魔法少女コス ゲット
「おかえりなさいませ。ご主人様!」
今日も元気にお客さんをお出迎えさ。いつものメンツなんでテンション上がらないんだよネ。
今日のお客さんは、鉄道オタクのテツ君、ゲームオタクのケン君、ネットオタクのコウ君だ。
「ねえ。ここでゲーム出来るようにしようよ。PSとか用意してさ。」
「そうね。みんながくつろげるスペースがあってもいいかな」
「じゃあ、僕、鉄道模型持って来るから走らせていい?」
「全部自己責任だよ。なるべく他のお客さんに迷惑かけないでネ」
「やったぁ!」
「ねえ、飲み物の注文もしてね」
「コウ君は何か希望あるの?」
「オレは、なにもない。ネットさえ繋がればそれでいい」
「ネットでなにを見てるの?」
「なんでもわかるよ。世の中のすべてが書かれてる」
「じゃあ、世の中に魔法とか使える人いる?」
ちょっと、意地悪してみた。この情報は私しか知らないはず。
「いるよ。今、時間魔法の使い手が都市伝説になってる」
ドキっ!
「まさか?ネットっていい加減だよな。嘘やデマばっかだよ。信じる方がバカを見る」
「そうでもないんだ。ある国のスパイが日本に魔道具を持ち込んでその魔道具が行方不明になってるって噂だよ。信じる信じないは勝手だけどさ」
(あの人、スパイだったの?なぜ、コウ君は当事者の私より詳しいのかなっ)
「魔法具ってどんな?」
「魔法の杖とその衣裳らしい」
「ええええ。衣裳まであるの?どんなだろ?」
「コレだよ!」
これってヤフオク!の画面じゃん。普通に売ってるのか?
違う意味でショックだ。
「バカな。売買してるじゃないか?10万円?微妙な値段だな。質の良いコスプレ服じゃないか?」
「買った。コウ君、落札して。お金はいくらでも出すわ!」
「ノンちゃん。こういうコスが好きなんだ。でもさ。サイズ書いてないけど痩せ型じゃないと着られないかもしれないよ」
おい!君。今、女子に対してなんて言ったかな!
私は、無言でピンクのマシンガンを構える。
タタタタッ
「ノンちゃん。撃っちゃダメ!」
「とにかく落として!絶対に。落とせなかったら撃つわよ」
オークション最終日は明日の夜。
「ケン君。明日の夜は長くなるからゲーム用意してね。朝までお店開けるよ!絶対に魔法具を手に入れるんだから。コウ君、お願いね」
「あのぉ。鉄道模型は?」
「勝手にしなさい!」
次の日、私が大きな液晶テレビを用意してケン君がゲームを持ってきた。テツ君も勝手にレールを敷き始めた。ゲームをやっている周りを鉄道模型が走ってる姿はなんかシュールだ。私はメイド服だし。なんのオフ会なんだよって思う。
ゲームは、2人対戦型ゲームとか、協力プレイが出来るゲームとか、ケン君のセレクトはさすがだ。周囲を走っている鉄道模型って気が散るんだけど。
鉄ちゃんが増えてる。単線から複線にしやがったのか。電車がすれ違ってるじゃないか。大事な電車を壊しても知らないよ。いつか誰かに踏まれるよ。
鉄ちゃんも含め、いつものメンツも来た。結構な人数になっちゃったけど、コウ君、頼んだよ。
既にコス服は20万円近くまで上がっている。
ラスト、5分で20万円の提示があった。
コウ君が20万千円。なるほど。相手を精神的に削る作戦なのか!
20万円5千円から一気に21万へ
コウ君は、落札1分前に21万千円を提示。
コウ君はどこまでも姑息な手法だ。
「おおおお!」ってみんなの歓声が飛ぶ。
一気に25万円に上げて来たからだ。相手は勝負に出たらしい。
コウ君、25万千円って。なんか相手に同情して来たぞ。この揺るがない意思がすごい。
26万円、27万円…40万円になった。
もう一時間以上戦ってるよ。相手は痺れたらしい。
「50万円」
「マジか!」「バカだ」「いい加減諦めろよ」
50万千円。コウ君って恐ろしい子。
やっと終わったと思いきや50万2千円。
相手がセコくなったぞ。
コウ君が勝負に出た。60万円だ。
「おおおおおおお」みんなが歓声をあげて祈る。
あと3分。あと2分。すごい長い時間だ。誰も一言も口を聞かない。鉄道模型だけがジーって動いてる。煩いな。もう。
あと1分。30秒。10秒。5、3、2、1。
「落ちたぁ!」「やったぁ!」
大歓声だ。みんなで大喜び。
こんな事で喜び合うってなんて平和なんだろう。
私はとっても嬉しいよ〜。