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テンゴク  作者: 和尚
第2章 初めてのシノギ
33/54

外伝14.5話 根も葉もない?噂

いきなりですが番外編になります。

唐突に思いついて書きたくなったのと、ちょうど章もひと区切りなのでいいかなと思って書きました。


時系列としては、アイビス達がダンジョンに挑むちょっと前、シノギの話が出始めた頃です。どうぞ。



今日は俺たちは、ソラヴィアの手伝いで少々遠出をしていた。


内容は……まあ、いつもどおりとしか言いようがないので省くが、普通にカチコミである。

ソラヴィアの仕事の手伝いとなると、大体はそういう感じだ。仕事が9割9分荒事なので。


戦果は上々。敵も大して強くなかったし、特に手こずるような仕事でもなかった。

ただ、『1人も逃さず全滅させる必要がある』ってことと、『探して回収すべきものがある』ってことで、見張りとかで人手がいるから、俺たちが呼ばれた、というわけだったらしい。


で、今言った通りお仕事は完遂。けど時間ももう遅かったんで、今日は現地で適当に宿を取って休むことにしたわけだが……不都合なことに、部屋が1つしか空いていなかった。


幸いにもそれが大部屋だったので、まあ仕方ない、とあきらめて、俺ら4人ともその部屋に泊まることにしたのである。




で、その大部屋で……俺たち3人は今、甲斐甲斐しくソラヴィアの世話を焼いている。


具体的に言うと……なんか、全体的に小間使いみたいな感じ。


デモルは、今回の仕事で手に入れた書類やら何やらの整理をして、内容をまとめたり、物品を目録に起こしたりしている。

そこそこ大きめの半グレの組織を潰したので、実入りも多かった。金目のものはもちろん、武器とかも色々押収したので、しばらく時間かかりそうである。


カロンは、さっき買い出しから戻ってきて、料理――夜食を作っている。下積みの中で色々と経験済みなので、俺やデモルほどじゃないが、レパートリーは割と多い。

炎……もとい、熱を操る適正上、熱が絡む内容の調理が得意だ。焼肉とか、特に。


そして俺は、ベッドにうつぶせに寝るソラヴィアに、マッサージをしながら治癒魔法をかけている。後、簡単な整体みたいなことも。

持ってきておいた、治癒効果のあるポーション(特注)をマッサージオイル代わりにして、より効果が大きく、早く出るように。もう何度もやってるし、手慣れたもんだ。


これらは、雑用がやるような仕事ばかりかもしれないが、別に苦ではない。


いつものことだ、っていう以上に……俺たちにしてみれば、姉貴分であり、さんざん世話になってきたソラヴィアのためなら、これくらい苦でもなんでもない。何だったら、役に立ってるってことで楽しい、と感じたりもするし、逆に今更他の連中に任せたくないというか。


……ひょっとしたら、主君のために喜んで命を懸ける武士とか、忠義の騎士とかは、こういう気持ちなのかもしれない……なんて思うのは大げさだろうか。


そして、その忠義?の行先であるソラヴィアはというと、さっきも言ったが、今、ベッドの上でうつぶせに寝転がって、俺の治癒マッサージを受けている。


…………全裸で。


……風呂から上がってまっすぐここに来たからで、体拭いてそのまま『じゃあ、頼む』つってベッドに横になって……で、今に至る。

下着一枚つけておらず、タオル巻いてもいないもんだから、俺の目の前には、一糸まとわぬ裸体が、文字通り転がっているわけだ。


本人に言わせると、『お前たちのような子供相手に恥ずかしがってどうする』とのことで、この人は俺らを前にして、服を脱いだり、着替えたりするようなことに、微塵もためらいがない。


……この言葉を初めて聞いたのは、俺たちがまだ、見習いとして組に入ったばかりの頃。

今回みたいな遠征カチコミで行った先の宿屋で、全員で一緒に風呂に入った時だ。


まあ、あの頃なら……わかる。中身アラサーの俺はともかく、体はまだ9歳だし。


でも一応、もう俺ら、13歳なんですがね。地球基準で考えれば、そりゃもう性に興味津々になってくる年頃なんですが。正直、そろそろ羞恥心持ってほしいな、と思うんですが。


ただまあ、それでも俺たちが彼女に欲情しない――全くしないわけじゃないが、我慢できる――のは、それ以上に彼女を、姉貴分として、恩人として敬服している部分が強いからだ。


……変な話だが、こうして彼女の裸体を前にしていることで、余計にそういう気持ちが強く引き起こされたりする。


荒事の世界で生きてきているとは思えない、きめ細やかく、すべすべで柔らかな肌。

無駄な肉のついていない、見る者を虜にすること間違いない、女性らしく魅惑的な体つき。


…………その全身に、無数に刻まれた……確かに荒事の中に生きて来たのだと示すような、おびただしい数の、大小の傷跡を前にして。


斬られたような傷や、刺されたような傷、ひっかかれたような傷、弓か何かで射られたような傷……中には、えぐれたような傷や、どうやってできたのかわからない傷まで、様々ある。


普段彼女は、この傷跡を隠すため、全身を覆い隠すような長袖長ズボンの服ばかり着ている。

部屋着とかならともかく、外では夏だろうと半袖を着ている姿は見たことがないし、スカートなんて持ってもいないだろう。動きにくくてそもそも嫌いらしいから。


だから、その時まで気づかなかった。


彼女自身は別に、見られても気にしないらしいが……確実に傷だらけの姿は目立つし、人の記憶に残る。荒事や暗殺に動くことの多い彼女にとって、それは困るらしいので、隠しているそうだ。


これらがなければ、どこぞの高貴なお嬢様と言われても信じられたのであろう美貌は……何というか、うまく言えないが……凄絶なものになっていた。

醜い、などと言うつもりはないが……美しい、という表現をしていいのかも悩ましい。


初めてコレを目にしたのも、さっき言った遠征の、入浴の時だった。


俺ら3人が入ってたところに、当然のように全裸で、タオルで隠したりもせず入ってきたソラヴィアに、顔を赤くして振り向いて……全身の傷跡にぎょっとして。


その瞬間……ほんの一瞬、ソラヴィアが浮かべた、ちょっと寂しそうな、悲しそうな顔。

今でも、よく覚えている。


あの時は……羞恥も欲情も何もかも通り越して、罪悪感が出てきたっけな。


直後に、折角の風呂で湿っぽいのはやめろってぶん殴られた上に、ソラヴィアが持ち込んだ酒を飲まされて……その日はそのまま、ふらふらで寝床に戻って死んだように眠ったっけ。


その印象やら何やらが残ってるからかは知らないが、それ依頼、俺たちはこうして……彼女の裸体を前にしても、同時に目に入る無数の傷跡から、彼女の過ごしてきた闘いの日々やら何やらが思い起こされて、盛るより先に敬う、みたいな感じになっている。


そんな俺らを彼女も信頼して、こうして色々任せてくれるのかもしれない。

そういうのを嬉しくも感じて、よけいにふしだらな気にならないのかもしれないが。


……ちなみにソラヴィアには、その時に、『襲いたいなら襲ってもいいぞ? 私に勝てるならな』とも言われてるんだが……絶対無理です。未だに。

……それもまあ、下手なことを考えない理由の1つか。防衛本能的な意味で。


最近ではまあ、3人がかりでなら何とかいい勝負……とは言わないまでも、そこそこ持つようにはなってきたんだが、まだ勝てないし。つか、ソラヴィアの方もだんだん成長してる気がする。


「やれやれ……そろそろ獣欲に任せて襲ってくるくらいの気概はみせてくれないものか……。いい女が無防備に裸で転がっているんだから、何もしないというのは男としてどうなんだ? 5年前ならともかく、お前らもう14だろう。国によっては、子供がいてもおかしくない年だぞ?」


と、タイムリーにもほどがあるタイミングでそんなことを、目の前のソラヴィアが言うもんだから、びっくりしてちょっと手元が狂いそうになった。


「いや、勘弁してくださいっす、姉御……いい女はまったくその通りだと思うっすけど、それ以上に防衛本能が働いてそんな気になれないっすよ」


「獣人だけあってそういった部分には相変わらず敏感ですね、カロン。まあ、私も同感ですが」


「おいやめろお前ら、いくら本当のことでもさすがに失礼だろが。一応女だぞソラヴィアも」


「お前が一番失礼だからな」


後で覚えてろガキ共、とふてくされたように言うソラヴィア。いや、毎度そんな感じで、しかも実際に殴るから俺らの本能に危険察知の経験値が蓄積されていくんでしょうが。


「まあ、私が女として微妙なのは自覚してるがな……お前らそろそろいい年なのは本当なんだ、女に限った話じゃないが、もうちょっと身の振り方ってものを考えないといけないぞ?」


「身の振り方、ってーと? あとソラヴィア全然微妙とかそんなんじゃないし、本気でかわいいしキレイだしかっこいいと思うけど」


「どういうことっすかね? あと姉御は見た目も性格もいい女だと思うっすよマジで、今の所俺が知ってる限りでは世界一っス」


「そういえば、レイザー様も似たようなことを……あとソラヴィア様は冗談抜きに魅力的な女性だと常日頃から思っていますよ、尽くしたくなる程には」


「……くっ、さらっと言いやがってこいつら。普通に嬉しい……」


念のため言っておくが、比喩も誇張もなしに本心である。俺ら3人共ね。


あと、こっちもホントに聞きたい。身の振り方って何よ?


「ああ、えーとな……もうちょっとお前らの誉め言葉の余韻に浸っていたいから後でいいか?」


ちょっと顔が赤いソラヴィア。我らが姉貴分。

……こういうところが何気にかわいいんだと思う今日この頃。




で、ちょっと待って続き。


ちなみに、マッサージは終わってソラヴィアは服を着て、カロンが飯を完成させて持ってきて、デモルがそれに合う酒を選んで持ってきて、ただいま夜食の席だ。


「さっきデモルも言ってたように、お前らももう、だんだんと『男の子』から『大人の男』に変わってくる年だ。『ヘルアンドヘブン』に身を置く者として、これからのこともあるし、身の振り方ってもんに1つ1つ気を配らなきゃいけない、と……まあ、レイザーとも話になってな」


外側『カリッ』で、中身が『じゅわっ』なロースト肉をほおばりながら話すソラヴィア。

やっぱ肉焼かせたら右に出る者はいないな、カロンは。


「一人前のヤクザとして、男として見られるように、行動やら何やらに気を配れ、ということだな。作法とかしきたり、甲斐性……何と言ったものか、そこまで固いものでもないが、色々ある」


「んー……何となくわかるような、そうでもないような……具体的には?」


「具体的に、か……本来なら、ヤクザとして生きていくうちに自然と身につく類のものなんだが……いかんせん、お前ら、若い通り越して幼かったからな……」


ソラヴィアは俺の質問に、くぴっ、と酒を一口飲んで、


「以前にもちらっと言ったと思うが……一人前のヤクザたるもの、ただ腕っぷしが強ければいい、というだけでは務まらん。まあ、例外はなくはない……というか、私がその例外なんだが」


そーですね。

ソラヴィアが戦闘と暗殺以外で稼いでるとこ、見たことないし。別に文句とかないけど。


「個人的には、お前達もその『例外』になれなくもないとは思うが……最初から選択肢を狭めるのもアレだし、普通に教えておく。ヤクザとして1人前になるには、強さ以外にも手にするべきものがいくつもある。金、シノギ、知識、技、人脈、女……まあ、上げ連ねればきりがない」


前に話に上がったように、ヤクザってのは組員それぞれ個人事業主みたいなもんだ。1人1人、あるいは数人がグループで組んだり、兄貴分や親分が下の連中に仕事を回したりして『シノギ』をやって金を作っている。それは、この異世界でも元の世界でも変わらない。


日本では、ヤクザの『代紋』が持つ暴力的威嚇力を武器にしたそれぞれの稼ぎ口=シノギを持ち、その使用料的な意味で、毎月組織に上納金を納めている……って感じだったと思う。何かの本で読んだか、テレビのドキュメンタリーで見た覚えがある。


こっちの世界では、そこまで暴力や違法性を前面に押し出したというか、社会からにらまれるようなことをやってる感じはしない……かな。幾分ソフトと言うか、まともな感じに思える。


まあ、密輸とか裏取引とか、バリバリ『違法』の類ではあるんだけども、それによって自分たち以外にも、それを買う人たちや、何なら公共の部分で利益になってたりすることも多いし。


……いつのまにか話がそれたな。


話を戻すと、ともかく、ヤクザとして一人前になるというのは……そういう『シノギ』で金を稼ぐのはもちろん、他にも色々なものを学び、手にする、という意味であるってことだ。


さっきソラヴィアが言ってたように『例外』としての立場を除けば、求められるものは多い。俺らみたいに、腕っぷしだけでここまで来た奴が、さらに上に行くには……必然的に、そういうものが必要になるわけだ。


荒事の発生に関わらない、安定したシノギの開拓。そこから上がる収益。


組の中における立場に見合った、組織への上納金。

上に行きたければ、毎月の決まった額だけじゃなく、大仕事を成功させたり太いシノギを見つけたりして、大きな金を作って納めて座布団を上げる必要がある。


その他にも、シノギや上の手伝いの選択肢を広げるための知識や技能のスキルアップ、表裏を問わずに動きやすくするための、各方面へのパイプの構築など、持っていて役に立つ者は多くあり……どれも、上に行くための武器になるものだ。


でも……さりげなく混ざってた『女』って何よ?


「まあ……それには、習わし的な意味と、現実的な意味が両方あってな。まず、習わし的な方は……一言で言えば、『甲斐性』という奴だ。女の味も知らないで、愛人の1人2人も囲えないでどうする、ってまあ……男ぶりを上げる的な意味だな。身も蓋もない言い方をすれば、見栄だ」


なるほど、わかる気がする。


ヤクザって、愛人何人も持ってるイメージあるし……ドキュメンタリーでは、養子縁組までして囲ってるっていう人もいるとかいないとか。『英雄色を好む』のフレーズの通りに、囲っている人数で男ぶりを推し量る、っていうのも……まあ、若干女性に失礼な気もするが。


そういう愛人に対しては、生活費とかは自分で稼がせるパターンと、こっちから金をだして思いっきり贅沢させるパターンがあるみたいだが……まあ、その辺はおいとこう。


「それに、いい女を隣に侍らせていれば、自慢にもなって虚栄心も満たされるわけだ。いないのか? お前ら、身近に1人か2人くらい……これは、っていういい女でも」


「ソラヴィア以外?」


「……ああ」


ちょっと顔がまた赤くなったかわいいソラヴィアはともかく、


そうなると……パッとは思い浮かばないな。

横を見ると、どうやらデモルとカロンも同じようだ。


「けど、もう一方の……現実的な意味って何すか?」


と、カロンが訪ねると、ソラヴィアはちょっと考えて、


「まあ、色々あるぞ? 愛人の本来の使用用途……性欲処理だったり、自分がいない間に家を任せて管理させたりな。後は、シノギで他人の名が必要な時に女の名前や住所を使ったり、やばい時に女の家を隠れ家にして匿って貰ったり、仕事で使うブツを女の家に隠しといたりな」


「……何というか、少々生々しいですね」


なるほど、確かに現実的だ。


現代日本でも、ヤクザがシノギに女の名義を使ったり、隠れ家や隠し場所に女の家を使ったり……っていう話はよくあるらしいしな。


んー……有用性はわかるんだが、個人的には、自分を慕ってくれる相手を、そんな風に利用したり、負担を背負わせるってのはあんまり好かないというかな……。


囲って甘やかして贅沢させるとか、家の管理を頼むとかならまだしも、便利な道具みたく扱うのは……いや、部下扱いなのかもしれないが、それでもちょっと……。


……正直、あんまり必要性を感じないというか。


「まあ、拠点住まいのお前らにはそうかもしれないが……どちらかというと、私としては、外面を気にする意味で、そろそろ女の1人も見つけた方がいいと思うがな」


「? そりゃまた、何で?」


外面って……今俺ら14歳で、もうそろそろ15ってとこなんだが……。こんなガキが女囲ってたりなんかしたら、そっちの方が生意気だって外面悪いんじゃないだろうか。


今んとこ、そんな獣みたく色々持て余してるわけでもないし、下積みの頃からの習慣で、基本的に家事もシノギも俺ら3人で分担して、上手くやれてる。一部は下っ端連中使ってるが。

むしろ今のペース崩したくないし、そういう意味でならむしろ要らないというか……


そう聞いたら、なぜかソラヴィアは、言いづらそうというか、ばつが悪そうにして、


「……そんなんだから変な噂が立つんだよ、お前ら……」


「噂?」


「ああ……お前ら3人、デキてるって」


「……ブフォッ!?」


噴いた。あんまりな話に、噴いた。

ちょっと待て、何だその噂!? え、初耳なんだけど!? マジで何それ!?


見ると、カロンとデモルも唖然としてる。同様だ。


「雑用するにも、シノギやるにも、カチコミ行くにも、3人いつも一緒にいるし、部屋も3人で同じ部屋だし……女に結構人気あるのに浮いた噂もないし、3人そろって女みたいな顔だから、『そう』なんじゃないかって……な」


「何だそれ!? いや、別に何もそんな……同期なんだから一緒にいたって別に不思議じゃないだろ!? 部屋だって、下っ端なんだからもともと3人部屋が割り振られたんであって……つか顔て! 元からなんだからどうしようもねーよそんなん!」


女顔は俺ら3人とも何気に気にしてんのに!


ていうか、え? 女に人気って……そこも何? 初耳だけどそれも。


「これはさすがにあんまりだからな……もういい頃だし、今度娼館にでも連れていくかと思ってたんだ。特定の女がいなくても、『経験あり』なら拍もつくし、多少は噂もマシになるかと思ってな。……まあ、年齢が年齢だから、娼婦連中に生暖かい目で見られる可能性もあるが」


「それは、まあ……この見た目ですからね。娼婦の方々から見れば、背伸びしたおませさんが、職場の兄貴分に連れてこられた、的な見方になるでしょうね」


「……下手するとそこから新しい噂が立ちそうっすね。今デモルっちが言ったまんまの感じの」


「それはそれでごめんだわ! つか、商売女で初体験とかできれば遠慮してーんだけど……やっぱほら、最初はきちんと相手選びたいというかさ……」


「何をお前……乙女みたいなこと言ってるんだ。はっきり言って似合わんぞ。というか、その相手がいないから、とりあえず捨てとけっていう話をだな……」


「わーってるよそんくらい! そしてその通りだよ! 悪うござんしたね相手がいなくて! 欠片も心当たりねーよそんな相手!」


「なぜキレる……娼婦が嫌なら、時々来る、巡礼の振りした私の後輩でも紹介するか? 割とお前らのこと好きみたいだから、頼めば多分できるぞ? ……まさかとは思うが、その……本当に、女に興味が無いわけじゃない……ん、だろう?」


「いや、何でそんな不安と言うか心配そうに……あるから、普通に、女に、興味」


「ならいいんだが……いや、私も姉貴分としてはその、心配でな。万が一、お前の初めてが本当に、デモルやカロンだったり、そうなったりしたら……と思うと……」


「頼むからそこは信頼してくれよ……ねーから。大丈夫だから。いくら女に縁がないからって、男に走ったりしねーから別に俺は」


「あ、オイラとしては、兄貴がそうしたいんなら全然いつでもOKっすよ?」


「私も……まあ、準備する時間は欲しいですが、その、マスターが望むなら」


「やめろお前ら!! 冗談でもコエーよ!! こんな時にとんでもねーこと言うなこのボケ共!!」


必死でソラヴィアに反論してたら、カロンとデモルが横からそんなことを言って来て、背筋が寒くなるのを感じながら怒鳴り散らす。いやもう、まじでやめて。


つか、今のでまたソラヴィア心配してちょっと顔色悪くなってるから! 大丈夫、冗談、冗談だからソラヴィア、安心して、信じて。


「……冗談に、聞こえますか?」


「デモルてめー続きを言うなら気を付けて言えよ、また心臓に氷で注射してやんぞコラ」


流し目でさらに言ってきたバカに、ちょっとキレて周囲に冷気を振りまきながら警告。


「……すみません、少々悪ふざけが過ぎました」


分かってくれたようで何よりだ。


「冗談っすよ、冗談……兄貴もちょっと大人げないっすよ、そんなマジギレしなくても」


肉を冷気から守りつつ、加熱しなおしながら、そう反論してくるカロン。

こちらはさらに悪ノリしてくる気配は……ないな、よかった。


「……ったく、ホント勘弁してくれよお前ら……心臓その他もろもろに悪ィ……」


「……そんなに嫌ですか? 我々と噂になるのは……」


と、デモル。

……さっきと違って、悪ふざけの意図はなさそうだ。ただ単に気になっただけっぽい。


「いや、そりゃ男と噂が立ってもアレだろうが……というかそれ以前に、いらんこと考えなきゃいけなくなって、お前らと一緒に居づらくなる方が嫌だよ俺は。一緒に仕事すんのも、一緒に飯食うのも、風呂入んのも、バトるのも……下積み時代からずっと、この3人で一緒にやるのが楽しいから、そういう時間はこれからも大切にしていきたい、って思ってんだからよ」


「「………………」」


……何で2人共、黙って視線反らす? つか、顔赤くね? 何で?


「あの……兄貴、えっと……そういう不意打ちはずるいっす」


「……先ほどのソラヴィア様の気持ちが、その、少々わかりましたね」


「…………」


そしてソラヴィア? 何でまた不安そうになってんの? 言ったろ、大丈夫だって。


「……本当か?」


「いや、何でそんな疑うんだよ!?」





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