自覚する
チョットグロイかも。
異世界だと気づいたのには訳があった。
明らかに見たこともない植物や動物の姿形、その鳴き声、突然こんな場所に居るという状況がそれを物語っていたのだ。
どうしてこうなった、何で自分が、
と一瞬頭をよぎるがそれよりも今やらなければならないことを必死で考え始める。
(冷静に行動しないと死ぬ。まずはどうするべきか。)
ひとまず服が欲しかった。けれども何も持たない今それは叶いそうにない。それならば…
(まずは身を隠す住処を探すかな。)
自分が出てきた洞窟も候補の一つにはなるが、やはり暗いのは不便ではある。できれば、逃げ場も確保したいからな。後それから…
思考にふけっていた時、そこで少し足に痛みが走る。
さっき足を切った時の傷が疼いたのだ。そこで重要なことに気づいた。
水だ。
(水が無いと3日で動けなくなると聞いたことがあるぞ、しかもこの傷口を早く洗わないと悪化するかも知れない。まずは水の発見が先じゃないか。)
とりあえずは住処を洞窟にすることにし、すぐさま水の確保のため辺りを探索し始める。まず第一に探すのは川や池といった長期間使用が可能な水源だと考えながら慎重に探索していく。すると…
(あったぞ、ラッキーだな。)
幸運にも近くに川を見つけることができた。見つけて直ぐに自分の喉が渇いていると自覚し、すぐさま水を飲もうと近づこうとした時、ハッと思いとどまる。
(こういう水源には動物が集まりやすい。注意して行こう。襲われたらたまらないからな。あれ、というか…)
何でこういう知識だけは覚えているんだ、と気が逸れたが、それをかき消すように何かの姿が見えた。
何だあれは。
とにかく気持ち悪い姿をした汚らしい茶緑で二足歩行の猿のような生き物がそこにはいた。数は見えてるだけで3体。鳴き声も独特で喚き散らしているように見える。確実に自分の知識にはない生き物だった。すぐに近くの木に身を隠す。
(正直怖すぎるぞこれは、どうすればいいんだ。)
とりあえず、身を隠したままジッと観察し続けると急に鳴き声が止んだ。思わず、息を止めてしまう。
心臓が高鳴る。まさか気付かれた!?
…暫くすると、再び鳴き声を発し何処かへ行ってしまった。そこで、腰が砕けたように座り込む。
(あきらかに何かを感じている様子だった。危なかった。)
ホッと胸を撫で下ろし落ち着いてから立ち上がり、川に近づく。しかし突然、ザバァと水から何かが出てくる。
さっきの茶緑の生き物だった。
「うわぁあ!?」
思わず声が出る。するとその生き物がこちらを見て、目があった。近くで見ると本当に気持ち悪い。
その生き物は奇声を上げながらこちらに向かってきた。穏やかな様子は一切なく、その迫力から気圧される。
とりあえず逃げなきゃ!
咄嗟に足は動かず、無理やり動こうとしたせいで転んでしまう。こっちが転んだことで偶然にも相手の足にタックルをかけた形になり、その生物は頭から地面に激突する。そのまま失神したようだ。
一方でこちらは、嫌な汗が流れる。頭から激突ということは、噛みつくつもりだったのかも知れない。しかも全力疾走で。一気に恐怖が体を襲う。
こいつを殺さなきゃ。直感でそう思った。
あまりの恐怖に、気が動転しているのか殺すことに全く躊躇がなかった。もしかしたら野生の本能が働いているのかも知れない。
一撃で殺すために、大きめの石の上にその生き物の頭を乗せ、両手じゃないと持ち上がらない程の石を持ち、その頭に目がけて思いっきり振り下ろす。無我夢中だ。
鈍い音がして、その生き物は死んだ。
血の匂いがするその死体を足?の部分を掴み引きずるように川辺に持っていき、深そうな場所に投げ入れる。しばらくすると投げた場所には魚が集まっていた。
それを眺めているとようやく冷静になってくる。息は荒いままだ。そこで理解した。
本当に異世界に来たんだと。
本当に不定期です。