表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

兵士



訓練場に、声が響く。


「訓練終了だ。全員休憩に入れ。」


「了解!」



私達は返事をした後、行動し始める。

持っている訓練用の武器や的を片付けたり、武器や防具の点検作業をするものもいる。



色々あって、私は今この街で兵士をしている。



初めてこの街に来た日。

あれからもう1年が過ぎた。

私は毎日訓練所で訓練をしている。



入りたての兵士の仕事は主に、雑用だ。

訓練には参加させて貰えるが、もちろん戦争にも参加しなければならない。



(戦争、か。)



そう、戦争。

ここの辺りの地域一帯はエラシストラ王国という国が治めているらしく、この街ドスタはその都市の一つ。



他にも近くにいろんな国があるらしく、その内の一つの国が、何やらきな臭い動きをしているらしい。

話に聞いただけだからボンヤリとしか知らない。



この街の兵士は全員、エラシストラ王国に仕える。

私はこの言いづらい名前が嫌なのでエラ国と呼んでいる。



兵士は階級制で1士から5士という一般兵がいる。

ちなみに入りたての私は5士だ。

その上に一般兵をまとめる兵士長がいる。

そこから上は順に、少将、中将、大将というらしい。

兵士長より上になるには、武勲を立てる必要がある。




つまり私は、街に来てすぐに就職できたのだった。

仕事に困って、路頭に迷うようなことにならなくて本当によかった。



ちなみに、ちゃんとお給金もでる。安いけど。

しかも、今は訓練場近くの倉庫の一室を使わせてもらっているので、住む所も確保できたのだ。



それもこれもある人物のおかげだ。

そう、さっき訓練終了を告げた兵士長だ。

私がドスタで初めてまともに喋った相手だ。



私が出会ったあの男、マークスは優しい男だ。

金髪目つき悪男のマークスは兵士長だったのだ。

つまり、今の私より5階級上だ。



私が門の前で暴れていたにも関わらず、事情を聞いて状況を理解したマークスは、私を保護するような形で兵団に拾ってくれたのだ。感謝しかない。




街に来て怒涛の展開だったけど今は少し落ち着いた。

まだ1年だが、私のエラ語(エラシストラ語)はかなり上達している。単に私の能力ではない。



日常生活や訓練全体で、エラ語が必須だからだ。

喋れるようにならないと、生活できない。

そんな環境に身を置くと、習得せざるを得ない。



(今日も疲れたぁ、点検もササっと終わらせよ。)




私の日課の一つだ。

私は、訓練用の武器や防具の清掃や点検をしている。

言葉が喋れなかった頃の私にはありがたい仕事だ。

これも兵士長の計らいによって、だ。




汚れを拭き取ったり、破損箇所がないかを調べる。

最後には数を確認し、記録簿に書き入れる。

そして一時間ほどかけて、点検を終えた。

私がくる前は、全て兵士長がやっていたらしい。




(よしっ、終わった。早く水浴びしよっと。)




私は訓練用の服を脱ぎ、水浴びをする。

服の上に防具も着ているのでかなり蒸れる。

私はこの時間が好きだ。

訓練が終わった後の水浴びは格別なのだ。



私は、水の魔導具を手に取る。



しかし、この魔導具っていうのは本当に便利だ。

水を出したり、小さな火を起こしたり。

森の中では何時間もかかった火起こしも一瞬。

こうやって水浴びもできる。




水浴びしながら考える。




(この技術が兵器として利用されたら、とんでもないことになるんじゃないか。こんな訓練をしても、巨大な火の玉や波のような現象を起こされたら大惨事だ。)




私にはまだまだこの世界の常識がない。

世の中、疑問で埋め尽くされているが、あれもこれも考え込んでいてもキリが無いので思考を切り上げる。




水の魔導具を止め、風の魔導具を手に取る。

風の魔導具を使い、身体全体の水気を吹き飛ばす。

ブオッ、と風を起こす。

初めはびっくりしたけど、慣れれば気持ちいい。



(これで完璧。)



水浴びでスッキリした私。

近くにかけていた服を取り、着替えようとした時。

倉庫の扉が開く。




「リン、いるか。ちょっと話が…」



この声は。

私は、即座に敬礼する。

そして返事をする。



「はい!います!今水浴びを終えたところです!」



この1年で上下関係も身体に染み付いた。

これは条件反射のようなものだ。

ちなみに私はみんなからリン、と呼ばれている。



入ってきたのは兵士長のマークスだ。

兵士長は、声の方向に顔を向けながら話す。




「ああ、そこにいたのか。それと訓練後なんだからそんなにかしこまらな、くて、も、…」




兵士長の顔が固まってしまった。

いや、固まったのは一瞬で、すぐに目を逸らす。

そして慌てて話し出す。



「す、すまん、次からはノックしよう。敬礼はやめて服を着てくれないか。」



「失礼しました。」



私は、すぐに服を着替える。



「それで、マークスさん、どうしました?」



私は、何でも無かったように用件を聞く。

兵士長が訓練後に倉庫に来ることなどなかった。

一体どうしたんだろうか。



一方、兵士長マークスは、何か言いたげな顔をしている。

そして、大きくため息をする。

ウォホン、と大きく咳払いをした後、用件を話す。



「いや、ここにきて1年、よく頑張ってくれている。実は、リンを4士へと昇格にしようかと思う。訓練でも持ち前の身体能力は目を見張るものがある。戦闘能力だけでいけば、兵士長クラスだろう。」




おお!昇格の話だ!

思わず笑みが溢れる。

ついに、4士として活動することができるのか。

私は感謝を口にする。



「ありがとうございます、今後も精進します。」



すると、「うむ。」と兵士長はいう。そして、



「本当は3、いや2士にしてやれるくらいの実力は充分にあるのだが、リンはまだ街の人間からすれば、流れ者だ。そうそう簡単にはいかんのだよ。」



と、告げる。さらに続けて、



「そこで、信頼を得るためにも、大規模な軍事演習に参加するのが昇格の1番の近道となる。近頃実施されるらしいからな。参加してみるか?」





「はい!」私は即答した。







































リンネルジュ エラシストラ王国兵士 4士

能力

・隠密

・気配察知

・素手戦闘

・環境利用(森)

・サバイバル術

・装備点検 New

・エラシストラ語 New


主人公ちゃんは就職できたみたいですね。

ようやく言葉も喋れるようになりました。

ちなみに主人公ちゃんはナイスバディです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ