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砂漠の狼と奴隷に落ちた公爵令嬢  作者: 紫宛
神聖王国と砂漠の国
14/54

第13話 絶望と決意

今回の話は、残酷な描写が出てきます。

今回の話で、残酷描写は終わりです。

暴行的発言は、まだ少し出てきますのでご了承ください。


連れてかれた場所は、異様な光景だった。屋敷から離された小屋の中は、様々な道具?が置かれ、壁や床は黒く塗り潰されていた。魔道ランプが四隅の壁にかかっていて下の方に鉄格子の通気口があった。


男はロンデール伯爵と呼ばれていた。伯爵は、私を椅子に座らせ縛った。

「さて、どんな責苦がよろしいですか?」

「火責め、水責め、虫責め、鞭打ち……」

「最初は選ばせてあげます。優しいでしょう?何が良いですか?」

「……!」

「私はね、あなたの苦痛に歪む顔が何よりの楽しみなんですよ」

「さぁ、選んで下さい。ふふふ」


私は鞭を選んだ、鞭なら慣れている。そう思ったのが間違いだった。伯爵が用意した鞭は…イバラ鞭だったから。体に当たる度に、トゲが体に刺さり引き裂き血が滴る。


別の日は水責めだった。たくさんの水を飲まされた。もう飲めないのに無理やり飲まされお腹を圧迫され吐き出しを繰り返し辛かった。血を吐き、全身を襲う激痛に耐えた。


虫責めは、甘い蜜を体に塗られ……虫に……

……火責めも受けた。

(なぜ、なぜ私がこのような目に……)

(……てやる、復讐してやる!)

(私を落とした神聖王国も!奴隷商人も!こいつも!)

(許さない!許さないわ!)


いつ終わるかも分からない責め苦が、毎日続いていた。

苦しくて、辛くて、悲しくて、世界の全てが、敵に回ったような、そんな感覚がした。

絶望に支配され、世の中の全てを拒絶した。


「ガァウ!ガウ」

心が絶望に染まりつつあった日、あの時の狼が、小屋に来るようになった。毎日では無いが、通気口から顔を覗かせ、『大丈夫か?』と言ってる気がした。

だけど、無視した。

無視してるのに、狼は「ガァウ、クゥーン」と鳴き続けていた。

そして、私は言ってしまった。

「来な……で!あなたも、同情……してる、だけ!私…に、構わ…いで!」

狼は、遅くまで鳴き続け傍に居ようとした。

それを、拒絶したのは私だ。絶望に支配され、優しい狼を拒絶した。


伯爵が外に出る時、連れ出された。首輪を付けられ、手は縛られ、足は鎖付きの枷を付けられた。伯爵の目を盗み、街の人が食べ物をくれたが拒否した。地面に捨てた。悲しそうな顔をする住民を無視し拒絶した。


狼の優しさに気づけなかった。街の人達や、屋敷の使用人でさえ、私に優しくしてくれたのに。私は、それを拒絶した。自分は不幸なのだと決めつけて、優しさを拒絶した。

狼は、あの日から来なくなった。

(傷つけてしまった……)

(あんなに優しかった狼を傷つけて、自分だけが辛いのだと勘違いして……)

(人は、誰でも苦しみや悲しみを抱えているというのに……私だけが不幸なんだと思い込んで…)

だから、……誰も助けてくれなくなる。

今みたいに……


雨が降っている。

全てを拒絶した私に、差し伸べてくれる手は、もうない。

(……狼や、皆さんに謝りたいですわ)

(でももう、何もかも遅いですわね)

私はいつも、後になって気づく。手遅れになって初めて気付く。

手を出し、雨をすくう。サラサラと落ちる雨が、私が拒絶した人達の涙のようだった。

(謝りたいではなくて、謝りますわ、絶対に)


(変わらなくては)

絶望を希望に。

怒りや悲しみに支配されないように。強く気高く、変わらなくては。

傷つけてしまった人達を、今後助けられるように。受けた優しさを返せるように。

今を生き、諦めない強さを持ち続けますわ。


青薔薇と呼ばれ慕われた、あの頃を思い出すのよ。たとえ奴隷になろうとも、心まで貧しくなってはいけない。

凛とした態度を心がけよう。

伯爵に、心で負けないように。


どんな責苦も耐えてみせましょう。

それが、

シルフィア・ロズ・ミュゼット公爵令嬢の矜持きょうじなのだから。


決意を新たにした時、雨が止んだ。空を見上げると虹がかかっていた。2つの虹が重なって見える。とても綺麗な光景だった。自然と笑顔が浮かぶ。


その笑顔を、周りの人達が優しく眺めていた。

次は再び国王目線です。


修正しました。

矜恃→矜持


同じ「きょうじ」と読むそうですが、意味が少し違ってくるそうです。


「矜持」は「自分に自信と誇り、プライドがあって自制心も持ち合わせているさま」


「矜恃」は「自分に自信と誇り、プライドがあって堂々とふるまっているさま」


ネットより抜粋。

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