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おっぱい達の未来

 おっぱいラグナロクとは、三種目をもって頂点を決する。おっぱい競争、おっぱいレスリング、そして乳首当てゲーム。この三つの競技をもって、ベストカップが決まる訳だ。


「以上で、おっぱいラグナロクの開催とする。ここに乳を寄せ合い、正々堂々と戦うことを誓いなさい」

「ぱい!」×24


 そして第一種目、おっぱい競争へと移り変わる。おっぱい競争は別名、百メートル走ともいう。走るに伴う乳揺れも評価対象とされ、一概に速さだけを競うものではない。それではデカメロンが有利ではと、しかし速さも加味はされるのだから、貧乳ほどに負荷は少なく、巨乳ほどに判定を得やすい。中間はバランスも取れるわけだ。深き谷間のように考えられた、古のおっぱい種目である。


 そして、スタートラインに並ぶ選手たち。当然、フライングは許されない。スタートの開始は、おっぱいピストルにより行われる。必要以上に小さいシャツを着た巨乳、そのシャツのボタンが弾け飛べば、それがスタートの合図となる。


「この日の為に、走る練習はいっぱいしたわ。間違いなく一位は取れるはず。問題は乳揺れの方ね」

「アルファは全く揺れないもんね、私もあまり自信はないな」

「そういう意味ではこのあたし、イプシロンがバランス型だね」

「なるほど、Eカップか……」


 姿勢はクラウチング、前のめりになることで、各々個性的な谷間を覗かせる。


「位置について、よーい……」


 そして十秒間、スターターは必死に身を捩らす。ボタンは思いのほか強く縫われており、思うように弾けない。


「く……タイミングが分からないよ……」

「慌てちゃ駄目よベータ。GIF画像で繰り返し、タイミングは練習したのだから」


 しかしその後も三十分、シャツのボタンは弾けない。パイを含めた爆乳達は、乳の重みに耐えきれずに次々と脱落していく。


「まだ始まってすらいないのに、既に乳の振るいに掛けられる。おっぱいラグナロクとは、こうも厳しい戦いなのね」


 そして遂にスターターは、全力をもって脇を締め、両腕を巧みに駆使することで、たわわな胸を挟み込んだ。


「今だ!」

「いえ、駄目よ! ベータ! あれはフェイク……偽乳よ!」


 その声も空しく、一斉に飛び出す擬人化おっぱい達。しかしアルファの言う通り、スターターの乳は偽乳だった。故に肉が寄せられることもなければ、それで張り裂けることはありえない。だがフライングはフライング、ベータは思わず飛び出してしまい、結果として残るはたったの三名。


「ガンマ、あなたよく動かなかったわね」

「当たり前よ、今でこそ誇りを持てど、昔は巨乳に憧れたもの。真か偽か、その判別くらいはつくのですわ」


 だがもう一人、超乳を持つにも関わらず一切動じぬ者がここにいる。


「オメガ……さすが伝説といったところですわ」

「えぇ、中途半端な巨乳と違い、構えた時点で地面に乳が着いており、その身は一切疲労していない。おまけにフェイクにもかからないとは、とんでもない度胸、もとい度乳の持ち主ね……」


 オメガのクラウチングの体勢は、乳を地面に着いている。もはや手すら届かぬその姿勢、ただ体重を預けるのみだ。


「くっ……持久戦になったらオメガが有利ですわ」

「瞬発力だと思わせておいて、なんて奥深いのおっぱい競争……」


 そう、偽乳のスターターは運営の仕込みだった。しまったと、やられたと、脱落した擬人化おっぱい達は、悔しさと谷間を露わにする。


 そうして更に三時間。既に日は傾き、足の限界の訪れを感じた頃、遂にスターターは比翼に手を掛け、両手でボタンを引き千切った。


「今だ!」

「今ですわ!」


 そして飛び出すアルファとガンマ。しかしその間、オメガはというと――


 動かない。オメガは決して、動かない。潰れる乳に身を預け、ただただ四肢を泳がすのみ。


「うぉおおお! 負けるかぁあああ!」

「私だってぇえええ! 負けてたまるかですわぁあああ!」


 競い合うアルファとガンマだが、しかしその差は開きつつある。アルファが少し優勢だが、しかしガンマの乳は揺れている。


「私の乳よぉおおお! 揺り動けぇえええ!」

「くっ……」


(私は、私には他にできることはないの。走る以外に、何かできることは――)


 するとアルファ、五十メートルを越えた時点で、なんと自身の肌着を脱ぎ去った。


「はっ、軽くしたところで無駄よ。その動作の方がタイムロスですわ!」

「いいえ……そうじゃない!」


 半裸で走るアルファの姿、皆一様に疑問符を浮かべるが、しかしベータは気付いた。親友で、乳繰り合う間柄であったベータだけは、それに気付くことができたのだ。


「み、みんな! あれを見て! アルファは確かに、揺れている!」


 ベータの指差す先、そこは平らな大平原。しかしその中心には、そそり立つ桃色の巨塔があって――


「な、なんて巨大な……」

「あのようなB地区は、未だかつて見たことがない……」


 揺れの規定は乳とあって、乳の何処とは決まっていない。故にアルファのそれも乳であり、揺れれば当然、評価の対象に――


「そ、そんな……まさか無から有を、Aカップがそのような可能性を秘めているだなんて――」

「乳の可能性は無限大だ、それがCだろうがFだろうが、Aであろうが! そして勝つのは、この私だぁあああ!」


 無限とは、∞。その形がおっぱい由来だということ、知る人ぞ知っている。そしてアルファはそれを知っていた。それはウィキで調べた、古の知恵――


 そして聳えるアルファのそれは、ただ揺れるのみでなく、ゴールラインへの接触の一瞬の早さをも生み出す。ゴールの瞬間、テープに乳が触れると、喘いだアルファはその場に崩れた。


「ちょー気持ちいい、ほぼイキかけました」


 わっと集まる大歓声。走りも、揺れも、見るまでもなくアルファの大勝。しかしガンマの顔に憂いはなく、その顔は潔く晴れ晴れとしている。


「私の負けですわ、アルファ。でも次の競技では負けませんわ」

「私だってギリギリだった、でも必ず勝ってみせるさ」


 そうして二人は乳を差し出し、互いにそれを握り合った。巻き起こる歓声と拍手。おっぱいラグナロクとは厳しさだけでなく、こうした感動をも生み出すのだ。


「ふっ、未来の乳界も明るいな」


 と、そう呟くオメガ。そんな彼女はスタートラインから微動だにしていない。まだまだ戦いは始まったばかりだと、そういうことを言いたいのだろうか。


「まずは一勝。だが油断はできない、まだまだ競技は続くのだから――」


 上向くアルファのB地区は、遥か未来へと向いている。この会場が更地となる、ただそれだけを祈り続けて。


「えぇ、感動の最中恐縮ですが、今の競技はわいせつ物陳列罪により、アルファ選手は脱落です。有資格者はガンマ選手のみ、よって優勝はガンマ選手です」

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