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砂漠の狼と奴隷に落ちた公爵令嬢  作者: 紫宛
神聖王国と砂漠の国
43/54

第40話 魔道具と精霊とモフモフ


……


…………

「森の中には小屋があって、そこで奴隷の烙印を胸元に付けられましたの。

奴隷は、人間ではないのですって……

奴隷は家畜以下だと……」

小屋の中の出来事は、思い出すだけで辛かった。


涙が頬を伝った。

震えは次第に酷くなり、自身で抱き締めても止まらない。ローザ様が、私の手を取り握って下さる。

「……屈服させる為の拷問の数々、血が出ない日はなかった」

「腫れて開かなくなった瞳、喉が潰れ出なくなった声……」

「精霊にも、見放されたと思いましたわ」


……


…………


………………


『チッ!シアをそんな目に合わせた奴ら全員、同じ目に遭わせてやる……!』

レン兄様の声が響く。

『ルーカスの連れてる月精霊と私が連れてる月精霊は繋がってるんだよ』

『お前達の声は聞こえてる』


「レン様、私も手伝わせて下さいませね」

「勿論、俺も」

「私もです」


「いいえ、ダメです。行方は分かりませんわ」

「そんな事はないだろう、ジェラルド殿やライラ殿が血眼になって探しているからな」


いつの間にか、隣に移動してきた陛下が優しく親指で涙を拭ってくれる。ルーカス様も、ローザ様も傍に寄り添い……とても温かくて……涙が止まらなかった。


『シア……』

兄様の声が、私を包み込んでくれる。

私は、1人じゃない。

あの時は、1人だったけど……

いまは、1人じゃない……

みんなの声が、優しが、こんなにも胸を暖かくしてくれる。



大丈夫。



乗り越えられるわ。




あの時の誓いを、もう一度。


絶望を希望に

強く、気高く、そして、優しさを兼ね揃えし青薔薇を胸に……!


もう、後ろを振り返るのは止めよう。前を向いて、一緒に歩いてくれる方達が、こんなにも沢山いるのだから。

「もう、大丈夫ですわ」

ニッコリ笑い、皆さんの顔を見渡す。

俯いていた顔を上げ、見た目など関係ない。

中身が大切なのだと……。



その後、オアシスで、狼の陛下と出会い。

伯爵の仕打ち、全てを打ち明けた。


「伯爵の拷問の数々を証明する事はできますわ」

「この魔道具さえ破壊出来れば、精霊王より賜わった精霊」

「私の瞳に宿りし、真実を司る精霊を呼ぶ事が出来ますわ」


皆がシルフィアの右の瞳を覗き込むと、キラキラと煌めく光が見えた。精霊を解放出来れば、精霊王とも連絡が取れる。目覚めているのなら、何か情報を得られるかもしれない。自然界より生まれし精霊を束ねる存在なのだから。


お兄様の声がする。

『陛下、ルーカス様……そろそろ……』


時間になってしまった。

これ以上、陛下達を拘束する訳にはいかないわよね。

(でも……)

お願いしたら、許可して下さるかしら。



「陛下、ここから去る前にお願いしたい事が御座います」

「何だ?」

「……」

「頼みにくい事か?言ってみろ、無理なら無理と言う」

「……モフモフさせて下さいませんか?!」

食い気味に、前のめりに頼み込む彼女に、一瞬唖然としてしまった。

「………………は?」

長い沈黙の後、彼女の言葉を頭の中で繰り返す。

(モフモフ?)

「……ダメ、ですか?」

「いや、……モフモフ?」

「……」

「シア様は、陛下に銀狼になって頂きたいんだと思いますの……モフモフが大好きなんですのよ」

「ローザ様!」

「狼姿の陛下に一目惚れだそうですわ」

「…………ダメ……ですか?」

真っ赤になって俯き、上目遣いに見つめてきたらダメとは言えない。

「分かった」


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