メイド喫茶の経営者
「おかえりなさいませ!ご主人様」
今日も元気にお客様をお出迎え。私はメイド服が大好きなんです。だって可愛いから。そう、可愛いは正義ってマジ思う。
可愛い服着て、お客さんと楽しくお話してお金がもらえるってサイコーって思ってたんだ。
でも、違った。
世の中はそんなに甘くないよ!
このお店の経営者が適当な人で、私に全て任せていなくなっちゃったんだ。私がメイド喫茶の経営者なんだ!
はっきり言ってメイド喫茶は、儲からない。客単価が低い割に人件費が膨大にかかる。客層も絞られるし、私のお店のお客様は安く長く居座る人ばっかりなんだよ。
でも、お客さんもバイトの子も楽しくやってるから良いんだけど、経営者からするとダメダメだね。
みんなの楽園をなんとか守りたいよぉ。って訳で私は貧乏な訳よ。
で〜も大丈夫。
私の生活は、みんなの援助から成り立っている。お客さんからの食料の差し入れとか、バイトの子からリサイクル品を貰ったり、お金は高熱費とかお店に必要なもので消えちゃうんだ。
私はいつもの様にトレーナーでメイド服を選択して、開店準備をしていたら、ひとりの男性が入って来た。
「すみません。未だ開店前ですか?」
「そうですけど、せっかくですからすぐ準備しますね」
いそいそ。エプロンよーし。急いでカチューシャをして
「おかえりなさいませ!ご主人様」
あっ。慌てたらカチューシャが外れちゃった。
そのお客さんが拾ってくれて、私の頭にカチューシャをしてくれた。超恥ずかしいぞ!顔が真っ赤になった。
「君は楽しくて、暖かい感じのするコだね」
「ありがとうです。ご主人様」
「君ひとりかい?メイドのバイトなのに色々やるんだね」
「ひょんなことから私が経営者になっちゃって」
「それは大変だね。どう経営上手くいってる?」
「全然ダメです。私の人件費が出ないんです。いつ夜逃げしようかなって具合です」
「随分、赤裸々に話すね」
「このお店は、何でもありなのです。私は経営の素人ですし。お客さんもバイトの子も楽しい仲間たちです。お金儲けが目的じゃなく、ココが楽園であってほしいって願っているだけなんですよ」
「願いかぁ。いいね。うん」
なにやら考え込んでしまったぞ。注文くらいしてくれるよね。まだ、お水も何も用意していないけど!
「丁度いい。これを君に預けるから好きに使って欲しい」
あのね。注文して欲しいな。私の気持ちはさておきご主人様がバックの中から箱を出した。
「え?笛?」
「違うよ。願いが叶う魔法のスティックさ」
なにこの幼女しか喜ばない様な恥ずかしいスティックは!
可愛いのは好きだけど、対象年齢がNGだよ。魔法少女に憧れたのはいつの日だったんだろう。
「願いですかぁ。じゃあ、お金が欲しい。エイ!」
出てこない。当たり前かぁ。
「君はそれほどお金に執着心が無いんだよね。もっと心から願わないと願いは叶えられないよ。願いってそういうものだろ」
「確かにその通りですネ。」
「そのスティックは大事にしてくれたまえ。自由に使って良いから、失くしたり捨てたりしないで」
「私の生活はみんなの好意で成り立っています。人からの好意は大切にします」
「じゃあ、頼んだよ。お金置いておくね。ちょっと忙しいものでね。また、いつか来るよ」
「いってらっしゃいませ。ご主人様」
結局、注文しなかったよ。