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砂漠の狼と奴隷に落ちた公爵令嬢  作者: 紫宛
神聖王国と砂漠の国
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第17話 お見舞い


ローゼスが、小屋に入るとアイナとマイナがアシャラ様にシーツを被せ、額にタオルを置いていた。

「アシャラ様の様子は?」

「熱が高く、息も荒いです。どうしましょう?アシャラ様もスィッタ様のように亡くなられたら…」

アイナが顔を俯かせながら、呟くように言い、マイナも、同じように顔を俯かせていた。


「でも、どうしてアシャラ様なのですか?旦那様は、どのような理由で付けた名前なのでしょうか?」

マイナもアイナも、分からないと言うようにローゼスを見やる。

「アシャラ様は10という意味があるのですよ。アシャラ様で、旦那様が迎えた奴隷は10人目ですから」

「………アシャラ様だけは、助けたいです。もう、誰かが死ぬ所など見たくない」

マイナが、ローゼスを見、アイナを見る。

3人の使用人は、俯き合いアシャラと名付けられたシルフィアを見た。


「もう直ぐ、ルーカス様が何か反応して下さるはずですから待ちましょう」

「アイナ、マイナ、交代でアシャラ様の看病お願いしますよ」

「「はい!」」


昼過ぎ、宮殿では宰相が急ぎ足でファルークの元へ向かっていた。

その手には手紙が握られており、血相を変え急ぎ足から走る様に執務室に駆け込んだ。


「ファルーク!!」

「おい、今は俺しか居ないから良いが…」

「そんな事は、どうでもいいです!!」

「どうでも良くは…」

「貴方が気にかけていた奴隷の娘が、倒れたそうですよ!」

ガタンッと音をたて立ち上がると、ルーカスの話を聞かず部屋を飛び出た。

ルーカスの声が後を追ってくる。

「医者を!連れて行きますから!それまで頼みますよ!」

走りながら狼に変じ、スピードを上げる。


『ハァハァ、ハッ』

全力で、ロンデールの屋敷に向かう。『構わないで』そう言った彼女の元に向かうのは躊躇ためらわれるが、それでも気になって仕方なかった。

こっそり様子を見に行く、周りの者から様子を聞く。例え付き纏いと言われても、止められなかった。

何故か理由は分からないが…ルーカスなら、分かるのだろうか。


「ハッハッハッ」

息が荒い。

それでも、全力で走ったお陰か、想像より早くロンデールの屋敷に着いた。

屋敷の前には、伯爵に古くから仕えている執事が立っていた。

執事が頭を下げる。

「まさか、貴方様までお越しになるとは思いませんでした」

『彼女は!』

「今はメイドが傍に着いております」

『医者は、ルーカスが後から連れてくる。彼女の元に案内しろ』

「畏まりました」


執事に案内された場所は、いつも彼女がいる小屋だった。

『具合を悪くしてる彼女を、いつまで小屋に置いとく気だ?早く部屋に連れて行け』

王は命令するが、彼は顔を俯かせるだけで言葉を発しない。

疑問を浮かべるが小屋に着いたので、中に入る。

メイドが2人、彼女の傍に膝をつき看病していた。

床に寝かしとくなどと、憤りを感じるが、ある物が目に入る。部屋には似つかわしくない杭があり、鎖が彼女の首に繋がっていた。

理由が、分かった。

この小屋から、連れ出せない理由が……

『悪かったな』

「いえ、貴方様が仰る事は真実ですので」


彼女の傍に近寄る。

メイドが俺に場所を譲り、顔を覗き込む。真っ赤に染まった彼女は、とても苦しそうだ。

額にあるタオルに触れると、熱かった。相当熱が高いようだ。


「このままでは、アシャラ様もスィッタ様のように……」

『そうならんように、俺達が力を貸すんだろう』

『奴隷とはいえ、人として扱えんようなら、奴隷保護法を可決せねばならんな』

「証拠さえ揃えば、それも可能ではありませんか?」

『ルーカスか、遅いぞ』

「これでも、かなり急いだのですよ」

ルーカスが来た時、太陽が沈み夕暮れ時を迎えていた。眼鏡を押し上げ、医者を中に通す。


『彼女の容態は?』

白髭を撫でながら、「ふむ」と悩んでるようだ。

「風邪でしょうな」

「風邪にしては、症状が重すぎませんか」

「恐らくは、栄養失調と体力。更には、極度の緊張が解かれた安心感が原因かと」

「先ずは部屋を暖かくし、布団も厚めの暖かいものが好ましいでしょう。食事は栄養のある消化の良いもの。本当は、ここから出せた方が良いのですがね……」


「この状態では無理でしょうな」と、医者は言った。

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