第50話 カロンとレオナ
「よぉーっしお前ら、今回はご苦労だった! 作戦は全て滞りなく完了、100点満点の大成功だ。今日のコレは俺の気持ちだから、遠慮せずジャンジャン食えよ! つーわけで乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」
というわけで、予想通りというか何というか、打ち上げである。
なお本日、あの一斉摘発&ベアード捕縛から3日後となっております。
レイザーが音頭を取って始まったこの宴会の場。今回の『薬局』壊滅とベアード捕縛、その他諸々をお祝いするために設けられているわけだが……いや、毎度のことながら圧倒される。
何にって? 用意された宴会のスケールにだよ。
ここで豆知識なんだが、ヤクザって基本見栄っ張りな人が多い。
そして、それがよく見られるのが……食事の時であるそうだ。
大事な客人をもてなす際に、超のつく高級店でのディナーを用意する……なんてのはむしろかわいいもの。
買い物する時に『ここからここまで全部』とか平然とやるし、差し入れで持ってくる弁当が、1個数千円、数万円もするような、見たことも聞いたこともないような品だったりする。レストランやクラブなんかを貸し切りにするとかしょっちゅうだし、テーブルいっぱいの、明らかに食べきれないだろコレ、って量の料理を並べたりもするそうだ。
さすがに実際に見たこはないが、ドキュメンタリーでやっていた。
そして今、俺は実際にその場面を目の当たりにしている。この打ち上げの席で。
ここは、『ディアンド』でも有数の高級レストランである。
現在ここはうちの貸し切りになっていて、今回の作戦に絡んだ――最後の一斉摘発とか色々な雑務も含む――組員たち全員呼んで、テーブルいっぱいに料理が並んでいる。
もっとも、参加している組員もそれなりの人数だから、料理が無駄になったりとかすることはないだろう。普通に全部食べ切ると思われる。
そもそもレイザー自身、基本的に食べ物を粗末にするのは嫌いだしな。
まあ、それはわかっていても……高級料理がこれでもかってくらいにずらっと並んでいるこの光景は圧巻の一言だ。しかも、組の息がかかってるからって……無理言って『宴会仕様』にしてあるもんだから、ある種カオスな感じになってるし。
え、『宴会仕様』の意味がわからないって?
いや、ほら……高級なレストランとかってさ、1皿の量が少ないこと多いだろ?
しかも、飾りつけにもこだわってて……皿の空いてる、余白? 的な部分に、ソースで模様描いてたりするし、何かハーブとか調味料とか組み合わせて造形美術作ってたりするし。
いや、それはそれで見事なもんなのはわかるし、舌だけでなく目にも美味しいってことで、それ込みで高評価になるんだろうな、ってのはわかるけどさ。ぶっちゃけ、こういう『宴』丸出しの場でそういうのって余計でしかないわけよ。お行儀よく会食、じゃあるまいし。
なので、大衆食堂よろしくがっつけるような盛り付けにしてもらってるわけだ。
具体的には、大皿を使ってどっさり料理をそこに盛ったりとか、そういう感じ。
普通なら10㎝四方くらいのが皿にぽつんと乗ってるような扱いであろうステーキも、今日は大皿に山盛りでドカッとテーブルに置かれている。
普段はつまめるような大きさのグラスでちびちび飲むんであろう高級酒も、今日はジョッキで一気飲みしてる者があちこちに居る。
高級店で、上手い料理を、マナーとか考えずに存分に、貸し切りの中食べる。
さぞ気持ちいだろう。というか、皆気持ちよく食って飲んで騒いでるな、実際に。
何だか、派手さばっかりであまり褒められた金の使い方じゃない気もするけど、たまにはこういうのもいいだろう。店にしても、踏み倒すわけでもなしに、貸し切り代まで込みでがっつり支払ってくれる上客扱いだから、その意味では嬉しいだろうし。……厨房は修羅場っぽいが。
働いた組員たちをねぎらうのに効果的でもあるからなあ。まあ、たまにならこういう豪遊したって、バチは当たるまい。
そんなわけで、俺も打ち上げの高級料理その他、遠慮なく楽しんでます。
料理名は忘れた……というかいちいち気にしてないが、美味そうだと思ったもの、実際に美味かったもの、気兼ねなく取り皿にとってがつがつと。時々ドリンクにも手を伸ばす。
周囲を見ると、まあ大体他の連中もそんな感じだ。
俺以上に好きなように食べているカロンは、既に結構な大きさの大皿をいくつも空にして重ねている。……記憶が正しければ、多分全部肉料理だな。スプーンでかっ込んでた。
時々、横にジョッキで置いている色んなドリンクをごくごく飲んで……ああ、今のはエールだな。
何、酒飲んでるのかって? 未成年なのに?
ああ、この世界に二十歳以下云々なんて法律はないからな……国や地方によっては禁止してるところもあるらしいが、基本、いくつから飲もうと自由だ。
ただし、それで気分悪くなったり、最悪死んでも完全に自己責任だが。
ちなみに、カロン同様俺も、ちびちびとではあるが飲んでる。
幸いなことに、それで気持ち悪くなってどうこう、ってことは今までなったことはない。
一方、カロンの反対側に座っているデモルは、比較的行儀よく、テーブルマナーにも気を使って食べてるようだ。食器がぶつかってカチャカチャ音が鳴ったりもしないし、そこだけ切り取れば普通に高級レストランの食事風景になる気がする。
それに加えて……何というか、周囲への気配りも忘れない男だな。相変わらずデモルは。
空いた皿とかグラスを、タイミングを見計らって店員に出して返したり、新しい料理が来ると、取り皿にとって『どうぞ、マスター』ってな感じで寄こしてくれたりもする。
いや、助かるけど。的確に俺の好みの料理とか選んでくれるし。よく見てるわホント。
向こうのテーブルでは、カロンと同じように好きなように飲み食いしてるエムロードと、デモルほどじゃないが割かし行儀よく食べてるルゥナがいる。
そして……種族柄というか、好みが出てるのかね?
エムロードの周りは、空になった酒瓶……だけでなく、酒樽っぽいのまで転がってる。ドワーフだから、やっぱり酒好きなんだな。
それに対して、ルゥナはあんまり酒は飲んでないようだが……手を付けてるのはほとんど魚料理ばっかりだな。これもセイレーンの好みって奴だろうか。
ふと俺と目が合うと、『お疲れ』とでも言うように、少し笑って軽くグラスを掲げて来た。
こっちも同じように返しておく。
あ、エムロードがその辺の酔っぱらい連中に絡みに行った。まあ、楽しそうだから問題ないが。
そして……ゴウライの姿が見えないが、これはむしろいつものことだ。
あいつ、戦闘以外で騒がしいの嫌いだからな。飲み会とかは、よっぽど大事なもんじゃない限り……最初は参加して飲み食いするものの、こうして知らない間にいなくなる。
レイザーとかもそのあたり知ってて容認してるので、何も俺たちから言うこともないけど。
そのレイザーは、幹部とは思えないフットワークの軽さで、あちこちの酔っぱらい組員集団の所に突撃してげらげら笑って騒いで飲んで……って感じだ。ホントに気のいい兄貴分って感じだよなあ、あの人。
それとは対照的に、俺たちの近くのテーブルで静かに飲んでるソラヴィアも……それでもまあ、この宴会を彼女なりに楽しんでいるのは、見ていてわかる。
普通の人、というか他の組員はわからないかもだが、俺らは付き合いも長いし、わかる。
そんな感じの打ち上げは夜遅くまで続き……最終的に、酔いつぶれたメンバー多数で、無事なメンバーで分担して持って帰ることになった。
幸いにして、俺たちは誰も酔いつぶれたりはしなかったが。
エムロードとカロン、どっちもビンで数十本、樽すら1個以上飲んで空けてたっぽいんだが……足元がふらついてる様子すらない。頑丈な肝臓してんなホント。
後はもうこのまま、『拠点』に戻ってはい解散、それぞれの部屋に戻ってはい終わり、って感じになるだろうと、その時は思っていたんだが……
いや、実際そうなったんだが、一部、予想外なところが待っていたというか。
俺らが、自分達が寝起きしている――俺の幹部候補生部屋に戻ってきて、後はもう、そのまま各自の部屋に戻って寝るだけだな、と思ってたところに……
「お……お帰りなさいませ! カロン様、アイビス様、デモル様!」
「レオナちゃん、順番おかしいわよ。気持ちはわからなくもないけど、ここは誰の部屋で、今並べた中で一番偉いのは誰?」
「あっ! す、すみません……」
ドアを開けた瞬間に、ちょっとたとたどしくも、精一杯丁寧に出迎えようとしてくれるレオナに、後方から後輩を指導するかのように要点を指摘しているアリシア。
なお……レオナが身にまとっているのは、孤児時代の粗末を通り越して不潔でボロボロの服ではなく、簡単な作りだが、彼女自身の素材の良さも相まってかわいらしく見える使用人服だ。うちの拠点の備品である。
何でそれをレオナが着て……というか、何でレオナがここに居て、『お帰りなさいませ』なんて言って俺らを出迎えているのかと言えば……
話は、2日前に遡る。
☆☆☆
今更ではあるが、今回の一連の騒動の顛末を簡潔に説明しよう。
宴会の冒頭でレイザーが言った通り、今回の作戦はすべて成功している。
つまり、向こうの目論見は全て叩き潰した上で、こちらは最大の戦果を挙げたということだ。
ベアードとその手下たちがやっていた『薬局』は、販路ごと撲滅に成功。いきなり供給を立たれた常用者たちが騒ぎ出すかもしれないが、その辺は仕方あるまい。コラテラルダメージだ。
加えて、今回ベアードが俺とルゥナをはめるつもりで用意していた、あいつ独自のルートも、芋づる式にほとんど全て没収というか、抑えた。
管理役が変わっただけなので、問題なく今後も運用できるだろう。
むしろ、レイザーが管理するんだから……今までよりも効率的に。
押収した物資や書類は、レイザーとその部下たちが整理している。
書類は有用そうなのを選別して、中身、あるいはそれそのものを有効利用。
物資はこっちでそのまま利用するか、あるいは売却して金に換える。ただし、薬物系だけは、組の掟でご法度のそれを利用するわけもなく、さっさと処分するそうだ。
そして、ベアードとその手下たちは、事情聴取した後で……『処分』するそうだ。
まあ、順当な対応だろう。連中、生かしておいても害にしかならないからな。
特に親玉のベアードは、一回やらかして絶縁食らって、その上でまた弓引いてきたわけだから、そりゃ情状酌量の余地もないか。
最後に、戦利品とも言うべき、ベアードから剥ぎ取ったルート各種についてだが……さっきチラッといった通り、基本的にレイザーとその部下たちが接収して今後利用していくことになった。
が、既に俺やルゥナのシノギのルートと連携して起動させ、上手いこといっているものに関しては……そのまま俺たちで使っちゃっていいそうだ。太っ腹。
また収入が増えるな。いいことだ。
さて、ざっくりとしたもんだが、事態の顛末はこんなもんだ。
が……それとは別に、今回の一件とは関係なくもないというか……ベアード自身はそんなに意識してなかったんだろうが、結果的に俺らとしては関係していた部分に、1つ動きがあった。
まあ、ぶっちゃけて言うとレオナのことなんだが。
あの時、レオナは引き続きベアードから仕事を時々もらって働いてた立場だったんだが……俺らが動き出したことで、ベアードが勝てないと悟って夜逃げを図った際、口封じのために殺されるところだった。
それも、教会のシスターや、同じ孤児グループのメンバーたちも、根こそぎだ。教会に火をつけて、事故に見せかけて皆殺しにしようとしていた。
正確には、焼かれて殺されそうになっていたのは、レオナ以外の孤児たちと教会のシスターだけで……レオナは、別な場所で殺されそうになったのを自力で逃げ出した後、仲間たちを助けるために単身、燃える教会の中に飛び込んでいった。
しかし、力及ばずそのまま死ぬところだったのを、カロンと、俺とルゥナの連携プレーで救出した……ってのが、彼女達に関する顛末だ。
レオナたちは、俺と関わりがあるってことでベアードがマークしていたポイントの1つだ。念のため、なるべく気にかけるようにしといたのが上手く作用した、って感じかな。
そんなわけで、どうにか誰も死なないうちに救出完了。子供たちはもちろん、結構全身ケガしてたレオナも、数時間ほどで無事に目を覚ました。
体の傷は、俺がサービスで治しておいたし。治癒魔法で。
レオナが目覚めた瞬間は、孤児たち皆泣いて喜んでたっけな。無事でよかったって。
ホント、皆無事でよかったねってことで……彼女達は元々、奇妙な偶然やら何やらがきっかけで知り合った仲だし、ベアードのシノギに協力していたわけでもない。間接的にはともかく。
こないだの一件もこれ以上責めるつもりはないし、体の調子が戻ったら解放、ってことで終わりかな……と、思っていたんだが。
そうせずに、また別な展開というか申し出を持ってきたのは……他ならぬ、カロンだった。
レオナが目覚めてから……そうだな、ちょうど半日くらい経った後のことだ。
「引き取る? レオナを?」
「はい。できれば、そのグループの孤児たちも……何かの形で、と思ってるっす」
部屋に戻ってから、カロンが切り出してきたのは、そんな話だった。
傷も治り、もうすっかり元気になったレオナ。彼女はこの後、問題なければ元通り孤児グループに戻って、今まで通りの暮らしをしていくことになる……という見込みだった。
本人もそう言ってたからな、俺らにこれ以上迷惑かけられない、って。
俺としては、まあどちらかと言えば、他人と思えるような仲ではないとはいえ……引き留める理由があるわけでもない。まあ、見舞金くらいは渡してもいいかな、とか思ってたんだが……どうやらカロンは違ったようだ。
今言っていた通り、『レオナを引き取りたい』と言って来た。可能なら、彼女の所属している……というか、彼女がリーダー的立ち位置にいる、孤児のグループごと。
「グループごと、ってのは……単にレオナのおまけか何かか?」
「まあ、当たらずとも遠からず……っすね。あいつら、スラムに住んでるだけあって生き延びる能力は高そうっすけど、さすがにいきなりレオナがいなくなっても平気かって言われると微妙だと思うし……俺のわがままで引き抜くわけっすから、そのくらいはしてやりたくて。話してみた感じ、いい意味で生き汚い感じはあるにせよ、わりといい奴ばっかだったっすよ」
その辺は俺も、軽く調べてみたので知ってる。
レオナのいる孤児グループ……特にチーム名とかは無いようだが、そこの孤児たちは、日銭を得るために、あらゆる手段・場面で精力的に働いている。
それも、方針なのか、なるべく法に触れない……というか、他人に迷惑をかけないやり方で。
他の孤児や浮浪者だとよくやるような、盗みを働いたり、スラムに迷い込んだ人を襲ったりということはせず、靴磨きに荷物運びなんかの、日雇い程度の雑用を見つけてこなし……時には物乞いなんかもしたりするようだが、基本的に『自分の力で』金を稼ぐ。
まあ、過去にどうしようもなくなって、違法行為に手を出したことがないわけじゃないようだが……概ね、信頼できる連中だと思う。『比較的』と頭につけた方がいいかもしれんが。
……ベアードの紹介でやってた違法行為に関しては……まあ、この際目を瞑ろう。積極的にかかわってたわけじゃないし、これも『必要に駆られて』だ。最近じゃ、グループの人数が増えて、食べ物の確保一つとっても大変だったようだから。
「確かに、完全にホワイトとは言えないですが……こちらがきちんと誠意をもって接し、かつ生活するに困らないだけの余裕が彼ら自身にあれば、わざわざ弓を引くようなことはないでしょう」
と、デモルからも同意する旨の発言。あまり心配はしなくてよさそうだ。
少なくとも、彼らが極端に生活に困って……俺らがそれを冷たく突き放したり、そういう対応をしない限りは、それこそ別に引き取らなくても大丈夫そうではある。
まあ、引き取るのは彼らが大丈夫かそうでないかではなく、カロンの意見としてなんだが。
そのカロンの、おまけではない方の希望……レオナを引き取る、って方の理由がまだだな。別にこれといって反対する理由もないが……何でカロンはこんなことを言いだしたんだろうか?
そう聞いたら、
「ぶっちゃけて言えば……気に入ったからっすね」
「気に入ったって……レオナが?」
「はい」
「えっと……それは、どういう意味でだ? ひょっとして……女として?」
「いや、わかんないっす」
おい。
ちょっと冗談交じりで(当たってたらどうすっかな、とも思いつつ)聞いてみたら、帰ってきたのは……ちょっと予想もしなかった返答だった。どういう意味だそれ?
「んー、まあ、一番に浮かぶのは……度胸というか、漢気というか、そういうのがあるとこっすか。仲間のために、危ない橋を渡って日銭を稼いだり、死ぬかもしれないのに、火がついて燃える建物の中に、仲間を助けるために飛び込んだり……今日び中々いないっすよ、そんな根性のある奴」
それは確かに。
レイザーも言ってたな。『見どころある』って。女だけど漢気があるって。
「前、兄貴を的にかけようとしたのはまあ……思う所はないじゃないにしても、アレは一応、きちんと決着ついてますし、兄貴が気にしないって言ってるもんを俺が蒸し返すのも筋が通ってないっす。だから俺、レオナのことは……純粋に評価してるんすよ、見どころあるって。俺自身まだまだ若輩だから、偉そうなことは言えないっすけど」
そんな風に笑って言うカロン。心なしか……話してる最中、なんだか楽しそうに見える。
「それが理由か? つまりは……組員として迎え入れたいと?」
「あー、後は……兄貴がさっきちらっと言ってたのも、なくはないかもっすね」
「? マスターがさっき、というと……女として云々、ですか?」
「自分でもいまいちうまく言えないんすけど……それもあるかもしれないっす。きっかけはとにかく、助けた時に『このまま別れるのは惜しい』って思ったことですし……でも確かに、他の雌、ないし女とはちょっと違う目で見てる気がするかな、ってのは自覚あるっす。つっても自分経験ないんで、コレが恋愛感情なのか、単なる情欲なのかは分かんないっす。でもまあ、このまま逃がすには惜しいというか、そばに置いときたいというか、ぶっちゃけ気に入ったのは確かっすね」
「お前、雌って……つーか、お前意外と情熱的というか、度胸あるよな。はっきり物言うし」
「そうっすかね? 思いついたことそのまんま言ってるだけなんすけど」
「そうだよ」
特にお前…………横に本人がいる状況で恥ずかしげもなくそういうこと言えるあたりがよ。
「あ、あぅ、あうあぅ……!」
ほら見ろ、レオナ真っ赤になって何も言えなくなってんだろ。
つか、こういうのってまずは内々に俺らの間でだけ話して調整したりすんじゃねーのかよ。
「いや、実際後は兄貴たちだけだったんで……レオナには真っ先に話しましたし、若頭にもこないだ、世間話がてら許可貰ってたんすよ」
「そうなのかよ……妙なところで手の早ぇ……」
「いや、偶然兄貴もデモルっちも仕事で出てたタイミングだったんで。ちなみに若頭は『おぅ、いいぞいいぞ。責任もって面倒見れるなら構うこたねぇ、じゃんじゃん囲え』って」
「囲……お前それ意味わかって使ってんのか」
いや、確かに単に、部下とかとして手元に置いとくだけでも『囲う』って言い方するけどよ……この場合ってレイザーの言い方、明らかに……
レオナ自身も、思い当たる知識があるからか、顔赤いままぷるぷる震えてるし。
……まあ、そのへんの調整?は今後、お前らできちんとやってくれ。
「! じゃあ、いいんすかこいつ貰っても!?」
「も、貰っ!?」
「わーったわーった。いいから、責任もってちゃんと面倒見ろよ」
字面だけ見ると、完全に捨て猫拾ったりペット飼う際のやり取りである。種族考えなければ状況は割と近いが。
「あざっす! あーっと、当面は兄貴とアリシアの姐さんを手本にさせてもらうつもりなんで、そのへんよろしくお願いします」
「あっそう。んじゃ折角だし、教育係ももうアリシアに頼んどくか……部屋どうするよ? まだ余ってる部屋あるし、同じでいいな? それと、グループの他のガキ共は……ちょうど今回の一件でシノギが拡大して人手があちこち要るから、そのへん手伝わせるか」
「え、あ……ありがとうございます! そ、その……い、一生懸命頑張ります!」
とまあ、こんな感じで、レオナは『ヘルアンドヘブン』の準構成員兼……必然というべきか、カロンの女として半ば扱われるようになったわけである。
実際はまだ、家事手伝い見習いみたいな形の仕事しかしてないわけだが。
部屋は同じ(俺の幹部候補生部屋)とは言え、寝室とか普通に別だし。
完全に実情より噂が先行してるが……まあ、世の中そんなもんだよな。俺とアリシアの時も、ちょうどそんな感じだった覚えあるし。気にしても仕方ない、そのうち落ち着くだろ。
……それにレオナ自身、まんざらでもなさそうだしな。




