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2. Coaching

「今日もまずはランニングからだ!ストレッチはしたか?」

「「「「はーい」」」」


練習メニューを決めるのは、監督の御法宏宗みのりこうしゅうである。御法は、地域の独立リーグで監督を務めていた名将で、チームを2度の優勝に導いている。年が年だから、とずっと座っていることが多いが、バッティングや守備の指導の際は自らバットを持って、スイングの手本を見せたりノックをだしたりしていることから分かるように、まだまだ若いもんには負けんわい!という気概がひしひしと伝わってくる。


「いっちにー「「「「「いっちにー」」」」」おいっちにー「「「「「いっちにー」」」」」」


練習はランニングから始まる。事前に入念なストレッチを行ない、ケガには十分に気を付ける。御法の指導で重視されているのは、「楽しんでのびのびとプレイする」ことである。ケガをして痛みを抱えながらでは楽しいプレイはできない。ということで、子ども達は監督の言うことをしっかり聞くようになっている。いうとおりにすれば、楽しい野球が楽しくできることを理解している、と言えるだろう。


御法は地域にも顔が広い。そのため、子ども達の様子がなにかおかしい、となると保護者やら教師からいろいろ聞き込みをして、助言をしたり自ら支援したりしている。というと仰々しい感じではあるが、地域住民からの印象は、好々爺である。


「おっとりとした声色で尋ねられると、何でも答えてしまいそうである。」といったのは、独立リーグに出入りしていたNPBのスカウトマンの言葉だ。独立リーグ時代から世話焼きは変わっておらず、チームメンバーのメンタルケアは万全だったといえよう。


「あそこに預けると子どもがいい子になるわぁ」

と保護者からの信頼も厚い。


練習メニューの話に戻ろう。

ランニングが終わると、守備、走塁、打撃を合わせた総合練習が始まる。

ベースカバーや盗塁、何でもありである。小学生が突然やり始めてもなかなか難しい。


ただ、子ども達は「できる」ことがスゴイのではなく、「できないことをできるようになるまで努力する」ことがスゴイということを漠然と感じている。大人も顔負けのメンタルは、ここから生まれている(らしい)。


特に、打撃、守備は練習である程度成長する、ということがよーくわかっている。というのも、監督の指導で、自分たちがどれだけ成長できているかを実感できている、ということである。


ノックの場合では、先週より少し遠くに、先週より少し速く、先週よりも難しい弾道で打球を飛ばす。1週間それを続けると、その少しの差が感じられないくらいになっている。最初のうちは取れないことの方が多い。しかし、木曜日、金曜日と、グラブに入ることが増えてくる。


バッティング練習では、マシンの球速を少しずつ速くしたり、回転量を増やしたりする。果ては、監督特注のランダムに球速が変化するマシンを使って、様々な球速、球威に慣れる。


金曜日には監督が成長を見るテストを行なう。これまでの様子、体調、もともとの能力などから、テストの内容は子どもによって少しずつ違う。


例えば、得点圏打率が芳しくない子どもの場合は、ランナー1塁の状況、2塁の状況、1、3塁の状況でのバッティングを、ゴロの対処が苦手な子供には、バントの対応や送球を、リード、走塁、盗塁の苦手な子どもには、ベースランニングを・・・という風に、重点に置く部分を変えてテストを行う。


これによって、様々な状況での対応力を身に付けてゆく。プロ並みのことをしているが、子ども達が簡単に理解できるように、監督なりに伝え方の工夫が光る。


例えば、「君は得点圏打率が低いからその状況に慣れよう」というのではなく、「ランナーがいたらプレッシャーなのかな?あそこにいるのはチームメイトだ。失敗したって許してくれる。自信をもって、ボールをしっかり見るんだ。そうしたらきっと打てる。」

子どもの苦手を理解させたうえで、それに伴った対応をする。知らず知らずのうちに、子ども達は成長しているのである。

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