第47話 幸せはルークの傍に1
夜も更け静かな王宮の廊下を、グレッドと共に歩く。シルフィアは、ガゼボに向かう途中でグレッド様に話しかける。
「あの…グレッド様」
「グレッド様には、好きな方がいらっしゃいますか?」
「どうしたのですか?急に…」
「いえ……」
何を聞きたいのか、グレッドには分からなかった。
分からなかったが、先程の陛下の話と関係があるのだろうと予想をつけた。
だから、自分の体験談を少し話すことにした。
「俺には、婚約者がおります」
「今では相思相愛と自負してますが、政略の為の婚約で、お互い別に好きな方が居たんですよ。俺たち」
「え?」
「最初は、歩み寄りは無かったのですよ。好きな方の元に通い、結婚後もお互い浮気を許容する…と」
「彼女と話し合い決めていました」
「ですが……ある日、婚約者が誘拐されたんです」
「単身で助けに行き……俺は、隠れている敵に気付かなかった。気付いた時には、婚約者は俺を庇って……」
思い出すと、心に苦いものを感じる。
だが、その事件で婚約者の思いを知る事が出来た。
「シルフィア様、陛下の事がお嫌いですか?」
「!!」
ふるふると、頭をふる。
「シルフィア様、もう一度、心の中で整理してみて下さい。陛下を思った時、自分の心が何を思っているのか」
「自分の心に嘘をついてはダメですよ?」
グレッド様と話していると、あっという間にガゼボに着いた。
グレッド様は、私にひざ掛けを渡し離れた。
彼は最後に『心に嘘はダメ』と言っていた。
目を瞑り、頭の中で陛下を思う。
彼の笑顔を見ると、心が満たされ。
彼が困っていると、手助けしたくなり。
彼が悲しんでいると、寄り添いたくなる。
婚約者だったフェルナンド様には、感じたことの無い高揚感が心に溢れる。
(ああ、わたくしは……)
ガゼボに着いて少しした頃
陛下が、ラフな格好で、ストールを羽織ってやってきた。
「待たせたか?」
「い、いえ、大丈夫です」
「話があると聞いたのだが?」
「は……はい」
「あの、昼間の事で……」
「!」
「すまない!だが、簡単な気持ちでした訳では無い!私は、お前を愛してるんだ!」
「つっ!あ、あの、私は………私もスキですわ」
最後の言葉は小さく、陛下には聞こえなかったみたいだ。
その為
「分かっている。急かせる気は無いんだ。ゆっくりで良いから考えてほしい」
勘違いさせてしまった。
陛下は優しい。
私の事を、沢山思ってくれる。
本当は……、きっと、もっと早く答えが知りたいと思うのに……
なのに、待っていてくれる。
私が、心を決めるのを……
(伝えよう、私も好きだと、愛しているのだと、……)
「……はい」
……じゃないですわ!
「って、違いますわ!」
「ん?」
「わたくしは、その、陛下とのキスは……嫌ではなくて……その、むしろ、えっと……スキ……ですわ」
また、最後の言葉が尻すぼみしてしまう。
だが、今回の言葉は、最後まで聞こえたみたいで。
「っ!嫌ではない?好き?」
「あ、あの、話はそれだけです!夜分に申し訳ありませんでした!」
言った途端に恥ずかしくなってきて、陛下の言葉を聞かず、立ち上がり逃げるように離れようとした。
だが、それは出来なかった。
ファルークが、彼女の腕を取り引き寄せたから。そして、クッションの上に押し倒し左手で両手を頭の上に拘束した。彼女頬に右手で触れて愛おしそうに見つめる。
「嫌ではないなら、もう一度、しても良いか?」
ボッと顔に熱が集中する。
恥ずかしくて俯きそうになる顔を、陛下が持ち上げ、至近距離で見つめ合う。
「は……っ、……んっ」
返事が終わる前に、深く口付けられる。
「はっ……んん」
手は拘束され、足の間に陛下がいて身動きが出来ないまま深く、深く、口内をかき乱される。
「っん……はっ」
キスの合間に息を吸い、潤んだ瞳で陛下を見上げる。
「そんな目で見るな、止められなくなるだろ」
「……へいか」
「ルークと呼べばいい」
「るーく、さ、ま」
「ふっ、愛してる、シア」
「はい、私も、愛しております」
やっと、くっつける事が出来ました~!!
幸せ絶頂期真っ只中のルークです!
この出来事の後は、ルーカスやグレッド、ヴィムクにからかわれ、ミュゼット家からは、睨まれていくんだろうな~と思います。
シルフィア大好き兄貴達ですからね!