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決着をつけよう

……………………


 ──決着をつけよう



「くうっ……!」


「そこまでです。大人しく救済されてください」


「何が救済か。お前がやっているのはただの殺しだ」


「いいえ、いいえです。これは救済です。魔族に身を落としたあなた方を救うための救済です。大人しく救済を受け入れてください」


「そうはさせるか!」


 ガブリエルがアルマに剣を振り下ろそうとした瞬間、アルマの背中にドラゴンの翼が生え、一気に長距離を移動する。


 そして、“ダインスレイフD型”を回収するとそれをガブリエルに向けた。


「ラウンド2だ。ペテン師」


「いいでしょう。受けて立ちます」


 ガブリエルがゆっくりと“デュランダルMK4”の刃をアルマに向ける。


 ここからアルマに投じられた黒き腐敗が活性化した。


 それはアルマに恐ろしいまでの反射神経を与え、アルマの動きを高速化し、アルマがやろうとすることを可能にした。


 激しい戦闘が繰り広げられ、一進一退の攻防が続く。


 だが、今度はアルマが有利だ。


 アルマが押している。アルマが押し切りかけている。


 しかし、ガブリエルもそう簡単にやられるようなものではなかった。


 ガブリエルの翼の輝きが増し、身体能力が大幅にブーストされる。


 そこからアルマが押され始めた。ガブリエルの神聖魔術まもはや魔族であるならば、抗えないところまで達しており、アルマがそれに押される。


「そこまでだ」


 そこで男の声が響いた。


 ラインハルトだ。ラインハルトがやってきた。


「大将閣下! 危険です!」


「何を言っているんだい、アルマ。危険なのは君の方だろう? 私はこの程度の存在にやられたりなどしないよ。神々のアバター風情には」


 ラインハルトが目を細めてガブリエルを見る。


「さあ、いい加減にしてもらおうか。神々からの祝福程度ならともかく、そこまでやるのは流石にどうかと思うからね。覚悟してもらうことにしよう」


「そうですか。あなたには今の私が分かりますか」


「ああ。分かるとも。とても神聖な存在。神々のアバターだ。地上で具現化できるほどの力のない神々が信仰心を集めるシンボルとしてあなたを利用し、それが整ったから利用を始めている。そんなところだろう」


「なるほど。流石は魔王軍の最高幹部にして悪魔に魂を売っただけはあります」


 ガブリエルは剣をアルマからラインハルトに向ける。


「それではあなたから救済しましょう」


「その必要はない。私は既に救われている」


 ガブリエルが振り下ろした“デュランダルMK4”をラインハルトが結界で受け止める。“デュランダルMK4”でもラインハルトの結界にはひびすら入らず、完全に受け止められてしまっていた。


「燃えろ」


 そして、ここでラインハルトがベネディクタの呪血魔術を使用した。ガブリエルの魔力がラインハルトのものに変換され、炎が放たれる。


「くうっ……!」


 ガブリエルは炎をやり過ごすと、すぐさま反撃に転じた。


 次の攻撃は結界を貫いたかに見えた。だが、そうはいかなかった。結界の下にもう一枚の結界。完全に攻撃は止められた。


「圧倒的な私の力見て、己の無力を嘆くがいい」


 次はアルマの呪血魔術が行使された。ガブリエルの神聖魔術に抵抗したそれがガブリエルの腕の骨をへし折る。


「まだまだです!」


 だが、次の瞬間にはガブリエルの傷は消えていた。


 そして、ラインハルトに向けて刃を思いっきり振るう。


 結界が破壊される。1枚、2枚。だが、3枚目が存在した。


 ガブリエルの攻撃は再び不発に終わり、ガブリエルは息を荒くしながら、態勢を整えなおす。もはや、ギリギリまで力は使っている。


「そこら辺にしておきたまえ。それ以上神々の力を受け入れると壊れるよ」


 ラインハルトが警告を発する。


「私ひとりが壊れる程度で人類が助かるならば──」


 ガブリエルが神に祈る。


 ──いいでしょう。力を与えましょう。神に祝福されし子よ。


 次の瞬間、ガブリエルの体内に膨大な魔力が流れ込んだ。


 ガブリエルの翼は3対6枚となり、その翼を広げたまま天に上る。


 空からは光が差し込み、ガブリエルと包む。


「愚かなる魔族たちよ。今こそ神の威光を前にして平伏したまえ」


 ガブリエルがそう宣告する。


「ごめんだね。神という名の化け物に支配されるなど」


 それほどまでにおぞましいこともあるだろうかとラインハルトは言う。


「それでは死になさい」


 “デュランダルMK4”がラインハルトに向けられると無数の光の線がラインハルトに襲い掛かった。それは雨にように降り注ぎ、ラインハルトの結界を削っていく。


「面白い。では、あなたにも消えてもらうとしよう」


 ラインハルトは指の先端に黒き魔術の魔力を集中させた。


「貫け」


 ラインハルトの指から黒い線が伸びる。


 それはガブリエルの胸を貫き、彼女を殺したかのように思われた。


「無駄です。よもや、この程度の攻撃で神の化身である私を殺せるとでも? 無駄です。全て無駄です。さあ、潔く倒れなさい」


 ガブリエル──いや、神の化身は“デュランダルMK4”を思いっきり振り下ろす。


 ついにラインハルトの結界は破壊され、彼の腕が切断される。


「あなたこそそれぐらいの攻撃で私が殺せるとお思いか?」


 ラインハルトはにやりとした笑みを浮かべると、すぐさま彼の腕が回復した。


 そして、再び黒い線がガブリエルに向けて何十と放たれ、彼女を滅多刺しにする。


「無駄だと言っているでしょう、愚かな魔族。その程度の攻撃は何の意味もない」


「そうかな? 神の化身であるあなたには非常に有効な手段だと思っているのだが」


「この程度の瘴気。ないも同然。大人しく爆ぜ散りなさい」


 人工聖剣“デュランダルMK4”が振るわれる。


 それはラインハルトをあっさりと吹き飛ばし、彼はギリギリのところで立ち上がる。


 人工聖剣はもはや人工聖剣にあらず、本物の聖剣だ。


 神に祝福されたそれは本物の聖剣だ。


「くっくっははははは! まだ気づかないのか? それが瘴気だと私は言ったかね? 種明かしをしよう。単純だ。こうすればいい」


 ラインハルトはアルマが持っていた“ダインスレイフD型”を拾い上げると、自分の首を切断した。ばっさりと己の首を斬った。


「何を……」


「こうして死なない魔族が存在すると思うかね?」


 だが、ラインハルトは死んでいなかった。


「まさか悪魔……!」


「気づくのが遅い、遅い、遅いよ。さあ、今の攻撃の意味が分かったかね? 黒き腐敗だ。黒き腐敗による汚染が急速に始まっている。汚染は進み続け、何もかもを堕落させる。堕落したまえよ。天から落ちて、地上にて腐ってい来たまえ。その神々しさも失い、ただの肉塊として果てたまえ」


「おのれっ……!」


 黒き腐敗の影響は既にガブリエルの体に現れ始めている。


 肉体が腐っていき、ボロボロと崩れ落ちる。


「覚悟しておけ、悪魔。いずれお前を仕留めるものが現れる。その時がお前の最後だ。そして、私は堕落などしない!」


 そういうとガブリエルは“デュランダルMK4”を自らの胸に突き立てた。


 神々しい光の羽根は消え、ガブリエルは人間として死んだ。


……………………

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[一言] ひとまず、終わったのかなあ
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