第16話 奴隷令嬢、風邪をひく
朝起きると、何か変な感じがした。
いつもは早く目が覚めるのに、今日は何故かボーッとする。
伯爵が小屋に来て鞭をとると、朝の拷問が始まった。
「なぜ!なぜ?!泣き叫ばない!赦しを乞わぬ!泣け!叫べぇ!」
ビシッバシィと、激しく音がする。ですが負けたくは、ありません。赦しを乞えば、早く終わるとしても。
私は、自分を取り戻した時決めたのです。自分に恥じぬ行動をすると。心は誇りある貴族であると。
伯爵に赦しを乞えば、私は誇りを失ってしまう…そんな気がするのです。
(ダメですわ、頭がボーッとしてきました)
反応が薄い私に伯爵は、吐き捨てるように言った。
「チッ、萎えたわ」
鞭を投げ捨てるように置き、私を所定の場所に繋げた。
「数日、屋敷を離れます。戻ってきたら、覚悟しておきなさい」
部屋を出ていく伯爵を見送り、私は床に倒れた。体が熱い…熱がある?
雨の中、ずっと立っていたのが問題だったのか…それとも栄養失調?かは、分からない。
今まで、徹底的に管理していた為、体調を崩した事など殆ど無かった。王妃教育を受けていた時も、武術訓練を受けていた時も、体調を崩した事などあまりなかったのに。
屋敷に戻った伯爵は、老齢な執事を捕まえ予定を確認する。
「旦那様、お戻りは4日後でよろしいでしょうか?」
「ああ。アシャラは死なん程度に餌を与えれば良い、あげすぎないように。鎖は常に繋げておけ、逃げられては困るからな」
「畏まりました」
老齢な執事は、恭しく頭を下げる。伯爵は、ドスドスと歩き外に出る。外には、既に馬車が止まっており、従者が御者台に乗っていた。
「待たせましたね」
伯爵が馬車に乗り、車体が沈む。
座席に座り窓を開け、使用人に最後の確認をした。
杖を車体に当て、『出せ』の合図をだす。
「行ってらっしゃいませ」
使用人達は、馬車が見えなくなるまで、頭を下げ続けた。
「さて、旦那様は4日程帰ってきません。その間にアシャラ様が、少しでも元気になって下されば良いのですが」
「私、様子を見に行ったきます」
1人のメイドが、一礼しその場を離れ小屋に向かう。
コンコン
「失礼します」
「アシャラ様……!!」
悲鳴に近い声を上げ、メイドが私に近寄る。
「どうなさったのですか!?」
駆け寄ったメイドが、私を助け起こし額に手をやる。
そして顔色を無くし、医者をと慌てていた。
「大丈夫ですから、落ち着いて」
「ですが!」
「伯爵が、許しはしないわ」
伯爵の名を出すと、ハッとして悲しそうな顔になる。
「ローゼス様を呼んで参ります。申し訳あり
ませんアシャラ様、本来ならベッドに寝かして差し上げたいのですが…」
その場に私を寝かし、謝る。
気にしないで、と私は使用人に笑ったのだった。
メイドは、屋敷を走り老執事を探した。玄関先には、既に居なく。名を呼びながら、走り続ける。
「どうしたのですか?」
「ローゼス様!!」
「アシャラ様の様子は、どうでしたか?」
「ローゼス様!大変なのです!アシャラ様が……!」
メイドは、老執事のローゼスに事情を説明した。理解したローゼスは、直ぐに指示を飛ばす。
「アイナは、他のメイドと共にシーツや布団を持ち小屋に向かいなさい」
「はい!」
「あなたは、氷と水を」
「分かりました!」
「マイナは、厨房に行き消化に良い物を作るようお願いしてきて下さい」
「はい」
「私は、ルーカス様に連絡して参ります。その後アシャラ様の所に向かいます」
老執事は、使用人室に向かった。上品な紙に筆を走らせると、封筒に入れ封をした。
「この手紙を、宰相ルーカス様に渡して来て下さい」
誰もいない空間に声をかけ、部屋を出ていく。誰もいなくなった部屋に、一瞬影が落ちると手紙は消えていた。
真に申し訳ありませんが、
更新時間を都合により変更します。
平日の更新時間を
8時から、18時に変更させて頂きました。
申し訳ありませんが、よろしくお願いします。