時間魔法で未来を
「おかえりなさいませ。ご主人様!」
今日のお客さんはPCオタクのユウ君だ。
メイドと話をする事よりPCをいじっている方が好きな変わった人だ。なぜ、お店に来るのかわからないんだけど。
そんなユウ君が、叫び声を挙げた。
「ああああ。秘蔵のハードディスクが!データが飛んだ!」
なにやら大変らしい。
「どうしたの?」
「大事なデータが消えてしまったんだ。一生の不覚」
とっても落ち込んでるよ。そんなに大事なものだったんだ。
「自慢じゃないけど、僕はね過去の競馬データを全て取ってるんだ。株式のデータもね。世の中の現象全てをデータ化して保存するのが目標さ」
「ねえ、それって君がデータ化しなくてもネットで調べれば済むんじゃないの?消えたデータと同じものがあるんじゃない?」
「ちちっ。わかってないなぁ。自分でデータ化するから意味があるんだよ。他人のデータを見る気にはなれないね。僕の友達でハッカーがいるけど。アレ犯罪だから」
妙に鼻につく人だね。まあPCオタクだし、大事な常連客だし、少し助けてあげるかなぁ。
「私が治したら、君のデータを見せてくれるかな?」
「ああ。いいよ。絶対に無理だから」
時間よ止まれ!ハードディスクを元に戻してって願う。ユウ君のショックが半端ないしちょっと可哀想だから。
ほんの数分前に戻すだけだし、よし。データが出てきた。
ん?この画像データは私じゃないか!大事なデータってもしかしてこっちか?
時間よ。戻れ。
PCオタクのユウ君は液晶の私の写真を見て驚く。
「ああ。戻っている。やったぁ」
「喜ぶのは、早いかな。状況次第じゃ私がPCごと破壊しちゃうよ」
「すみません。でも決して悪用してません。ネットに流してないし、エッチな画像もありません。本当です」
「しょうがない。ただ、バイトの子の写真は消して。本人の許可がないとダメよ。店の決まりでは一枚500円なんだからね。ちゃんと払ってね」
「はい。支払います」
「いつも来て頂いているから、怒ってないよ。ただ、お店の子に迷惑かけたくないのよ。わかってね。それと」
「それとなんですか?」
「もう一回、このPC借りるね。USBメモリも貸して!」
私はディスクトップの画面を私の写真に変えてから時間を止めた。
「お願い!PCのハードディスクを未来に」
よしよし、このくらいでストップ。データを見てみる。
半年先の未来のデータがあった。ヤッタネ。
USBに保存だよ。これで私は貧乏脱出。
時間を戻す前に、私の写真がディスクトップに映る現代のハードディスクの状態に戻さなきゃ。
「ありがと。お願い。これからもこのお店通ってね。あとメアド交換。私の写真ネットに流れない様にしたいのとPCの事、教えて欲しい。師匠、よろしくね」
「僕で良ければ、喜んで!」
まあ、ユウ君には今後もずっとデータを打ち込んでもらわなきゃだし、あとはこのデータを活かす事考えなきゃだよ。だれか、暇人いないかな。まあ、お店に来る人みんな暇人なんだけど。
都合よく馬券買ったり、株式で儲けてくれる信頼できる人って難しいかな?