第14話 砂漠の国の王
少し長くなりました。
あの日、魔獣に襲われた少女を助けた後……
馬の軍団に奪われた。
「くそ!」
奴らは、少女の首にロープを巻き付けそのまま引きずってたんだ!
『……さよなら』
そう言った少女の顔は、絶望に染まり悲しげだった。戻った精霊に聞くと、彼女から発せられる魔力が不快だったそうだ。しかし、元々彼女から発せられる魔力ではないらしい。
あの少女は、どこに連れ去られたのだろうか?やはり、追えばよかった。
「……」
「……か、ファルーク陛下!」
「…っ、なんだ」
「全く、どうしたのですか?前に言っていた奴隷の少女が気になるのですか?」
「……」
「はぁ、調べますか?」
宰相は、溜め息をつき眼鏡を押し上げ聞いてくる。
「今のままでは、仕事になりません。むしろ邪魔です」
「すまん」
「あなたが女性に興味を持ったのは、これで2人目ですね。正直嬉しいですけどね。最近は、陛下は男が好きなのでは?と噂が出る始末でしたから」
「馬鹿を言うな、誰が男に興味を持つか!」
「噂だと申しているでしょう」
「それで、調べますか?」
「ああ、そうしてくれ」
宰相の言葉で、どっと疲れたな。
「畏まりました」
宰相が頭を下げ、執務室を出ていく。
あの少女の悲しげな顔が頭から離れない。
(くそ!仕事にならんな、剣を振ってくるか)
宰相や側近が調べてくれているが、中々見つからなかった。王都内だと思うのだが…なぜ見つからないのだろうか。
俺は、じっとしてられず、街に顔を出していた。その時、見たのだ。恰幅のいい男に連れられ歩く少女の姿を。
(あの少女は!?)
少女を見つけた俺は、狼に変化し後をつけた。男の顔に見覚えがある…ロンデール伯か
(よりによって、あの男か…)
あの男には、良くない噂があった。連れている奴隷が、頻繁に変わるそうだ。調べた所、彼の元に連れて来られた奴隷は全員亡くなっていると聞いた……が、ロンデール伯が何かをしてる証拠が出ない。証拠が無ければ、それ以上に調べる事も、追求する事も出来なかった。その為、先送りになった問題だった。
街の中、狼の姿で少女を追う。ロンデール伯は、警戒心が強く猜疑心も強い。距離を取り、細心の注意を払い追いかけた。街を歩く少女の首には、鎖が着けられまるで家畜の様な扱いで胸糞悪い。
宮殿に戻った俺は、宰相や側近に少女の事を伝え、伯爵の事を再度調べるよう命を下した。
コンコン
「失礼します。セレスティナ神聖王国、ミュゼット公爵より手紙が届いております」
兵士が一礼し入ってくる。
手紙の封蝋を見ると、確かに公爵からだった。しかし、公爵と面識がある訳では無い。国王からの手紙なら分かるが、なぜ?
封を切り、手紙を読みすすめる。
「!!」
宰相が怪訝な顔で見てくる。俺は、手振りで使用人に部屋から出るよう指示した。最後に兵士に人払いを頼んだ。そして、俺は頬杖をつきながら手紙に書かれた内容を話した。
「ミュゼット公爵令嬢が国外追放になり、現在行方不明だそうだ」
「なっ……あれほど有能な令嬢を追放したのですか?!」
「そうだ、そして、我が国に入った可能性がある…と」
「…………」
「……見つけたら、保護し連絡して欲しいそうだ」
「そうですか…」
宰相は、頭を抱える。当然だろう、あの日の彼女を知る者ならば、どれほど有能か分かるはずだ。
この時の俺はまだ、奴隷少女とシルフィア殿が同一人物だと思わなかった。
シルフィア殿と会ったのは、1年ほど前か…
この俺を前にしても、物怖じしなかった令嬢は彼女が初めてだった。
俺の顔は精悍で、黙っていると怖いと軍司令官のヴィムクにも言われた。
顔の事は、ヴィムクに言われたくないが……
国王目線、
長くなってしまった為、分けて投稿します。