第41話 最高位精霊ラウラ
夢の中から戻ってくる。
……銀狼の姿で……
「……はぁ」
「陛下、大丈夫ですか?」
まさか、シルフィアが……
「ふふふ、沢山撫で回されましたわね」
「ローザ姫、最初に教えておいて貰いたかったのだが……」
「シア様は、大のモフモフ好きなんですの」
「モフモフした動物を見ると、目の色が変わりますのよ。セレスティナの者は、みな知ってますわ」
「情報収集不足ですね、陛下」
フフン…と、何故か勝ち誇ったような顔で、こちらを見てくるレン。
(くそ……!)
なんか、悔しい気がする……
「……ルーカス、神力を扱える者を集めよ」
「ルーカス達、月精霊は攻撃、破壊タイプではなかったな……」
「はい……陛下の聖獣では、魔道具の破壊までは?」
「以前、試した事がある……が、無理だったな」
あの時はまだ本気ではなかったにしろ、かなりの力を込めてライトクローを放ったつもりだ。それでも、傷1つ付けられなかった。
何か、まだ何かある筈だ……あれを破壊する為の何かが…
『困ってる?』
部屋に、声が響く……
「ラウラ……?」
呼び掛けると、部屋の中にスーッと1人の青年が現れる。
我が国に力を貸してくれている、精霊だ……だが、精霊は彼女に近づけないのでは?
(どういう事だ……)
『ルーク…困ってるね……』
彼は、濃い緑色の髪を後ろで緩く1つに結び、琥珀色の目をした青年姿の精霊だ。
ラウラは、シルフィアの眠るベッドに近づき、優しく頭を撫でる。頬に手を添え、額を合わせ、『頑張ってね、姫』と声をかけていた。
驚いて見ていた俺に、ラウラは衝撃的な発言をした。
『ルーク、僕はこれでも精霊王に次ぐ最高位の精霊だからね』
「最高位……?!」
「……な!おまっ……」
「最高位……ルイ様と同じ……」
言ってなかった事実を伝え、驚いたファルークや皆の顔を見てクスクス笑う最高位精霊ラウラ。
『水の最高位から連絡を受けて、急いで駆けつけたんだよ?』
『水の…じゃなくて、ルイ?だったかな』
『来たがっていたんだけど、精霊王を放る事も出来ないからね。僕が、姫の傍に着くことにしたんだ』
まだ立ち直れない彼らを後目に、話を続ける。
『上位の精霊でも、この場はキツいだろうけど……僕達最高位なら話は別だよ』
『僕も手を貸すから、姫を助けてよルーク』
ラウラの視線を受けて、立ち直ったファルークが力強く頷く。
「ああ、必ず助ける」
嬉しそうに笑って、ラウラが精霊たちから聞いた話を教えてくれた。
シアが連れ込まれた魔の森の小屋の場所、奴隷商人がよく行く場所、伯爵の秘密の部屋。
「!おまっ……!知ってるのか!!?隠し部屋を!」
『僕は知らないよ』
『でも、精霊達は好奇心旺盛で自由だからね…彼らから聞いたんだ』
『僕達は繋がってるから、心を遮断しない限り伝わるんだよ』
『でも、全ての精霊と繋がると煩いから、僕に関係がある人間以外とは繋がりを遮断してたんだ』
『僕は国を離れてたから、姫が居ることに気付かなくて…そしたら、ルイから連絡が来てさ』
『それで、精霊達と繋がり情報を集めて、君達の元に駆けつけたんだよ』
『姫に付けられてる魔道具も鍵があるんだよ。壊せないなら、鍵を見つけたらどうかな?』
鍵の存在を知ると、彼らの行動は早かった。
「ルーク、ラウラ様から聞いた商人共の居場所を、先に出た公爵様達に通達し、自分も当ってみます」
「私はライラ様を戻し、共に魔の森に向かいますわ。陛下は……」
「うむ、俺は伯爵の隠し部屋を当たろう」
「私はローザ様達に同行しましょう」
「まぁ、心強いですわ、レン様」
これでようやく、伯爵を引きずり下ろすことが出来る!
今までの罪を暴き、無駄に奴隷達を殺めたことを認めさせてやる。
ヤツの権威も、これで終わりだ!
覚悟しろ……!ロンデール伯!