第38話 思いの自覚
光の奔流にのまれた。
「……か、……いか」
「陛下!」
「つっ」
「大丈夫ですか?陛下」
「あ、ああ」
いつの間にか、光は収まり、この場には俺とルーカス、ローザ姫、月の精霊がいた。
「……れんは?」
この場に、レンがいない……。
「レン様には、向こう側に残って頂きました。戻れなくなりますから」
『ルーカス、早く離れないと……吸い取られます』
小さく、細い声が響いた。
月の精霊が、ルーカスに寄り添うように浮いている。彼女と視線が合うと、微笑まれる。
『あちらから、花の精の気配がします』
精霊は指を指し、俺達を促す。
真っ白い世界を、精霊が指す方向に歩いていく。すると、遠くに美しい青銀を見つけた。彼女が振り向く。
「!」
「へ……陛下」
驚いた表情で、こちらを見てくるシルフィアに俺は………感情の制御が出来なかった。
「何故言わなかった!」
「っ!?」
ずっと、我慢していたのだ……アシャラの事、俺を庇った事、シルフィアの事実。
聞きたかった……全て……
あの時に、本当は……
ルーカスは何も言わないが、ローザ姫が驚いている。月の精霊も真顔で何も言わない。ただ、ルーカスに寄り添っているだけだ。
「アシャラの時に、何故俺にシルフィアだと告げなかった!!?」
「俺は、そんなに頼りないか!」
「…………」
悲しそうな顔をして俯いた彼女に、俺は近づきながら身振り手振りで更に言い募る。
「あの日、助けられた恩を返す為なら、俺は…どんな手を使っても、お前を助けた!」
「俺が、どんな思いだったか分かるか?!」
「お前が追放されたと知った時!この国に、お前がいると分かった時!お前が、シルフィアだと知った時!」
「俺が!……どんな思いだったか……」
思いの丈をぶつけるように、更に口を開こうとした時、隣から止める声が響いた。
「陛下、その辺で……」
「っ!」
ギリッと奥歯を噛み締め、思い止まる。
彼女は静かに涙を流し、何度も謝っていた。
彼女の傍に膝をつき寄り添うのはローザ姫だ。
俺は自分がした事を後悔した。
泣かせたかった訳じゃない。
「怒ってる訳では無いんだ……ただ」
(心配だった……打ち明けて欲しかっただけだ……)
「すまない……」
「いいえ、いいえ!陛下が悪いんじゃありません!」
「打ち明けられなかったのは、私が弱いからですわ……」
「追放され、身分を失い……奴隷にされ、何も信じられなくなりました」
シルフィアは、静かに語っていく。
自身のみに起きた出来事を……その驚愕的な事実を。俺の知らない、オアシスで魔物に襲われる前の壮絶な体験を。
「陛下、ローザ様、ルーカス様、聞いて下さいますか?聞いても、私を嫌わないで下さいますか?」
涙ながらに懇願する彼女に、俺達は笑顔で返した。
(嫌うはずがない……こんなにも、愛しく思っているのに…)
俺はこの時、自分の気持ちをハッキリと自覚した。なのに素通りしてしまったせいで、彼女への思いを再び自覚するのに時間がかかってしまった。挙句、ルーカスに散々からかわれる事になった。これは、まだ少し先の話だがな。
「あの日、卒業パーティの日」
卒業パーティの日を、ゆっくりと思い起こす。辛い出来事を全て……




