3. Team description 1
プロチームとは違って、1年ごとに選手が変わっていく子どものチームでは、監督が難しい。同じ選手が長期間いるのであれば、チームの組み方は結構固定されて、ある程度の志向を作り上げることができるためだ。しかし、6年生は翌年からいなくなるリトルリーグではそうはいかない。その時によって選手が変わる上に、補欠選手も変わるし、当然プロほど幅広くない。小学生に無理なトレーニングをさせることができないので、最低限をキープすることも難しい。突出した才能が一人いたとしても、言ったところで子どもである。そこにすべてを背負わせることもできない。
そう聞けば、コンスタントに結果を残し続ける御法監督のすごさがわかろうというものである。子どもたちの個性を生かしつつ、楽しみながら、苦にならない範囲でのトレーニングを行い、メンタル、フィジカルの二面からケアを行う。一人で下手な強豪チームの3人分くらいの役割を負い、常にチームにあった新しい戦術を模索している。もはやスーパーマンである。
そんなチームだから、うわさを聞きつけて様々な場所から子どもが集まってくる。主に聞いているのは親だが。
30人いるメンバーでも、地元の子どもは10人程度で、隣の県からやってくることはまずないが、東部にあるチームだというに、県西部から毎日電車で通っている子どももいるくらいで、県内の様々な子どもが集まっている。もしかしたらコーチだって雇えるんじゃないかというくらいに、寄付の申し出があるらしいが、必要分以上は断っていたり、還元していたりする。つまり実質的に必要分だけしか使っていない。道具代、場所を借りる料金だけでいいので、ある意味そこまで高額にはならない。
道具を買うお金のない子どものための貸し出しバット、ボールなどがあり、運営費の大半はそこに消える。子どもがしたいことを全力で支援するためだ。家にお金があるかないかは、子どもたちには考えないでいてほしい、そういうものである。このリトルリーグには入会に際した金銭は必要なく(多くがそうだろうが)、特に場所代や道具代、遠征費用などを子どもの家族から支払うということはない(寄付という形での支援はあるが)。ごちゃごちゃと設備ばかり増やすよりは、あるものを効果的に使える子どもになってほしい、という監督の願いが込められている。