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「ただいまー! 帰って来たよーー!」
サラさんは大声を上げながら窓から身を乗り出して手を振っています。
嬉しいのでしょうね。誘拐されてしまい帰れないかもしれなかった状況での不安は計り知れません。
正面側にある小窓から覗けば、門には二人の門番が見えています。左側に立っている門番の方が手を振り返していました。
手を振っているのは一人だけで、右側にたっていたもう一人は走って村の中へと入っていきました。
知らせに行ったと思うのが普通でしょうか。
「サラ! 村長が心配していたぞ」
「ただいまジェンドさん! 色々あって遅れちゃった」
「そうか、そちらの方々は?」
「学園の先生で私をここまで送ってくれました」
「それはありがとうございます。村の者としてお礼もうしあげます」
「いえ、これも教師の務めですから。お気になさらず」
私はまだ馬車の中にいるので対応はすべてクロードがやってくれます。サラさんの家に到着すれば私も外に出て今回の顛末を話すつもりです。すべてをクロードに任せてはいられませんから。
「村長の家までは、サラ案内できるか?」
「馬鹿にしないでよ、私はもう子供じゃないんだから。自分の家の場所くらい分かるから!」
「ははは、悪かった悪かった。先生方もよろしければ、この村を見ていってください」
「サラさんを送ったら少し見ていきます」
サラさんは一旦馬車を降りてクロードの居る御者台まで上がっていきます。少々手狭のようですが、小柄なサラさんであれば座れたようです。
サラさんの案内で馬車は村の中を進んでいきます。大通りもあるため街と言っても良さそうですが、村長が居るということは村なのでしょうね。街や町と言うのは基本的に貴族や貴族に管理を任された代官が必ず居ます。しかしここには代官や貴族が居ないため、村という括りになっているようですね。
「着きました! ここが私の家です」
この村の村長がですから、それに見合うだけの屋敷だと思って居ましたが。これは屋敷よりも大きな家と言った方がいいですね。
「サラ! 心配したぞ」
「お父さん!」
馬車から降りたサラさんはそのままお父さんの元へ駆け寄り、お父さんを抱きしめました。
流石にこの間に入って、話をするつもりはありません。
感動の再会なのですから。
私は荷物を持って馬車をおります。クロードには場所の上で待ってもらっています。隣りにクロードがいてもすることはありませんし。強いていえば私が安心するくらいですが。大丈夫ですね。
サラさんを抱きしめる手を離し、村長がこちらへ歩み寄り頭を下げました。
「娘を連れてきて下さりありがとうございます!」
「頭をお上げください。今回は学園の不手際により、サラさんを危険な目に遭わせてしまいました。謝らなくてはいけないのはこちらなのです。こちらは学園長からのお詫びの品となっております」
改めてこちらが頭を下げ、学園長に持たされた品を手渡します。中身がなんなのか詮索はしていません。ですが、菓子折という訳では無いでしょう。とある言伝も貰っていますから。
「これは」
見た目は小箱のようですが、よくよく見れば魔法のかけられた箱であることがわかります。私の予測では空間系の魔法でしょう。
「学園長からのお詫びの品です。それと言伝が、なるべく広い場所で開けるようにと。不足している物が入っておりますゆえ」
「不足しているもの、まさか!」
「中に何が入っているか存じ上げませんが、こちらの小箱には魔法がかけられています。そのため大きなものが入っている可能性もございます」
「なんとお礼を申し上げればいいか」
「お詫びの品ですのでお気づかいなく。ですが学園長には私が変わりに申しておきます」
「ありがとうございます。良ければ今晩は家へ泊まっていかれませんか?」
「お気持ちだけいただきます。私達はジェンキンズに向かうつもりですので」
今から向かえば暗くなる前に着くことができます。泊まることもいいですが、早い方がエレーナさんも喜ぶでしょう。なにより慣れない環境にケェファを長居させたくはありません。
「そうでしたか。では早くにここを出なくてはなりませんな」
「ぜひこちらをお持ちになってください」
家の中から果実を持った女性がやって来ました。恐らく
「お母さんそれ果物! 先生持っていってください美味しいですよ!」
「ありがとうございます」
道中いただくとしましょう。
「先生ー! さようなら!」
少しはしたないかもしれませんが、窓から手を振り返します。
「クロード食べますか?」
「頂きましょう」
「では切り分けますね。ケェファの分も切り分けないと行けませんね」
なかなかに美味しいですね。このオレージ。恐らくオレンジでしょうけど。
遅れてしまいすみません。
誤字脱字は下に専用のがあるのでそちらからお願いします。
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