第36話 尋問
すみません。
紫苑ですが、転んで骨折してしまった為……
更新が出来ずじまいでした。
滞ってしまいますが、投稿は続けますのでよろしくお願いします( ..)"
翌日、俺は謁見室にいた。
目の前には、シルフィアを奴隷として買ったロンデール伯爵がいる。
俺の隣にヴィムクが立っており
天幕の裏には、ミュゼット公爵と紅薔薇、リチャードが潜んでいる。
ルーカスとレンフォードはシルフィアの部屋で月魔法である、夢見の術を使っている。二人がかりでないと、魔道具の影響で術が上手く作用しないらしい。白薔薇は心配だからとシルフィアの傍を離れない……彼女の手を握り祈っている。
みな、昨日の出来事を乗り越えようと、必死に前に進んでいる。目を開け、耳を澄ませ、何も逃すまいと意気込んでいる。
だから今は、何か知っているであろうロンデール伯爵に尋問する事が、今後に繋がる信じて……
目の前に視線を移す。
ロンデール伯爵は、やましい事は何も無いというような顔をしている。
「それで、何か御用ですかな?陛下」
「お前ほどの者なら、聞かなくても分かるだろう」
「分からぬから、聞いておるのですよ」
何食わぬ顔で、平然と言い放つ。
「そうか」
俺は、ため息を一つ吐き、頭の中で聞きたい事を整理していく。ここにルーカスは居ない、人を平気で誑かす男に俺は……勝てるだろうか
「お前はシルフィアを知っているな?」
「勿論ですとも、彼の御方には国を救って下さった大恩がありますからな」
「そうだ、ならば、隣国で起きた事件も知っているか?」
「事件ですか?」
はて?と頭を悩ます伯爵は、嘘を言っているようには見えない。ここで、俺に嘘をつく意味も無いだろう。ならば、本当に知らないんだろう。
「シルフィアは、身分を剥奪され隣国を追放されている」
「な……なんと!」
慌てふためく伯爵を無視し、話を続ける。
「お前は最近、新しい奴隷を買ったそうだな?」
「ええ、買いましたが、それが何か?この国で奴隷は禁止されておりませんよ」
奴は、既に平然とした顔に戻っていた、変わり身が早いな。
「禁止してはいないが、奴隷の扱いによっては処罰の対象になる事は知っている筈だ」
「私が、酷い扱いをしていると言いたいのですかな?心外ですぞ陛下」
「そうは言っておらん」
「……だが、街の者達やお前の屋敷の使用人が俺の所に来たぞ」
「…………」
伯爵は、無言で俺を睨む。
「何をしているのか分からぬが、日毎に怪我や痣が増えていく……と」
「……陛下、先程のシルフィア様の話と、私の飼っている奴隷の話となんの関係があるのですかな?」
伯爵は、平静な顔を必死に取り繕っていた。
そして、シルフィアと奴隷との話の繋がりが分からぬのであろう。俺もシルフィアとアシャラが同一人物だという事には、気付かなかったのだから。
「まだ憶測なのだがな、お前の元にいる奴隷……シルフィア嬢ではないかと思ってな」
アシャラがシルフィアなのは伯爵には伝えず、まだ確定ではないと……仮説として話す。
「まさか!それは、有り得ませんよ」
有り得ない、と伯爵は言う。
「アシャラは、確かにセレスティナで買い付けた奴隷ではありますが」
「髪色、瞳、貴族としてのオーラが違い過ぎます」
それは、俺も思った。
美しい青銀の髪、透き通った翡翠の瞳、滑らかな白い肌……それら、全て失った彼女をシルフィアだと気付く者は、この国にいないだろう。この国のシルフィア嬢の印象は、気高き青き薔薇姫であり、あの姿では無いのだから。
どのような扱いを受ければ、あんな変わり果てた姿になるのか……彼女が目覚めたら聞かねばならんな。
「さらに言えば、精霊を寄せ付けぬアシャラがシルフィア様などと誰が思いましょう」
「そんな戯言を誰が言ったのですかな?」
この男は何も知らない。
ならば、誰から買ったのか……
どういう経緯でシルフィアの事を知ったのか……
洗いざらい吐き出してもらう!
天幕が微かに揺れている。
公爵と紅薔薇が、コソコソと言い合い、俺達の話を聞いていたのは知っている。
そして今は、伯爵と紅薔薇が怒りを顕に飛び出そうとしているのを、リチャードが必死に止めていた。
「お止め下さいませ、御二方、ここで騒ぎを起こせば、陛下に迷惑がかかります!」
「お願いですから!」
声を抑え、宥めながら止めてくれていた。