時空を渡りし災厄
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──時空を渡りし災厄
ガブリエル亡き後のフランク共和国軍は脆かった。
神聖魔術も失われ、砲爆撃に晒され、首都ルテティアは陥落した。
魔王軍は略奪と暴虐の限りを尽くし、市民はほぼ皆殺しとなった。
「偉大なる勝利に乾杯」
ラインハルトがそう言ってワインのグラスを掲げる。
「偉大なる勝利に!」
軍の幹部たちが一斉に乾杯する。
「さて、諸君。我々の征服事業が達成されたことを喜ぼう。我々は勝者だ。紛うことなき勝者だ。完全にこの地を征服した」
ラインハルトがにこやかに語る。
「だが、我々の征服事業はひとつ終わっただけだ。これから先も征服は続く。我々はここより外の宇宙に出て、多元世界を征服していくのだ」
「多元世界の征服……」
魔王軍の幹部たちが呆然とする。
「そこまで驚くことではない。我々には時空を渡る手段があり、その地を征服する力がある。黒き腐敗、黒き腐敗。神すら殺せる力だ。人間を大量に殺せる力だ。適応したものに膨大な力を与える力だ」
「その通り。君は力を得た。これから先は征服を続けていくだけだ」
そこでいつの間にかラルヴァンダードが席についていた。
「諸君! 征服しよう。略奪しよう。虐殺の限りを尽くそう。横暴の限りを尽くそう」
ラインハルトが語る。
「この世界ひとつで満足していいはずがない。我々はもっと多くのものを征服していくべきなのだ。それこそが我々の使命。遠征を始めよう。征服戦争を始めよう。汚染を始めよう。黒き腐敗で世界を満たし、滅ぼしてしまおう。『戦い続けろ』を守ろう」
ラインハルトはそう言ってくつくつと笑う。
「征服はまだ始まったばかりだ」
それからラインハルトたちの征服戦争は、この宇宙の外に向けられた。
黒き腐敗を振りまき、大地を汚染し、人々を生きたまま腐らせ、神的存在すらも殺すラインハルトたちは恐れられていくことなる。
「おめでとう、君はもう立派な大悪魔だ」
「光栄です、ラルヴァンダード。あなたのおかげだ」
「ふふっ。それで面白いものが見れるならボクは構いやしないとも」
こうして物語は幕を下ろす。
戦争を愛し続けた男の話はここで終わる。
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本作品はこれにて完結です。お付き合いいただきありがとうございました!