん自身の話も聞けたし、連絡先も交換できた。
あれもこれも大河くんのお陰だ。
帰りの電車で大河くんにメールを送ると、すぐに返事が返ってきた。
『良かったな。もっとメールしたいところだけどちょっと所用があってな。また明日学校で。』
「どうしたの?田中くん?」
「いや大河くんにメールを送ってただけだよ。」
「あはは。ほんとに大河くんのことが好きなのね〜。そういう仲なのかな?」
「僕の中では親友…だよ。彼も親友だと思ってくれてるといいけどね。」
「んー?そういうことを聞いたんじゃなくて…。
まぁ分からないならそれはそれでいいかぁ。」
なんか小指がたってたけど…癖なのかな?大河くんは僕にとって今回の一件でより一層信頼が増した。
次の日、学食で一緒になった時に大河くんにお礼を言った。
そして一応確認をすることにした。
「大河くん…。僕の勘違いなら恥ずかしいんだけどっ!僕と大河くんは…親、友…だよね?」
「…ああ。当たり前だろ?俺たちは親友だよ。それ以下でもそれ以上……。」
「それ以上…?それ以下でもそれ以上でも無いって事だよね?いきなり言葉を区切るからびっくりしたよ。」
「ああ…いや。すまない。言葉がいきなり詰まってな。そんなことよりあと13分で午後の授業だ。次はお前のところのクラスと合同体育だから。早く食べ終わって歯を磨いて準備しないとな。」
大河くんに言われて、食べかけていたカレーライスを急いで食べ終えて食堂のところで大河くんと別れる。
最後にもう一回改めて大河くんにお礼を言おうと思ったけど…気がつくと大河くんの背中はだいぶ遠くなっていた。
すごく急いでるみたい…?僕もいそぐかな。
そうして月日はすぎて、高校1年のクリスマスになった頃には
僕と内山さん…もとい武美ちゃんはお互いに名前で呼び合うまでの仲になっていて、大河くんのフォローもあってなんとお付き合いにまで発展した。
俺よりも彼女を優先しなということで休みの日は専ら大河くんと遊んでいたのに、たまに僕から誘っても断ってくるようになった。
年越し前に彼の家に直接行くと、意外にも大河くんはすぐに家にあげてくれた。
「最近…学校でもよそよそしいし、僕に彼女が出来たからって僕を避けてるわけじゃないよね?」
「そういう訳では無い。やっとの思いで付き合えたんだから今は彼女を優先してやれ。お前とは…親友なんだし、いつだって遊べるだろ。」
「…僕は大河くんも大切にしたいよ…。」
「…はっ?俺がどんな思いでっ…!くっ…俺の言う通り今は彼女を優先してればいいんだよ。どんだけバカなんだよ。そのくらい分かれよ!」
「なんでそんなに怒ってるのさ!僕が何かしたの!?大河くんが色々とやってくれたから、大河くんとも仲良くしたいのに!それがダメなの!?」
大河くんと今日は遊びたかったはずなのに、気づけば声を荒らげて口論になってしまった。親友といったけど、大河くんと喧嘩なんてしたことは無かったし、彼の頭の良さを妬ましく思ったこともあったさ。でも彼になんの落ち度もないし、そんな気持ちは今まで捨てていた。
気づくと僕は大河くんの家を出ていた。トボトボと家路についていると武美ちゃんからメールが来ていて、これから遊ばないかという連絡だった。
僕は気分をとにかく変えたかったから、提案にのって電車で武美ちゃんの最寄り駅に向かって、ゲームセンターで待ち合わせをしてたっぷりと遊んだ。
遊んでいる間は、大河くんと喧嘩したことを忘れることはできたし家に帰ったあとも今日の喧嘩のことは既に過去のこととなっていた。
次の日、大河くんは学校に来なかった。携帯電話でメールも電話もしたけど繋がらなかった。
帰り道に家に寄ったけど、留守だった。
年が明けても大河くんと連絡がつくことはなく、僕は進級を迎えて高校2年となった。
学年集会にて大河くんの行方がわかった。どうやら前々から話は決まっていたのだが、県外の偏差値が高い高校に転校したらしく家に行ってもいなかったのは、その高校の学生寮に入ったかららしい。
僕とは親友と言ったのに、突然何も言わずに…喧嘩別れのようになってしまった。僕は心の中にポカンと穴が空いた気持ちになったが、武美ちゃんが僕を励ましてくれてそんな彼女の姿に僕はますます惹かれていき、高校卒業後は一緒の大学に進んだ。僕も彼女も文系を選んで、レポート作成や単位取得に四苦八苦しながらも関係は深くなっていった。
武美ちゃんと同棲をし始めて半年が経った頃、ふと大河くんは何してるかな?僕のことはもう忘れたかな?と思うことがあった。僕に黙っていなくなったけど、それでも僕は大河くんのことは人生で初めてできた、唯一人の“親友”だ。
彼かは彼で案外恋人でも作って、快適な大学ライフを送っているかもしれない。そう考えることにして、レポートとにらめっこしている武美ちゃんに息抜きのコーヒーを淹れることにした。
その後だいぶ月日は飛んだわけで、大学卒業後に僕はアイスを販売する商社に勤めて、お得意先をまわったり経験を積むために新規開拓をしたりしていた。
仕事にも慣れてきて入社してから4年が経過した頃に武美ちゃんにプロポーズしてOKを貰えた。
1年後には会社の同僚も呼んで結婚式を執り行うことになったが、ダメ元で大河くんの実家に結婚式の招待状を送る。
僕のことは忘れているかもしれないけど、今でも僕は親友だと思っているから…彼に来て欲しかった。
ー結婚式当日ー
これからの結婚式の本番にソワソワしているわけだけど、そんな中、新郎控え室のドアをノックする音が。
どうぞ、と声をかけると、そこには…
「久しぶり…だな。耕一、元気にしてたか。」
「た、大河くん!?来てくれたの!?」
「ああ、今まで連絡できなくて悪かったな。俺は俺で色々と穏やかじゃなくてな。」
そうして笑う大河くんは随分と大人になって格好よくなったけど、かつて僕と仲良くしてた頃の大河くんの姿だった。
式が始まるまで色々なことを話した。
突然いなくなったのは、大河くんの両親はともかく大河くんの父方の祖父母が学歴に関してとやかく言ったみたいで、能力に比例する高校への進学を強くおしてきたようで、大河くんの家は父方の祖父母に援助してもらって、新築で家を建てたこともあってその意向に従ったそう。
大河くんは僕と喧嘩別れになったのは、後腐れがないようにしたかったらしい。でもずっと僕のことを想っていたようで
彼はまた会えて嬉しいと言ってくれた。
「そうだよね!僕たちは今でも親友だから!」
「ああ、親友…だよな。」
「そろそろ時間になるから、席から僕の勇姿をみててね!」
式は始まり、武美ちゃんはお義父さんに連れられてバージンロードを歩き、僕のところに歩いてくる。
そして武美ちゃんは僕の目の前に来た。日頃見ている姿と違って今日は特段と…美人だ。
そうして僕と武美ちゃんは誓いのキスをするのだった。
「……幸せになれよ。……耕一。俺の…はt……
いや、俺の大親友。奥さんを大事にな。」
耕一くんは大河に対しては唯一無二の“親友”以外の何者でもなく、これからもずっと仲良くしたい感じ。
大河にとっての耕一は、同じ高校に進みたいほどの魅力を持った存在であり、親友以上に進みたい感じ。
武美ちゃんは耕一くんに対する大河の想いはなんとなく気づいてたけど、でも自分の彼氏だからこのまま気づかせないようにいた方が一応は幸せになれるのでっていう考えで
耕一にも大河の関係には口を挟んでいません。
BL描写とかどういうもんなのか、そもそも恋愛ものを書かないからねぇ。まぁ今後に期待?書いてて思ったけど地の文多いかも。