艦隊殲滅戦
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──艦隊殲滅戦
アルマとベネディクタがが敵艦の内部で暴れまわる。
内部から火を放って弾薬を誘爆させて吹き飛ばし、呪血魔術で艦体をへし曲げて浸水させて撃沈し、ありとあらゆる方法でブリタニア連合王国海軍の艦艇を撃沈していく。
「ベネディクタ! 燃やしてやりなさい!」
「あいよ!」
ベネディクタの呪血魔術で炎が放たれ、駆逐艦が、巡洋艦が燃え上がる。
既にアルマたちは巡洋艦4隻、駆逐艦6隻を撃沈していた。
だが、最大の障害はまだ残ってる。
戦艦だ。
戦艦2隻が未だに生きており、戦闘海域から逃亡しようとしている。
「逃げしませんよ。ヴェンデル!」
『了解っす。ちょっと高いところに出るっすよ』
ヴェンデルの呪血魔術でアルマとベネディクタが移動する。
アルマたちが出た先は戦艦上空30メートル付近だった。
アルマとベネディクタは霧化による高速移動で着地する。
「あぶねえな、ヴェンデルの野郎。危うく海に落ちるところだったぜ」
「ですが、成功しました。このまま殲滅しましょう」
ベネディクタが悪態を吐き、アルマが前進を指示する。
アルマたちは戦艦の内部に突入する。
戦艦は38.1センチ連装砲4基を主砲とする戦艦で戦艦の中では高速戦艦に分類されるものだった。かつては巡洋戦艦という装甲を犠牲に速度を稼いでいたものが進化したもので、防御力も速力もあるという現代戦艦の基礎であった。
だが、その防御力も戦艦内に敵が入り込んでは意味がない。
水兵たちは捻り潰され、焼かれ、戦艦そのものも燃え始める。
そこでブリタニア連合王国海軍はとんでもない方法に出た。
なんと僚艦がアルマたちの乗り込んだ戦艦を砲撃し始めたのである。
敵が移動しながら艦艇を攻撃しているということに気づいたらしく、敵戦艦は高速で移動しながら自分たちの戦艦を砲撃し始める。砲撃は2射目でアルマたちの乗り込んだ戦艦を夾叉し、狙いを定めた。
そして、容赦なく砲撃を浴びせてくる。
砲弾が命中し、後部の砲塔が吹き飛ぶ。
対応するはずの水兵はアルマたちが殺したので炎が弾薬庫に引火して吹き飛ぶ。
「ヴェンデルに次のポータルを開いてもらった方がよくないか!?」
「無線機が破壊されています! ヴェンデルと連絡できません!」
「畜生! じゃや、どうするんだ!?」
「敵艦に突撃します!」
アルマは舵を動かし、敵戦艦に向けて突撃を始める。
敵戦艦は回避行動をとりつつ砲撃を加えてくる。
「畜生、畜生。このままじゃ先にこっちが沈むぞ」
「可能な限り近づいたら霧化による高速移動で敵艦に乗り込みましょう」
「了解。上手くいくといいんだがな」
敵戦艦は砲撃を続ける。
このままではアルマたちの戦艦は撃沈されるかに思われた。
だが、そこに騎兵隊が現れた。
「友軍戦艦だ!」
ベネディクタが叫ぶ。
友軍戦艦が姿を見せ、41センチ連装砲でアルマたちの乗り込んだ戦艦を砲撃する戦艦を砲撃した。砲撃は1発目で敵艦を夾叉し、慌てた敵艦が狙いをアルマたちの乗り込んだ戦艦から魔王軍海軍第1艦隊の戦艦に移す。
だが、敵が命中弾を出す前に魔王軍海軍第1艦隊の戦艦が敵艦をあっさりと葬り去った。放たれた41センチ砲弾は敵艦の弾薬庫を貫き、誘爆を引き起こし、敵艦は真っ二つになって海底に沈んでいった。
「で、どうする?」
「迎えが来ましたよ」
上空からドラゴンが炎上するアルマたちの乗り込んだ戦艦に近づき、まだ辛うじて無事な第1主砲の上に着陸した。アルマたちはそのドラゴンに捕まって戦艦を離れる。戦艦はアルマたちが離れると同時に大きく炎上し、轟沈した。
「美味しいところは海軍に持っていかれちまったな」
「勝ったのだからそれでいいのです」
アルマはあの戦艦の艦長には礼を言わなければならないなと思いながらドラゴンの運ばれるがままに陸地を目指した。
陸上の戦いは集結していた。海軍基地は解放され、陸地では兵士たちは喜びに身を浸している。ついに包囲された陸軍の兵士たちが近衛軍の兵士たちと抱き合っているのをアルマは見ることができた。
「よくやったね、アルマ、ベネディクタ」
「光栄です、閣下」
そして、陸地ではラインハルトが待っていた。
「これから海軍司令官と会わなければならない。同行してもらえるかい?」
「はっ。了解しました」
ベネディクタは既にいなくなり、アルマだけがラインハルトの後に続く。
「閣下!」
「大将閣下!
海軍基地までの道のりで出会った将兵がラインハルトに敬礼を送る。
ラインハルトはそれに答礼しながら、海軍基地内部を目指した。
「閣下。お待ちしておりました」
そして海軍の軍服に中将の階級章をつけた女性軍人がラインハルトを出迎える。
「再び会えてうれしい。エリーゼ」
「ええ。閣下とこうして会うことができて光栄です」
エリーゼと呼ばれた海軍提督は海軍基地のソファーを進めた。
「魔王最終指令なるものが下されたと噂になっております。その内容は『戦い続けろ』というものであると」
「その通りだ、エリーゼ。我々は戦い続けなければならない。海で、空で、陸で」
「それでしたら人員と装備の補給を受けましたら正に戦えると言えましょう」
アルマが見た限り、海軍第1艦隊はアルマたちを助けた戦艦の同型艦を4隻、それよりやや小さな重巡洋艦を6隻、装備などが剥ぎ取られて戦闘状態にない軽巡洋艦と駆逐艦をそれぞれ8隻と10隻保有しているようだたt。
それらが修復され、兵員が配属されるならば、海軍は海で六ヵ国連合軍に大打撃を与えられるのではないかと思う一方で、スキュラたちも陸戦で消耗していることを思い出す。彼らが守っていた高台には既に瘴気に変わりつつある人狼やスキュラの死体が散乱し、負傷したスキュラの数もかなりのものだった。
全てはあの艦隊を守るための犠牲だったのだ。
「それは結構。君たちには戦ってもらわなければならない」
「はい。一度、敵と会い見舞えましたら、我らが海軍の誇りをもってして、敵艦隊を撃滅し、勝利を手にしましょう」
エリーゼはそう請け負った。
「ダメだ。エリーゼ。それではダメだ」
だが、ラインハルトは首を横に振る。
「海軍の使命は決戦にはない。自分たちのシーレーンを守り、相手のシーレーンを脅かすことにこそ海軍の存在意義はあるのだ」
「……つまり、閣下は通商破壊作戦を行えと?」
「その通り。君たちには思う存分戦ってもらう。ただし、敵との決戦は避けて。君たちの役割は敵のシーレーンを脅かすことにこそあるのだ」
渋い表情を浮かべるエリーゼにラインハルトはそう言った。
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