第42話 伯爵の罪
やっと、伯爵のプチギャフンです。
ギャフンのつもりです。
よろしくお願いします。
2話続きます。
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謁見室
謁見室に、一人の男が入ってくる。
所定の位置で、立ち止まり一礼し跪く。
周りには兵士や、国王の側近が並び立ち、皆険しい顔をしていた。
(何故に、私はまたこの場所に呼び出されたのだ…)
ロンデール伯は、跪きながら前を見据える。
(しかも、陛下や宰相殿だけでなく、セレスティナの者達まで……)
階段下に軍司令官のヴィムクが立っていて、反対側にセレスティナのミュゼット公爵、その後ろに息子共が並んでいた。
陛下の右隣に宰相のルーカスが立ち……
チラリと、陛下の左隣を盗み見る。そこに居たのは……
先日、陛下に呼ばれ、話に出た女性。
セレスティナ王国最強の守り刀で、三大淑女の1人。
青薔薇
シルフィア・ロズ・ミュゼット!
悠然と立ち、微笑みを浮かべ、私を見ている。彼女と相対した事は無かった……はずだ。なのに、何故に見覚えがある?
見過ぎたのか、彼女を護るようにグレッドが柄に手をかけ前に出る。
シルフィア様が、柄に手を当て首を振ると、グレッドは下がった。
グレッドが下がると、シルフィア様の傍にローザ姫とライラ嬢が寄り添うように立つ。
三大淑女が勢揃いすると、迫力がある。
(シア様は、誰にも穢させませんわ!)
(護ってみせる、今度こそ!)
2人は、キッとロンデール伯を睨みつける。
「ゲルニク・ブレス・ロンデール」
ファルーク国王陛下の声が、謁見室に響き渡る。この場の空気が、厳粛な雰囲気に一気に変わった。
「なぜ、この場に呼ばれたか分かるな?」
静かな怒りを携えて、問いかける陛下。
ロンデール伯は、跪いたまま考える。
(……あの顔は……感ずいたのか?)
「存じ上げかねます」
「そうか、お前の口から聞きたかったが致し方あるまい」
「これより、貴様の犯した罪を暴く!覚悟せよ!」
そう宣言すると、シルフィア様が前に出て階段を降りる。隣にグレッドが付き後ろにローザ姫とライラ嬢が付いて来た。
「ロンデール伯、私の顔に見覚えはありませんか?」
「ロンデール、顔を上げよ」
陛下に許可を頂き顔を上げる。
シルフィア様の顔を凝視したが、先程感じたように見覚えがある気がするのに理由が分からなぬ。
「?」
「分かりませんか?」
「会った事は、ないと存じますが……」
シルフィア様は、一瞬悲しそうな顔した。
「そうですか…」
数歩下がり、凛とした表情で声を張り上げる。
「ロンデール伯、私は……貴方の奴隷アシャラです!」
「忘れたとは、言わせませんわ!」
「!!」
言い放った彼女を護るように、グレッドとヴィムクが前に立つ。
「お待ち下さい!貴方様とアシャラが同一人物だと?」
「馬鹿な…!雰囲気も髪色も全く違います。同一とは思えませんが?」
「私の容姿は、ナタリーが綺麗に整えて下さいました」
ナタリーを見ると、優しく微笑んでくれた。
目覚める数日前
ナタリーは真実を聞かされた。
アシャラがシルフィア様なのだと。
ナタリーにとって、シルフィアは命の恩人だった。
あの日、私は夫と子と共にサンドシュガーを取りに来ていた。魔獣の氾濫が起きた時、一瞬で周りが魔物だらけになった。『助からない!』夫は私と子供を護るように両手で抱き寄せ全身で包み込んだ。
そんな時だ
目前に迫っていた魔物が、煙のように消えた。何が起きたのか、最初は分からなかった。死の間際に幻を見たのだと…
でも、違った。
馬上に跨った女性が1人、私達の側に駆けつけ剣を掲げ魔法を放っていた。近付く魔物を切りつけ、なぎ払い、倒していく。
周りにいた、沢山の魔物は彼女が1人で一掃した。
『大丈夫ですか?』
綺麗な声に顔を上げると、彼女は『もう大丈夫ですわ、王都まで転送しますわね』
と言って、お礼を告げる前に王都に飛ばされた。彼女が青薔薇シルフィア様だと知ったのは、魔獣が片付いた後の事。
それから、陛下にお仕えしながらも、セレスティナ…いえ、シルフィア様が助力を願った時は必ず力になると決めていた。